エネルギーの未来が見えてくる!

“エネルギーの村”青森・六ヶ所村のいま


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


印刷用ページ

(「月刊ビジネスアイ エネコ」2016年11月号からの転載)

 青森・下北半島の太平洋岸に位置する六ヶ所村は、国の石油備蓄基地や原子燃料サイクル施設、国際核融合エネルギー研究センターなど多様なエネルギー施設が集まった全国でも珍しい村です。その六ヶ所村で最近、自然(再生可能)エネルギーの導入が加速しています。“エネルギーの村”のいまを探ります。

風力発電に恵まれた土地

 六ヶ所村は、石油危機直後に石油備蓄基地が造られ、その後、原子燃料サイクル施設が建設されたことで知られるようになりました。経済産業省資源エネルギー庁の「次世代エネルギーパーク」に指定され、エネルギー産業観光の拠点化を進めてきました。開発を担う新むつ小川原の代表取締役常務、岩閒芳仁氏に六ヶ所村の“いま”についてうかがいました。
 「FIT(再エネでつくられた電気の固定価格買い取り制度)が2012年7月に始まる何年も前から、六ヶ所村の広大な土地では、風力発電が推進されてきました。年間を通して安定した強い風が吹いて風況が良く、雷の被害もほとんどないため、風力発電に適しているためです。建設に有望とされた遊休地の所有者が新むつ小川原、1人だったため、土地利用の話が円滑だったことに加え、周辺のむつ小川原地区は、工業開発エリアで電線が整備され、風力発電の条件に恵まれていました」
 風力日本一の青森県ですが、風力発電設備の約4割(2016年3月現在)は六ヶ所村にあります。村内には、「むつ小川原ウィンドファーム」(1500kW×21基)、「六ヶ所村風力発電所」(1500kW×20基)、「六ヶ所村風力第二発電所」(1425kW×2基)、「二又風力発電所」(1500kW×34基)、「睦栄風力発電所」(2000kW×5基)、「吹越台地風力発電所」(2000kW×10基)の6つのウィンドファームが稼働し、合計92基、総発電設備能力14万5350kWの規模を誇ります。
 7年前に運転を始めた二又風力発電所は、世界で初めて大容量蓄電池(NAS電池2000kW×17ユニット)を併設した風力発電所として知られています。さらに昨年4月に稼働した吹越台地風力発電所にもNAS電池(2000kW)が6ユニット設置されています。

吹越台地風力発電所=青森県六ヶ所村

吹越台地風力発電所=青森県六ヶ所村

「風力は気象により出力が変動しますが、大型蓄電池を併設すれば、系統への送電電力を一定に制御することができます。蓄電池併設型はコストが高くなりますが、将来のエネルギー問題を考えると、蓄電技術は不可欠で、村内は、ノウハウ蓄積へのチャレンジに前向きです」(岩閒氏) 

風力発電トレーニングセンターでの研修風景

風力発電トレーニングセンターでの研修風景

 現在、村内で建設中または計画されている風力発電プロジェクトは計8件。ここ数年の風力導入の動きに青森県の地元企業も触発され、風力発電所の建設計画を打ち出してきています。さらに村内には、日本初となる風力発電用のメンテナンス要員育成施設「風力発電トレーニングセンター」もあります。
 「トレーニングセンターには全国から人材が集まり、風車の維持管理技術の研修を受けています。青森県も、地元の高校生がトレーニングセンターで実習できるプログラムを設けて支援しています。研修を受けた人達は、全国の風力発電所のメンテナンス業務で活躍しており、地元の若者の雇用にもつながっています」(岩閒氏)

太陽光発電や氷雪熱利用も

 FIT制度スタート後は、村内の各所でメガソーラーの建設が加速しました。東京ドーム約50個分に相当する約253ヘクタールの広大な土地に、国内最大規模のメガソーラー「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」が2015年10月から稼働しています。村の鷹架(たかほこ)地区と千歳平地区には50万枚超の太陽電池モジュールが設置され、総出力11万5000kW(交流)、発電電力量は一般家庭約3万8000世帯分に相当します。

ユーラス六ヶ所ソーラーパーク(鷹架地区)

ユーラス六ヶ所ソーラーパーク(鷹架地区)

 また、雪氷熱(冷熱)を利用したユニークな寒冷地型データセンターが2015 年12 月に完成しました。青い森クラウドベースです。昨年経産省が行った調査によると、日本のデータセンターはIT機器が使用する電力の平均1.9倍の電力を消費し、そのIT 機器以外の電力消費の大部分は空調です。青い森クラウドベースでは、年間の9 割近くは青森県の冷涼な気候を利用した外気冷房を利用し、真夏期は商用データセンターとしては世界で初めて雪氷冷房を利用することによって、年間を通してエアコンゼロを実現しました。これにより、空調の電力消費は激減し、空調を含む全体の電力消費はIT機器の1.2倍未満という、世界でもトップクラスの超省エネルギー型データセンターとなります。
 この省エネ性と環境性の高い画期的な取り組みが評価され、経産省の平成26年度と27年度「データセンターの地方分散化に資する省エネ性向上の実証」の補助事業に採択されています。

外気冷房と雪氷熱による冷房を併用し、エアコンゼロを実現した 世界最先端のデータセンターの完成予想図

外気冷房と雪氷熱による冷房を併用し、エアコンゼロを実現した
世界最先端のデータセンターの完成予想図

エネルギーの未来を感じる村

 エネルギー関連設備の建設ラッシュを、地元の人たちはどう受け止めているのでしょうか?
 「村の人たちは、技術も含めてエネルギーについて継続的に勉強しています。全国から人や産業が集まることで、観光や地域振興に結びつくと、村も村民も前向きに考えています」(岩閒氏) 
 私もセミナーなどで村の方々と対話したことがありますが、勉強熱心で頭が下がる思いでした。
 「村では、風力や太陽光などの自然エネルギーの電気で水電解を行い、水素エネルギーにして貯蔵・活用する技術にも取り組むことを検討しています。六ヶ所村は、現在と未来のエネルギー について考える材料を提供してくれます。この村を訪ねると、エネルギーの実情や日本のエネルギーの未来がわかります」(岩閒氏)
 エネルギーに関心のある方はぜひ、六ヶ所村に足を運んでみてください。



東京大学環境エネルギー科学特別部門 駒場キャンパスDiaryの記事一覧