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改正FIT法の見直しのポイントは?


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 今年5月、「改正再生可能エネルギー特別措置法(改正FIT法)」が参院本会議で可決・成立し、来年4月から施行されることになりました。改正FIT法は、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図り、最適なエネルギーミックスを実現していくために見直されたものです。国による制度の変更はわかりづらいようで、このところ改正FIT法の見直しのポイントは何なのかと聞かれることが増えました。そこで今回は、改正FIT法の見直しのポイントについて、要点を絞って解説したいと思います。

FIT法改正の背景

 日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は2014年実績で12.8%。大型水力を除けば、4.4%程度しかありません。日本で再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まったのは、2012年7月1日。制度開始後3年で、再生可能エネルギーの導入量は約2倍に増加し、FITは再生可能エネルギーの導入拡大の原動力になっています。中でも、太陽光発電の累積導入量は30GWに拡大し、総発電電力量に占める太陽光発電の割合は3%になりました。その一方で、太陽光発電と比べると、他の再生可能エネルギー4電源(風力、中小水力、バイオマス、地熱)はFIT制度が開始して以降もそれほど大きく導入が進んだわけではありません。制度開始後、運転開始した太陽光発電が全体の9割以上を占め、導入スピードのアンバランスさを露呈しました。(図1)この背景には、開発のためのリードタイムが他の4電源と比較して短い太陽光の優位性があります。

special201310_01_028_01図1 再生可能エネルギーの各電源の導入と認定状況
出典:資源エネルギー庁
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 また、FIT制度により、再生可能エネルギーを買い取った電気は、電気料金の中で「賦課金(サーチャージ)」という形で私たちが使った電力消費量に比例して負担する仕組みですが、その賦課金が予想を超えて増大してきていることが問題になっています。FIT制度の開始後、すでに買取費用は約2.3兆円(賦課金は約1.8兆円。平均的な家庭で毎月675円)に達しています。(図2)こうした問題に対応する必要性が高まり、電源間でバランスの取れた導入を促進し、国民負担の抑制のため、コスト効率的な導入を促進し、さらに電力システム改革を活かした効率的な電力の取引・融通を行っていくことで最大限の再生可能エネルギーの導入拡大を目指していく方針です。

図2 賦課金の推移 資源エネルギー庁の資料をもとに筆者が作成

図2 賦課金の推移 資源エネルギー庁の資料をもとに筆者が作成

改正FIT法の見直のポイント

 改正されたFIT法の見直しのポイントについて、主に4つに絞って解説したいと思います。

(1)未稼働案件の発生を踏まえた新認定制度の創設
 これは主に太陽光発電を対象としています。買取金額が高い平成24年度から25年度の認定済みの未稼働案件は全案件約117万件のうちの約34万件で約3割を占めており、大量の未稼働案件が存在しています。そのため、これら未稼働案件に対する対応として、新認定基準を設けたものです。(図3)

 運転開始後も事業内容の適切性や事業を実施しているかの確認、また設備が適切であるかの基準を定める予定です。さらに事業開始前の審査に加え、事業実施中の点検・保守や、事業終了後の設備撤去などの遵守を求め、違反などの改善命令・認定取り消しをできるようにしました。

special201310_01_028_01図3 太陽光発電の未稼働案件に対する対応 出典:資源エネルギー庁[拡大画像表示]

 改正法では、2017年4月1日の施行までに電力系統への接続契約の締結をしていない場合、原則として設備認定の効力を失います。2017年3月31日までに接続契約の締結を希望する場合には、2016年6月30日までに接続申し込みをする必要があります。(接続検討や契約の手続きには約9か月かかることから6月30日に決められました)

 新認定制度は、買取金額が高い価格が認められながら発電事業を始めていない事業者には退場を促し、低い発電コストで事業を開始する後発事業者を後押し、賦課金の増大の抑制を図ることが狙いです。接続枠を確保したまま事業を開始していない空押さえ案件を防止することにもなります。

 なお、すでに稼働している案件については、新制度の決定を受けたものとみなされますが、一定期間内に事業計画などの書面を提出する必要があります。また、2016年7月1日以降の認定案件や系統枠入札をする予定の案件については、猶予期間が認められています。

 また、景観問題や安全上のトラブルが各地で発生していることから、地域トラブル防止のため、今年4月1日より事業者の認定情報システムが運用開始されています。改正法の施行後は、土地利用や安全性に関する法令に違反していることが懸念される事例については、住民から通報を受け付ける窓口を設置する予定です。関係省庁や自治体より指導・命令がされ、改善されない場合は認定取り消しの対象になると思われます。構造物や電気設備、点検保守などに関するガイドラインを整備する予定で、事業者は地域に共生していく姿勢が求められます。

