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「カーボン・オフセット制度」と「CFPカーボン・オフセット制度」


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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カーボン・オフセットとは?

 「カーボン・オフセット」とは、市民、企業、NPO、自治体、政府などの社会の構成員が、自分の温室効果ガス排出量のうち、努力してもどうしても削減が困難な量の一部、または全部を、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量(クレジット)を購入することや他の場所での排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施することなどにより、オフセット(埋め合わせ)することを言います。(図1)

図1(図1)カーボン・オフセットとは 出典:経済産業省[拡大画像表示]

 日本で実施されている「カーボン・オフセット」は、法規制によらない自主的な取り組みになっています。日常生活における電気の使用や、企業による商品の製造・流通・販売、自治体や政府による会議の開催、企業活動における様々なプロセスでは温室効果ガスが排出されますが、そうしたあらゆる活動がカーボン・オフセットの対象になります。企業でのCSR活動や社会貢献活動の一環として取り組まれている場合も多く見られます。

 なお、カーボン・オフセットによく利用されているクレジットには、「J-クレジット」「オフセット・クレジット」「国内クレジット」などがあります。(図2)

図2(図2)出典:カーボン・オフセット運営プログラム事務局[拡大画像表示]

 カーボン・オフセット等を目的としてクレジットを購入するには、クレジット創出者から直接購入する場合(相対取引)とオフセット・プロバイダー等の仲介によって購入する場合があります。 クレジットは、管理簿注1)の中にある「口座」で管理されます。(図3)

図3(図3)出典:カーボン・オフセット運営プログラム事務局

環境省が創設した「カーボン・オフセット制度」

 日本でのカーボン・オフセットの取り組みは、法規制によらないボランタリーなものです。しかし、より信頼性を高め、国内外の排出削減の取り組みを促進していこうと、環境省は「カーボン・オフセット制度」を創設し、2012年5月より運用を開始しました。ボランタリーなカーボン・オフセット宣言では第三者の審査は行われないため、透明性のある情報提供を行っていることを自ら主張しなくてはなりませんが、「カーボン・オフセット制度」では、第三者の審査・検証・確認がなされるため、信頼性の高いカーボン・オフセットの取り組みであることを社会に広くアピールすることができます。「カーボン・オフセット制度」には、カーボン・オフセットの取り組みを認証する「カーボン・オフセット第三者認証プログラム」と、オフセット・プロバイダーの情報を公開する「オフセット・プロバイダープログラム」の2つのプログラムが設置されています。

(1)カーボン・オフセット第三者認証プログラム
 「カーボン・オフセット第三者認証プログラム」は、カーボン・オフセット第三者認証に適合しているかどうかを第三者機関が認証してラベルを付与しています。「第三者の審査等による信頼性の担保」がなされていることをアピールできることがメリットです。認証の対象には2種類あります。一つは、カーボン・オフセットの取組を対象とした「カーボン・オフセット認証」で、もう一つは、カーボン・ニュートラルの取組を対象とした「カーボン・ニュートラル認証」です。(図4)

図4(図4)カーボン・オフセット認証数推移 出典:環境省[拡大画像表示]

 「カーボン・オフセット認証」は、カーボン・オフセットの取り組みがカーボン・オフセット第三者認証基準を満たしていることを検証機関が審査し、登録認証委員会が認証しています。認証を取得しようとする活動内の温室効果ガス排出源すべてを算定対象とする必要はなく、また削減努力も定性的な評価となっているため、初めてカーボン・オフセットの取り組みを行う事業者でも、比較的に認証を取得しやすくなっています。認証を受けた場合は、カーボン・オフセット認証ラベルを用いることができるため、信頼性の高いカーボン・オフセットの取り組みとして販売の促進やCSR活動のアピールに利用することができます。(図5)特に商品・サービスに関する認証取得事例が多く、2015年1月末時点で、累計173件の認証に対して、商品・サービスは約半数の87件を占めています。
◎カーボン・オフセット認証取得一覧(2016年6月8日時点での認証取得事例238件):
http://www.jcs.go.jp/companylist_window.html

図5(図5)カーボン・オフセット認証ラベル 出典:環境省

 一方、「カーボン・ニュートラル認証」は、組織におけるカーボン・ニュートラルの取り組みがカーボン・オフセット第三者認証基準を満たしていることについて、検証機関が審査し、登録認証委員会が認証しています。本制度における「カーボン・ニュートラル」とは、市民や企業などが、自らの活動の温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行い、どうしても削減が困難な部分の排出量について、クレジットを購入、または他の場所での排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施することなどにより、その排出量の全部を埋め合わせた状態をいいます。

注1)
登録簿:クレジットの発行、保有、移転などを正確に管理するために電子システムにより整備する管理台帳のこと

 カーボン・ニュートラル認証は、削減について基準年を設定し、定量的な評価を行うことが求められます。また、取り組み全体について検証を受けなければならないため、カーボン・オフセット認証よりも厳格な基準の設定がされています。カーボン・ニュートラル認証に関する基準は、ISO14061規格群に準拠しており、国際基準を満たすものとして国内外にアピールすることができることがメリットです。認証された案件はカーボン・ニュートラル認証ラベルを用いることができます。(図6)2016年1月末で21社が認証を取得しています。
◎カーボン・ニュートラル認証取得企業一覧:https://jcs.go.jp/cn/companylist_window2.html

