ユッカマウンテン使用済燃料処分場計画プロジェクトを巡る動向


環境政策アナリスト


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「一般社団法人 日本原子力産業協会」からの転載:2017年10月2日付)

 ユッカマウンテン処分場プロジェクトについてはトランプ政権のもと、2018年度予算教書においてライセンス認可のため議会に1億2000万ドルを要求することにより再開しようとしている。
 ユッカマウンテン処分プロジェクトは、2009年オバマ大統領の予算教書において、当時上院民主党院内総務で実力者のハリー・リード議員の反対により見直すことが提案された。廃棄物処分場の審議・提案をする独立専門委員会(ブルーリボンコミッション)が設置され、使用済燃料管理について「よりよい解決策」を探すプロセスに入ったが、ユッカマウンテン処分場プロジェクトについては、最低限の予算しかつけられていなかった。すこし遡ると1987年放射性廃棄物政策修正法(NWPAA)により、ユッカマウンテンなどでサイト特性調査が行われることになり、その後環境影響評価の実施、公聴会などの実施を経て、2002年ブッシュ大統領(子)が連邦議会にユッカマウンテンについてサイト推薦を通知した。地元ネバダ州は承認しない旨の通知を行ったもののこれを覆す立地承認決議案を連邦議会が可決し、ユッカマウンテンが正式に処分場サイトとして決定された。2004年末までとされていたエネルギー省(DOE)の原子力規制委員会(NRC)に対する認可申請省の提出は、ネバダ州がサイト指定は憲法違反であるなどの訴えを起こして遅れ、2008年ようやく提出されていたが、上記のような状況から申請認可はストップしたままであった。
 
 8月8日、NRCはこの認可申請に伴う予備的なNRC費用支出を認めた。今後NRCがユッカマウンテン処分場プロジェクトを進めるための書類収集プロセスに関する検討を行う予定である。NRCにとってライセンス認可のため最初の重要なステップは、公にアクセスできる書類データベースを整備し、1980年代にユッカマウンテンを選定した際の交渉のなかで要求された点についての追加的ペーパーワークを行うことである。以前は、NRCによるユッカマウンテン処分場プロジェクト認可申請に対する裁定のための400万以上の項目に関する書類のバーチャルな保管場所があった。2011年オバマ大統領によってこのプロセスが中止された際オフラインとなってしまったが、それまでは公衆に無料で開放されていた。このためNRCは11万ドルを放射性廃棄物基金から支出しようとしているが、この動きはNRC委員間で意見が分かれている。さらに、そもそも再開の検討をすることについて、ネバダ州選出ディーン・へラー上院議員(共和党系引退したリード上院議員の後を受けて上院議員に選出)による強い批判があり、予断を許さない。今回はユッカマウンテン処分場プロジェクト再開の動きについて報告する。

ユッカマウンテン処分場プロジェクトを巡る係争

 1982年の放射性廃棄物政策法では連邦政府は1998年までに使用済燃料の所有権を得ることになっており、一方1983年から1987年までの間に複数の処分場サイトを選定することになっていた。1998年のデッドラインが近づいた1987年、サイト選定がなかなか進まない中、議会は1987年改定放射性廃棄物政策法を通過させ、ユッカマウンテンサイトに焦点を絞らせることにした。先に触れたようにネバダ州は連邦政府による強引な手法に反発したが、ブッシュ大統領は2002年に正式にユッカマウンテンに決め、連邦議会に通知した。その後、2009年に就任したオバマ大統領による中止があったため、連邦政府は1998年の目標を守れず、電力会社がその使用済燃料をサイト貯蔵し続けなければならないことに対して支払いが行われることになった。しかし、すでに電力会社は1982年から放射性廃棄物政策法によって0.1セント/kWhの放射性廃棄物基金向けの支払いをしている一方、廃棄物処分場完成が遅れていることによってサイト内貯蔵を余儀なくされているのは不当として、これまで多岐にわたる提訴につながっている。
 
 今年、3月15日、テキサス州は、DOEなどがユッカマウンテン処分場プロジェクトを認可するための義務を果たしてきておらず、これは放射性廃棄物政策法に違反しているとの訴えを起こした。テキサス州は司法からの強制執行令状を得て、DOE、NRC、連邦議会に、1982年の法律の履行を求めるかあるいは放射性廃棄物基金からの損害賠償支払いまたは他プロジェクトへの資金の吐き出しを求めている。テキサス州にはふたつの原子力発電所があり、放射性廃棄物基金に支払いをしてきていること、州内にウェイスツ・コントロール・スペシャリスツが中間処分場事業を計画していることから、潜在的にこれらに対してベネフィットを提供できるかもしれないとの思惑があるものと思われる。

