第3回 電力の安定供給とCO2削減の両立をめざす〈後編〉

電気事業連合会 森﨑 隆善氏(電気事業連合会 立地環境部長) ※インタビュー当時の役職


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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第3回 電力の安定供給とCO2削減の両立をめざす〈前編〉

再生可能エネルギーの普及拡大に向けて

――再生可能エネルギーを普及拡大するための取り組みは?

森﨑 隆善氏(以下、敬称略):再生可能エネルギーを増やすためには、安定供給と両立していなければなりません。再エネの出力が変動する中で、いかにして安定供給するかという意味では、系統の対策が必要です。

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森﨑 隆善(もりさき・たかよし)氏

平成元年3月 早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻修了。
平成元年4月 中部電力株式会社入社。
平成15年7月 同 環境部環境計画グループ課長。
平成17年7月 同 経営戦略本部業務改革推進グループ課長。
平成19年7月 同 碧南火力発電所発電課長。
平成21年7月 同 碧南火力発電所技術課長。
平成22年7月 同 環境部環境アセスグループ長。
平成25年7月 電気事業連合会立地環境部長。

 地域間の連携の強化、また火力も含めたバックアップ体制の整備、全体として系統を活かして、いかにして再生可能エネルギーが増やせるかについて研究開発を行い、普及拡大を図りたいと考えています。これまでは需要の変動だけに合わせて発電をしていればよかったのですが、今後は発電側の再生可能エネルギーの発電量の変化に対して、系統全体で対応していく必要があり、今後やるべきことがたくさんあると思っています。(図1)

図1図1 需給変動の調整[拡大画像表示]

――再生可能エネルギーを蓄電池などと組み合わせ、地産地消する取り組みについては?

森﨑:再生可能エネルギーの普及拡大に向けた取り組みについては、「これで解決」というものはありません。送電線や系統を強化すればいいということだけではなく、やはりコストも含めていかにバランスよくやっていくのかが大事です。分散電源を置いた方がいいのか、系統を強化したほうがいいのか、それとも蓄電池や揚水発電の活用も含めて、最も経済効率もよく安定供給もでき、再生可能エネルギーも拡大できる形を、「3E(エネルギー安定供給、経済性、環境保全)」の観点から追及していく必要があります。いろいろな対策について複数検討を進めていきたいと思います。

「環境」と「経済」の両立するため、原子力と石炭火力をどう考えるか

――「環境」と「経済」の両立のために重要なことは?

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森﨑:CO2の目標も達成しつつ、電気料金も下げていかなければいけない中で、温室効果ガスを排出しないゼロエミッション電源を増やしつつコストを下げる必要があります。そのためには原子力発電の活用はこれからも引き続き必要ですので、2030年の国のエネルギーミックスにおける発電比率20~22%を目指して、電力業界としてしっかりやっていきたいと思っています。また電力自由化の中で原子力発電を維持していく環境整備が必要になりますので、政策的な施策を国に要望していきたい。

――どのような政策インセンティブを求めているのですか?

森﨑:原子力発電は少しの燃料で長期にわたって発電できるという意味では、海外の燃料価格、化石燃料の影響を受けず、安い電気を長期に渡って供給できます。ただ最初の建設など初期コストが大きいため、長いスパンで考えてコストを回収していく場合、これから自由化の中でどうやって経済性のバランスを取るかが問題です。将来にわたってコストが回収できないとなると、自由化の中では原子力は進め辛いということになります。イギリスでは、FIT(固定価格買取制度)のような施策が導入され、事業者のリスクを低減しています。

 もうひとつ、経済性ということでは、石炭火力も一定量は今後も必要だと思っています。石炭はCO2の排出量が天然ガスと比べると多いという欠点はありますが、他の燃料に対して安定的に調達できますし、経済的な優位性もあります。