(2)太陽光発電の入札制度の導入
 大規模な事業用太陽光発電設備から入札制度を導入していく予定です。具体的な対象電源や入札参加要件については、調達価格等算定委員会の意見を聴いて決定されますが、同委員会で判断基準を明確に定める必要があります。(図4)

 今回の入札制度の導入は、ドイツの制度を参考にしています。2000年4月に改正により事業者に有利なFITを開始したドイツでは、開始後2年間は買取価格を変えず維持しましたが、2002年から価格低減率方式注1)を設定しました。太陽光導入の急拡大と賦課金の上昇を受けて、2009年からは国民負担の抑制を図るため、導入量に応じて価格低減率を変化させる方式に変更しました(当初は年間2.5GW規模の導入を想定)。2015年からは、大規模な太陽光発電地上設備は入札制度に移行しました。年に3回実施していますが、事業者が支援を受ける価格水準について入札し、応札札が安い順に落札できる仕組みになっています。

 入札制度のメリットは、競争を通じてコスト効率的な事業者から導入が進むことですが、デメリットとしては、事業者にとって入札金額によっては落札できないリスクが生じることです。

special201310_01_028_01図4 入札制度のイメージ 出典:資源エネルギー庁[拡大画像表示]

 また、系統接続の円滑化に向けて、各電力会社において、再生可能エネルギー発電事業者からの系統接続についての問い合わせへの対応を円滑に行っていくため、系統接続相談窓口を設け、今年2月9日より各電力会社のホームページでも案内を開始しています。(図5)

special201310_01_028_01図5 系統入札の状況と系統接続に関する問い合わせ先
出典:資源エネルギー庁
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注1)
価格低減率:直近の導入量が想定より多い場合には、価格低減率が上昇するのに対して、想定よりも少ない場合には買取価格の上昇もあり得る。

(3)地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大
 地熱や風力、中小水力、バイオマスといったリードタイムの長い電源は、事業化を決定した後も、適用される買取価格が決定していないリスクを負いながら、環境アセスメントなどの事業プロセスを行わなくてはなりませんでした。そのため、導入が思うように進まなかったことを踏まえ、改正法では、数年先の認定案件の買取価格まであらかじめ提示することを可能とし、事業の予見可能性を高めました。これにより事業化決定のリスクを低減されるため、事業者の参入を促すことになることが期待されています。(図6)また、太陽光以外のリードタイムの長い4電源については、通常3~4年かかるとされる環境アセスメントの手続き期間の半減を目指し、自治体による支援を強化していく方針です。

図6 複数年度価格設定のイメージ 出典:資源エネルギー庁

図6 複数年度価格設定のイメージ 出典:資源エネルギー庁

(4)電力システム改革を活かした導入拡大
 また、電力システム改革を活かして、再エネの導入拡大を図る取り組みを推進していきます。小売事業者が自己の需要家のために必要な再生可能エネルギーを買い取る、という現行の制度のままでは、エリア全体の需給状況にあわせて火力発電や揚水発電所の活用や広域融通を柔軟に行うことは困難です。(今年6月16日時点で経済産業省に登録済みの小売事業者は311社ある)

 そのため、系統運用に責任を持つ送配電事業者がFIT電気を買い取り、卸電力市場を通じて供給する仕組みに変更することで、効率的な系統運用やFIT電気の広域的な活用の促進を行っていくとしています。(図7)また、市場を経由しなくても、小売電気事業者への直接引き渡しもできるようにします。

special201310_01_028_01図7 送配電買取における小売電気事業者への引渡し方法 出典:資源エネルギー庁[拡大画像表示]

ポストFITの議論も始まる

 FIT制度はずっと続くものではありません。再生可能エネルギー市場への新規参入を促すインセンティブ政策であり、いずれ終わるものです。もともと“試行錯誤”で始まった日本のFITですが、予想を超えた太陽光発電市場の急拡大により“太陽光バブル“が起き、系統接続や賦課金増大などの問題が生じました。これらの問題に対応するため、現在すでにポストFITに向けた議論が進められています。

 FITによる賦課金という国民負担を発生させないのが、エネルギー自家消費型のエネルギーシステムの構築、つまり太陽光発電やバイオマス発電、蓄電池などの分散型電源を各地に広げていくことです。今後、日本は分散型電源と大規模集中型電源を協調させて需給のバランスを取るエネルギーシステムを構築していく方向になるでしょう。

 なお、改正FIT法により大きな転機を迎える太陽光発電の今後については、月刊「エネコ」で連載中の「松本真由美の環境・エネルギーDiary」8月号で書きます。8月1日以降、当研究所のホームページに記事を転載する予定ですので、よろしければそちらも合わせてお読みください。



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