 被告でもあるネバダ州側は4月12日、プロジェクトに反対する権利が保護されることを求め訴訟に見解を提出し、「もし(この訴訟が)成功すればその結果は現在議会で決着のついていない法的プロセスに(損害賠償への活用などで)近道をつくることになり、ライセンス認可に対する公聴会においてその考えるところを訴えようとするネバダ州の活動を妨害することになり、この間違ったプロジェクトの成功に向けて突き進むことによりネバダ州の主権、健康、安全、市民の厚生を損なうことになる」と述べている。オバマ大統領の好んだ「同意ベースの立地」のもとネバダ州はユッカマウンテン処分場プロジェクトの阻止に成功してきた。しかしながらこのテキサス州の訴えが成功すれば、ネバダ州の「同意ベースの立地」論に基づく立地忌避の議論を展開することが困難になる。一方、ネバダ州は、テキサス州に対してそもそも放射性廃棄物基金からの資金の引き出しは認められておらず、司法もそのような細かいところまで裁量権はないと反論している。原子力エネルギー協会(NEI)もテキサス州の考えに反対をして、放射性廃棄物基金からの損害賠償の支払いは認められておらず、そのような支払いが認められると使用済燃料処分場進展の動きに水をさすことになりかねないと批判をしている。

上下院歳出委員会の攻防

 いずれにしてもNRCのユッカマウンテン処分場ライセンス認可の動きの再開はまだ端が緒についたばかりであり、実際の活動は来年に始まることになる。そのためにもデータベースの再構築は必要なプロセスであり、そしてさらにネバダ州との合意が重要であるが、まだそこには高いハードルが存在している。たとえばネバダ州選出マスト上院議員(民主党)は以下のように述べている。「ユッカマウンテン再開のために基金の資金を使用するとするNRCの決定はネバダ州に対する面汚しをすることになる。科学者はユッカマウンテンプロジェクトはネバダ州民にとって不安全であるとみており、州としても何年もこの誤った認識の下なされた提案を取り下げさせるため戦ってきた。この戦いをこのプロジェクトが完全に捨て去られるまで続けていく覚悟である。州、地方政府、利害関係者からのインプットが求められる『同意ベース』のアプローチを進めていかなければならない。」また、同へラー上院議員は以下のように述べている。「ネバダ州ははっきり申し上げている。ユッカマウンテンプロジェクトのすべてのステップにおいて戦いを挑み、ライセンス認可のために200以上ある論点に挑戦するつもりであることを。(基金の)資金をわが国の放射性廃棄物問題解決に資する『同意ベース』のアプローチのために使おうとせずに、ネバダ州が拒否し続けているプロジェクトに使おうとするNRCの無謀で財務上無責任な決定に失望している。わたしはユッカマウンテンプロジェクトに対しこれからも戦いをリードし、それが失敗するのを確実なものにする。」へラー上院議員は来年の中間選挙が改選時期であるが、これまでも歳出委員会でユッカマウンテンプロジェクトを外しにかかろうとしてきており、ネバダ州選出でユッカマウンテン処分場プロジェクトに一貫して反対してきた実力者リード上院議員が引退したとは言え、依然本件に関するネバダ州選出議員の発言はなお重いものがあるといえそうだ。

 下院の歳出委員会では「2018年エネルギー・水資源開発予算法案」を7月に成立させ、ファンド支出、ユッカマウンテンプロジェクト支援のため9000万ドルにのぼる放射性廃棄物処分の支出を計上している(軍事用廃棄物処分費用としては3000万ドル)。一方、上院の歳出委員会においてはユッカマウンテン関連費用の支出計上はなく、上院案は中間貯蔵パイロットプラントを認めているだけである。すなわち上院はオバマ大統領のこだわっていた「同意ベース立地」政策の法案化を求めているようにみえる。7月20日にエネルギー・水資源開発予算法案が上院歳出委員会で承認されたとき、ヘラー議員は上院エネルギー・水資源開発歳出小委員会における証言において、ユッカマウンテンプロジェクトの予算が排除されるべきであることを改めて主張して、「ネバダ州民による強い反対があることから、予算を盛り込んでも米国における廃棄物問題の解決にほとんど解決にならないばかりか、何十億の納税者の税金を無駄にすることになる」と訴えた。このまま行けば最終的には下院と上院は両院協議会に諮ることになるが、これがユッカマウンテンプロジェクトへの支出を含むかどうかはまだ分からない。ヘラー上院議員の共和党内での役割が鍵となる。

出典:
国際技術貿易アソシエイツ
7月24日付け ヘラー議員ニューズレター
5月6日付け ラスベガスレビュージャーナル