配管の設計がエネルギー効率を大きく左右する


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 エネルギー消費の効率化を研究しているロッキーマウンテン研究所の共同代表であるエイモリー・ロビンス博士が、彼の著書「新しい火の創造」(原題:Reinventing Fire)で強調しているものに、工場や建物内を走る配管の設計に注意しないと、そこで発生するエネルギー損失がその配管がある限り継続するということがある。工場などの設計の場合、最初に設備機器の設置場所を定め、その間をつなぐ配管は、床や壁に沿って直角に曲げながら取り付けるのが常識になっており、しかも、配管材料コストを抑えるためにできるだけ細い配管が使われる。その結果、流体を流す配管の延長距離が大幅に長くなり、細い配管を流れる媒体の圧損も増大し、所要の流量と圧力を確保するために大きなポンプが必要となり、それを駆動するモーターも大きくせざるを得なくなる。その結果、設備の間を直線で太めの配管で結ぶのと比較すると驚くほど電力消費が大きくなり、設備が廃棄されない限りそのエネルギー損失は継続するというものだ。

 エイモリーの著作が説明している実例によると、あるカーペット工場の加熱用液体を循環させるポンプ圧送システムの設計を、設備の配置も含めてやり直したところ、当初設計では95馬力のパワーが必要であったものが、13馬力以下になったそうだ。太いパイプのコストは直径の2乗に比例して大きくなるが、その摩擦はほぼ直径の5乗に比例して下がることが、この大幅な馬力削減が実現できた理由なのだ。太めのパイプにすることで上がるコストは、延長距離が短くなることで相殺される。

 理屈としては理解したつもりだったが、それを体感する現場に最近遭遇した。かかりつけの病院で写真のような配管があるのに気づき、彼の言う配管による流体圧送損失が大きくなるとはこのことかとあらためて認識したのだった。

 これは空調室外機を内部と接続する配管だが、もし建物内の配管が壁から出る位置が、空調機の面する壁にあるとすれば、接続配管の長さは半分近くになるだろう。また、流体の圧損が発生する直角に曲げた配管部の数も、一本につき7カ所から2カ所くらいに減らすことができる。それぞれの配管部分には空調機からの冷媒が送り出されるものと、戻ってくるものの2本は、断熱材が巻き付けられたものが一本にまとめられている筈だから、かなり直径が小さいパイプが使われていることは確かだ。

 この病院の建物本体の設計と、空調室外機の配置場所は、相互の摺り合わせもなく行われたように見える。建物が出来上がってから空調室外機の取付が行われたのだろうが、配管業者から見れば収益性の高い物件となる。曲がり部分が多いほど工数が増え、工賃は高くなるからだ。また、直角に曲げるのではなく円弧を描くような配管をするなどは、そのような指定がされない限り配管の通常工法では行われないのが普通だ。配管によって起こるエネルギー損失は配管業者の責任ではなく、見た目が綺麗な配管にする方が重視される。施主である病院も美観を重視しただろう。大きな病院は24時間空調をしているから、この空調機の冷媒はほぼ常時回り続けているはずだ。ということは、この圧損が大きいことから発生するエネルギー損失を稼働時間で累計すると、無駄な電気代が大きくなっているはずだ。これには誰も気が付かない。

 この病院は間もなく廃止されて新しい病院が開院することになっている。新しい病院ではこのような無駄が起きないように工夫されていることを願っている。