図6(図6)カーボン・ニュートラル認証 出典:環境省

(2)オフセット・プロバイダープログラム
 「オフセット・プロバイダー」とは、市民・企業等がカーボン・オフセットを実施する際に必要なクレジットの提供およびカーボン・オフセットの取り組みを支援やコーディネート、または取り組みの一部を実施するサービスを行う事業者のことを言います。事業者や消費者がオフセット・プロバイダーの信頼性と透明性を確認できるように、プロバイダーの過去から一定期間の排出量クレジットの取り扱い方法などを定期的に確認し、「オフセット・プロバイダープログラム」のウェブサイトで情報が公開されています。
◎オフセット・プロバイダー一覧:http://www.jcs.go.jp/offsetprovider.html

経産省主導の「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」

 「CFP(カーボン・フットプリント)を活用したカーボン・オフセット制度(以下、CFPオフセット制度)」は、経済産業省により2013年から運営を開始された制度です。事業者が製品等のライフサイクル全体で排出された温室効果ガス排出量(CFP:カーボンフットプリント)を算定し、主体的に排出量の削減努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量をクレジットによりオフセットを行い、CFPオフセットの認証を受けた製品・サービスに認証マークを貼付する事業です。(図7)認証マークは、「どんぐりマーク」と呼ばれています。(※カーボン・フットプリントについては「カーボン・フットプリント制度とエコリーフ制度」をご参照ください。)

図7(図7)出典:経済産業省[拡大画像表示]

 平成25年度まではライフサイクルでの排出量の全て100%をオフセットすることを求めていましたが、事業者の負担を軽減し、消費者のCO2排出量の削減行動を喚起する観点から、平成26年度より事業者の責任が及ぶ範囲に限定した形でCO2排出量をオフセットする「部分オフセット」の認証も実施しています。また、平成26年度より、オフセットに使用可能なクレジットとして「グリーン電力・熱証書」をベースとした「グリーンエネルギーCO2削減相当量」を加えました。これは、経産省と環境省が共同で運営する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」に基づくもので、現在民間で取引されているグリーン電力・熱証書について、証書のCO2排出削減価値を国が認証しています。認証を受けた場合、地球温暖化対策推進法に基づく算定・報告・公表制度における国内認証排出削減量として活用できます。

 CFPカーボン・オフセット制度により「無効化」等を行ったクレジットは、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度や、その他の温室効果ガス排出量に係る報告制度の報告に利用できます。温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度は、排出量の多い企業に毎年排出量の報告義務を課すものです。「無効化」とは、カーボン・オフセットに用いたクレジットが再販売・再使用されることを防ぐために、クレジットを無効にすることです。
【例】製品メーカーがカーボン・オフセットを行う場合
例えば、製品メーカーA社が本制度への申請を行い、B社が製品の購入を行う場合は、図8に示す通りです。

図8(図8)出典:経済産業省[拡大画像表示]

 現在、印刷業界の事業者によるCFPカーボン・オフセット制度の利用が比較的多い傾向にありますが、経済産業省は今後、飲料や日用品などの消費者に身近な製品における取り組みの拡大を目指し、一般の消費者への認知度の向上につなげたいとしています。
◎CFPカーボン・オフセット認定取得一覧:
http://www.cfp-offset.jp/products/companies.html

カーボン・オフセットの今後

 近年の地球温暖化対策の重要性の高まりから、日本政府もカーボン・オフセットに積極的に取り組んでいます。最近注目された取り組みとしては、2016年5月26日、27日に三重県で開催された伊勢志摩サミットでのカーボン・オフセットがあります。伊勢志摩サミットはCOP21後初めて開催されたG7サミットですが、日本の気候変動対策への姿勢を国際的に示し、国内の地球温暖化対策に対する理解と協力への機運の高めていくことを目的にオフセットが実施されました。G7の首脳や関係者の会場までの移動や宿泊、会場運営などに伴うCO2排出量、約2万トンを法人または自治体から提供されたクレジットでオフセットするため、2016年4月26日から5月27日までの間に協力法人・自治体を募集しました。

 実際にクレジットを提供してくれた自治体や企業は112者(法人:85者、自治体27者)で、提供されたクレジットは合計1万3180トンになりました。これに政府のクレジットを加味して、サミットのカーボン・オフセットを実現しました。協力法人・自治体へのメリットとしては、G7伊勢志摩サミットのロゴや写真の使用も含め、カーボン・オフセットに協力していることを対外的にアピールできることです。また関係省庁のウェブサイトに、協力法人・自治体として名称が掲載されます。
◎G7伊勢志摩サミットのカーボン・オフセットへの協力法人・自治体一覧:
https://japancredit.go.jp/summit/list.html

 市場メカニズムを利用したカーボン・オフセットの取り組みは世界各国で行われており、欧州では、カーボン・ニュートラルを目指す企業等の動きも活発化しています。日本においては、地域におけるクレジットを活用したオフセット商品の開発やグリーン購入などの公共調達と連動したカーボン・オフセットの取り組みの普及拡大が期待されており、ニュートラル化を目指す企業などの動きも見られます。

 課題としては、カーボン・オフセットやカーボン・ニュートラルの取り組みがどのようなものなのか、人々にまだ十分認知されているとは言えないことがあります。カーボン・オフセットの利用を活発化させるためには、さらなる国民の認知度の向上は不可欠です。企業などのカーボン・オフセットの取り組みの支援とともに、政府や自治体など公的な組織が率先して、大きな会議やスポーツ大会などでのクレジットを使う場面(機会)をつくり、クレジット活用の拡大を図っていくことも重要と思われます。

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