新製品、モンゴル産羊毛素材の断熱材


YSエネルギー・リサーチ 代表


 知人に電気機器メーカーの若社長がいる。会社はお父上から引き継いだものだと聞いていたが、それに安住せず、再生可能エネルギーの普及にも力を注いで居られた。2011年の東北大震災後、被災地域の市民が推進する太陽光発電の設置にも大きく時間を割いておられて、本業の方は大丈夫かなと感じるほどだった。最近彼が関わった市民太陽光発電所の設置が終了して運開したようだが、本業にも関係しているから、プロジェクト支援で彼の会社が損をするようなことにはならなかったと思いたい。

 その彼が、モンゴルの電気がまだ来ていない地域にも太陽光発電を普及させようと行動しておられるのを聞いて、そのエネルギーに感心していた。ところが、もっと大変なプロジェクトを推進していることを知り、文字通り驚嘆した。そのプロジェクトとは、モンゴルで沢山飼育されている羊の毛を集めて、100%自然素材の断熱材として商品化しようとするものだった。モンゴルの人口は300万人しかないのに、羊は3,000万頭もいるそうだ。昔から羊毛はカシミアのウールとして毛布や衣服の素材に使われていたのだが、一時的なカシミアブームがあったために、必要な頭数以上に羊が育てられ、羊の放牧飼育事業が危機に陥る、あるいは、過剰な羊が草原の草を食べ尽くし、草原が砂漠化する可能性も出ていると聞いたことがあった。その過剰な羊から刈り取る毛や、カシミアには使えない毛を利用して価値ある商品にし、モンゴルの技能レベルにあった産業に育てようという大構想だった。

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 独り相撲ではないかと心配していたのだが、この構想にモンゴル政府が多大な関心をもつことになり、政府の協力も得られるプロジェクトになっていると最近知り、順調に進展しているのに再度驚嘆させられていた。彼の会社の出先も現地にできて、モンゴルに多様な人脈を築いているようで、モンゴルと日本を何度も往復している様子が伝わってきてはいた。その彼から、つい最近、羊毛で断熱材を作る工場がタルハン市に完成したという情報が入ってきた。その製品の名前は、KHAAN WOOL「王様のウール」(成吉思汗のカーンだろう)だそうだ。この製品はいま日本の建材試験センターで性能評価が行われていて、間もなく出る結果を見た上で11月から日本で販売を開始するという計画だそうだ。この新工場では年間2千トンの断熱材が製造でき、今後モンゴル国内5カ所に建設する計画となっている。断熱材の重さだけ教えてくれたが、1平米あたり1kg。断熱性能についてはいま進行中の性能評価がでるのを待たなければならないが、ウールの暖かさを感じさせてくれる。

 近年自然素材を使用した環境配慮型住宅が人気を集めるようになっている。しかし、目に見えない壁の中、天井裏に潜んでいる断熱材は、未だにグラスウールやロックウールなどが主流。この部分が自然素材を原材料にした王様のウールになるのが普及すれば、地球温暖化防止と途上国支援を同時に実現することができる。ここで心配をするとすれば、この商品の人気が上がると羊の放牧数が増え、草原の砂漠化が一層進む可能性があるということだ。彼は先刻承知のことだろうから、対応策も具体化していると思う。彼がFacebookに出していた設備と完成品の写真を付けているが、本格的な製造工場であることが分かる。

図2 図3

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