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トランプ政権のパリ協定離脱と米国内の反応について


環境政策アナリスト


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4.産業界の反応

 多くの企業関係者はその国際市場での位置づけへの懸念からトランプ大統領の発表に批判を表明している。

ダウ・フィバリスCEO
「世界の趨勢から鑑み、大気への炭素排出を削減することに投資をしなければならない。米国はその最先端にあると考える。したがってリーダーはテーブルから離れるべきでない、テーブルについていなければならない。」(6月2日CNBC)「パリ協定離脱の決定には失望したが、課題への多くの潜在的解決策があると理解しており、他の解決策に向けて前向きに取り組みたい。他の産業、NGO、学会とともに大統領と強調し、温室効果ガスの排出削減を可能にするスマートな政策を訴えつつ、世界の市場が必ず米国輸出と技術開発に門戸を開くようにしていきたい。」

フォード・フォード会長
「昨日のパリ協定離脱決定に際していくつかの考えを社員と共有したい。高いレベルでフォードは社会の前進に向けてよりよい世界に貢献をする。この観点からそしてわたしの個人の価値観からこの決定は残念なニュースだ。フォードは気候変動は実在すると考える。そして社員は温室効果ガス削減のため燃費の向上、電気自動車開発、持続可能な設備形成他の政策に深く専念することを確かにしたい。」

 シリコンバレーでも同様にアップルのクックCEOも動揺することなく気候変動に挑戦していくと述べている。フェースブックのザッカーバーグCEOも「パリ協定離脱は環境にとってよくなく、経済にとってよくなく、子供たちの将来を危険にさらす。気候変動をストップすることは世界共同体としてのみなしうるものであり、遅すぎることになる前に協働しなければならないものである」と述べている。金融界もゴールドサックスのブランクフェインCEOのように「パリ協定離脱宣言は環境にとっても米国のリーダーシップにとっても後退である」と述べるように失望を表明するむきが多い。
 エネルギー産業界は以下のとおりである。

GE・イメルトCEO
失望を表明し、「産業界はトランプ大統領があけてしまったギャップを埋めなければならない」

シェル
「シェルのパリ協定への支持はよく知られているところ。もっともっとクリーンなエネルギーを提供するためわれわれの本分を引き続き尽くす」

ナショナルグリッド
「クリーンエネルギーの提供は顧客にとっても経済にとってもよいことでそれをするのが正しい。近いうちに米国大手の企業らと米国をパリ協定に残るべくトランプ大統領に働きかけたい」

マーリーエネルギー・マーリーCEO
「トランプ大統領の不動のリーダーシップそしてこの重要な選挙期間中の公約を発表したことを賞賛したい。まさにそのとおりだ。パリ協定からの離脱はトランプ大統領のエネルギー政策の一角である。」

5.米国エネルギー市場への影響

 今回の発表は連邦レベルでの動きとしては大きな影響はない。パリ協定に関わらずもともとトランプ政権は前政権の策定した目標達成のために気候変動政策を推進するとは考えられなかった。そのため本決定は米国の気候変動分野でのリーダーシップの終わりという意味での外交上の影響を議論されているところである。しかしながら州や自治体レベルからの気候変動へのアクションが高まることはおおいにありえることとみられている。本決定によるエネルギー市場への影響は大きくない。

石炭
米国石炭市場は、シェール革命が低コストの天然ガス生産を可能にし、連邦の支援により再生可能エネルギーに拍車をかけてきたので、すでに衰退傾向に入っている。またすでにこれらの市場圧力と環境規制によって全国の石炭火力は経済的に競争力を失っている。米国の自発的排出削減目標(「約束草案」2005年比2025年26-28%削減)は遵守する必要はないが、上記により今後さらに削減することが見込まれる。結果として米国のパリ協定離脱は、今後石炭火力への投資はこれ以上行わないとする電力の決定に大きな影響を及ぼすことはない。

石油・天然ガス
石油・天然ガス市場もパリ協定離脱により影響は少ない。トランプ大統領はすでに前オバマ政権が課した石油・天然ガスセクターへの規制を緩和しており、6月1日の声明も単にこれまれでの国内エネルギー生産の拡大を目指すとしたトランプ政権のエネルギー政策を繰り返したに過ぎない。

電力
電力についても影響は極めて少ない。環境に関する連邦の電力政策における役割および電力規制はクリーンパワープランの展開を通じて各州により検証済みである。すくなくとも非拘束的な国際協定より、RPSやネットメータリングなど州レベルの政策また市場競争力のほうが電力市場および電力構成に及ぼす影響は大きい。

原子力
上記と同様連邦レベルでの原子力支援のあり方は変わらず、またクリーンパワープランを通じてイリノイ、ニューヨーク州など原子力を低炭素電源として盛り込んだ州については、今回の決定によりその政策に変更はない。

出典:
国際技術貿易アソシエイツ
5月25日付けインホフ上院議員らの書簡
ワシントン関係者からのヒヤリング