再生可能エネルギーの現場を訪ねて

-苫小牧バイオマス発電所見学報告-


東京電力ホールディングス株式会社 技術・環境戦略ユニット 環境室長


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 9月に行われたIEEI視察会に参加し、苫小牧バイオマス発電所を見学した。丁寧な説明で運営上の工夫や苦労を学ぶことができ、有益な機会となった。以下、見学内容をレポートしたい。


苫小牧バイオマス発電(株)提供

苫小牧バイオマス発電所の概要

 苫小牧バイオマス発電は、三井物産(筆頭)、住友林業、イワクラ、北海道ガスの出資により設立された。
 同社の苫小牧バイオマス発電所は出力5900kWの国産未利用材の専焼プラントで、2017年4月に営業運転を開始した。FIT売電は2月に開始しており、年間4000万kWhが予定される発電電力量は北海道ガスに売電されている。2号機の建設も検討の俎上にあるという。
 年間に消費する木材量は約6万m3で、半年から1年乾かしてからチップ化する。同所では運転開始にあたり2年分の木材を貯めたそうで、建屋の周囲には想像を超える規模の貯木場が展開している。

苫小牧バイオマス発電所の経済性

 国産未利用材由来の発電電力量のFIT買い取り価格は32円(20年間)である。
 同所では、その買い取り価格から得られる利益の最大化を目指し、様々な工夫がされている。
 まずは発電所の立地。親会社の所有林を中心とした木材供給の利便性(半径150km圏内)、北海道電力送電線へのアクセス(340m)、工業用水確保の容易さなどが考慮され立地地点が決められている。事業化に際しては、FIT制度の利用の他、企業立地助成制度、重機購入補助制度などを活用したという。
 日々のオペレーションも、燃料(チップ)製造、運転・保守をそれぞれノウハウのある企業に委託している他、燃料製造の夜間作業を避けるべく、日中に夜間操業相当量の燃料を用意したり、隣接する親会社と重機を共有するなどの工夫をしている。余談の類に属するかもしれないが、見学時に上映された上空映像は所員のドローン操作によるものであった。国プロや大企業が費用をかけがちなところを手作りで行っているあたりにも、コスト意識がうかがわれた。
 苦労している点としては、木材の含水率の安定化があげられていた。想定の45%に対し、水はけの悪い部分に置かれていた木材の含水率がこれを大きく上回る傾向が確認されたという。含水率は発電効率、ひいては経済性に直結のする課題である。冬場は想定を下回る含水率を記録したそうである。春先以降の木材保管場所について、知見の蓄積を活かすことで改善されていくことが期待される。


苫小牧バイオマス発電(株)提供

バイオマス発電の課題

 昨年度末バイオマス発電のFIT認定が急増し、認定設備量は2030年度のエネルギーミックスでの想定の約2倍、1242万kWに達した。再生可能エネルギーの増加、特に安定出力が期待できるバイオマス発電の増加は一見喜ばしいが、FIT電源の想定を超える増加は国民負担への直結が懸念される。また、今回の認定案件の多くにおいて燃料が輸入バイオマスであったことは、国民負担の海外流出を意味する点で留意が必要である。9月下旬に開催された経産省の調達価格等算定委員会でもこれらは議論の対象となった。これだけの輸入バイオマス利用への集中は、国産木質バイオマス燃料の相対的競争力のなさの表れであると言えよう。
 では、様々な好条件を活かし、また工夫を重ね国産未利用材で事業展開を開始した苫小牧バイオマス発電所の将来はどうなのか。FIT買い取り期間終了後の事業性について尋ねてみた。回答は「20年後には設備の減価償却は終えているが、支援策無しにマーケットで売電するのは難しいのではないか」というものであった。同所であっても自立が容易でないとすると国産バイオマス利用設備の将来に展望は持ちにくくなるであろう。
 カラマツの人工林は50年サイクルで回していくそうであり、発電設備余命をも考えれば、FIT買い取り期間終了後も発電が継続できることが望ましいことは言うまでもない。未利用材の発電利用が成り立つためには、材木本体の需要が不可欠であること、林業従事者が確保されることなど、日本が直面する林業の構造的問題にも絡む難しい課題がありそうであるが、苫小牧バイオマス発電所始め、FIT制度に支えられて運営される設備の事業者には、買い取り期間終了後の事業継続を目指しつつ、そこに障壁があるのであればそれについて定量的な議論ができるよう様々な知見やデータを蓄積していってほしいと感じる。そうして再生可能エネルギーの正しい議論の土壌づくりに貢献することも、20年に亘る国民負担に応えるひとつの道であろう。
 なお、バイオマス発電所の買い取り期間終了後について、石炭への燃料転換を危惧する声が一部にある。このことについても尋ねてみたが、苫小牧バイオマス発電塚田社長は「環境貢献という設立目的に反する」として同社にその考えがないことを明言されていた。FIT制度への悪乗り的な事例も指摘される中、同社が再エネ事業者としての正しい矜持を保っていることに希望を感じたことを最後に記して、レポートを終えたい。