気候変動交渉の専門人材の育成

緊急提言 【提言2】 —COP21:国際交渉・国内対策はどうあるべきかー内コラム(2)


国際環境経済研究所前所長

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 政府による交渉人材の確保も重要である。気候変動交渉の場は独自の用語法、論理が飛び交い、初心者にとって参入障壁が極めて高い。交渉官が1-2年で交代していたのでは、交渉団としての足腰が強くならない。他国の交渉官の中には「この道10年」のような人材がごろごろいて、年に何度も交渉会場で顔を合わせながら、お互いに過去の経緯や相手を熟知した上で交渉を続けているのである。そうした中で国益を踏まえ、気候変動交渉にしたたかに対応し、日本としての発信力を強化するためには、戦略的な人材育成が必要である。仮に気候変動交渉から一時離れるとしても、エネルギー問題や開発問題等、温暖化問題と密接な関連を有する分野を経験させた上で、交渉戦線に再投入することも一案である。
 気候変動交渉においては交渉が山場を迎えると、閣僚レベルでの交渉が重要な位置づけを占めることはしばしばある。その際、主要国の閣僚はほぼ全て英語で即興かつ当意即妙なやり取りをしており、多くの場合、通訳を要する上に、事前に準備したステートメントを読み上げがちな中国、ロシア、日本は例外的な存在である。気候変動交渉のように高度に政治的であると同時に技術的な交渉においては、閣僚レベル交渉の代表者は、現役の「閣僚」にこだわらず、米国の温暖化交渉大統領特別特使(閣僚級)であるトッド・スターン氏のように長きにわたって継続して温暖化交渉に特化して国を代表して対応する「特使」を首席代表にするというアイデアも検討すべきである。

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