鉄道路線を調整電源に


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 東日本旅客鉄道(JR東日本)は、2017年3月4日のダイヤ改正で、栃木県内の烏山線を走る全ての列車を蓄電池で駆動する電車「ACCUM(アキュム)」に切り替えるという。1編成のみが電池駆動で残りはディーゼル車両のままだったのを、4編成全部を蓄電池駆動できるアキュムに変更し、架線から電気の供給を受けられない非電化区間を蓄電池にためた電気を使って走るというものだ。烏山線は上りと下りでそれぞれ14本運転しており、これらを全てアキュムに切り替える。ダイヤ改正では、アキュムは烏山線以外では初めて秋田県内の男鹿線に導入することも決まっているとのことだ。これは、蓄電池のコスト、性能、耐久性が、営業運転車両の動力にも使えるまでになったということだろう。JR東日本としても、軽油を燃料に使うディーゼル車と比べ、二酸化炭素(CO2)の排出量が抑えられるというお墨付きだけでは、ここまで拡充利用するという決断は出来なかっただろう。
 
 移動体に装備される蓄電池のコストが急速に下がりつつあることは、次の事例でも示されている。電気自動車の商品化で先頭を走っている米テスラモーターズとパナソニックが共同運営する「ギガファクトリー」(ネバダ州)でこの1月4日、電池の量産が始まったが、パナソニックが電池を製造し、テスラがいくつかをまとめてパックにして電気自動車(EV)などに使うことによって、電池パックのコストを従来に比べ3割以上引き下げることができると報じられている。

 このような事例を念頭に置いて考えたのは、自動車、列車という移動媒体に蓄電池が装備され、それを統合的に制御すれば、地域的な移動電源が一体的に積み上げられることになるということだ。電気自動車の蓄電池を統合制御することはよく論じられている。だが、筆者がここで発想したのは、特定の電化路線を走る列車に蓄電池を標準的設備として、かつ、少し容量を大きくして取り付けることによって、地域にある太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーにより造られた電力を蓄電し、かつ不規則に変動する発電出力を平滑化して、送配電系統の安定度を向上させることができる安定電源・調整電源として機能させることができるのではないか、ということだ。列車の場合、蓄電池の重量が多少増加しても、従来のものと比べて大きなエネルギー損失にはならないはずだ。電車の場合、ブレーキをかけるときに発電させる回生電力の利用は広く行われており、使い切れない回生電力を蓄電池に貯めておいて電力需要が大きくなったときに放電させる方式も実用化されている。列車の屋根に太陽光発電設備を設置することもできるだろう。

 自動車とは違って、鉄道の列車運行に則した電力供給は一元的に制御・管理されているから、地域の再生可能エネルギーからの電力を購入・蓄電・放電して利用するのを集中制御するシステムを導入するのに大きな障壁はないだろう。送電系統の側から見ると、地域を走る路線を利用して、広い地域をまたがる細長い安定電源が確保できると考えることができる。この方式が普及すれば、この列車を走らせる電気の何パーセントは再生可能エネルギーですということが言えるようになるかもしれない。

 新年の夢に終わるアイデアかもしれないが。

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