緊急提言 【提言4】

—COP21:国際交渉・国内対策はどうあるべきかー


国際環境経済研究所前所長


※【提言3】はこちらから


Ⅰ 気候変動交渉の本質とCOP21 での合意を見据えた交渉戦略を

提言4

 国連だけが温暖化問題を解決する場ではない。多様な場で、温暖化問題に取り組むことが、人類への真の貢献に繋がる。

温暖化防止は国連の場だけで行われるものではない。確かに、190ヶ国以上が参加する国連プロセスは関係者全員参加の正当性を主張しうる。しかし一方、弊害も大きい。コンセンサスベースの意思決定に時間がかかり機動性を欠く上に、煩瑣な手続きを含む官僚体質に冒されやすい。特定の国の拒否権発動により審議が止まってしまうこともしばしばある。
温暖化防止のための国際的な取り組みは、国連を中核とする「リオ・京都体制」のような単層的なレジームから、現在交渉されている次期枠組みに加え、地域間、二国間、産業間、都市間等の多様なイニシアティブを包含した多層的・複層的なものにしていくべきである。国連以外の場での取り組みの方が効果的な場合も多々あるし、国連内外の取り組みについて、どちらが温暖化問題の解決により貢献しているかを競わせることも、より良い政策を生み出していくうえで有効である。
たとえばJCMも、そもそもは国連以外の場での温室効果ガス削減も正当に評価されるべきだとの視点から、日本が独自に創案したものである。国連内のプロセスであるCDMでは対象技術が限定的であり、手続きも煩瑣であるのに対し、JCMが二国間故の迅速かつフレキシブルな対応を特長とするのは、そうした理由からである。現在日本政府は、JCMを次期枠組みの中に位置付けるべく国連の場において交渉中だが、国連内での認知を受けるために煩瑣な手続きや様々な制限を受け、結果的に非効率に陥るくらいならば、国連外のイニシアティブに徹することも一案である。
二国間のイニシアティブは首脳外交によってモメンタムを得られるメリットがある。安倍政権の地球儀俯瞰外交は、相手国との間でJCMにとどまらず、人材育成、政策の知見共有等、より幅広い協力を可能とする。特に日本との関係が良好なインドの経済成長パスが、今後、中国のような温室効果ガス排出を激増させるパターンを辿らないよう、多面的な支援、アドバイスを行っていくことは日本の大きな課題であると同時に、国際貢献にもなろう。
革新的技術開発については、革新技術のR&D能力や資源を持つ国の数が限られるため、そもそも国連での議論になじまない。能力と意思を持つ有志国の間で、より効率的、効果的な技術開発の推進、協力体制について議論する方がはるかに生産的・建設的である。
特定セクターにおける国横断的な官民パートナーシップも重要だ。たとえばIMO(国際海事機関)やICAO(国際民間航空機関)では先進国、途上国の航空、海運産業が国際航空、海運の世界での温室効果ガス削減に取り組んでいる。特にセクター別アプローチは国連外の方が機能しやすい。鉄鋼、セメント等の分野では国際産業団体ベースでの協力が進行中だ。日本の産業界はかつてブッシュ政権が提唱したAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)の下でのセクター別の官民パートナーシップを通じて、BAT(Best Available Technology)リストの作成やセクター別指標の開発等、積極的な貢献をしてきた。APPの活動はオバマ政権誕生後、CEM(クリーンエネルギー大臣会合)傘下の活動として形を変えて引き継がれているが、議長国米国のセクター別アプローチへの意欲は必ずしも強くないのが現状である。日本はセクター別アプローチの分野では国内、国際双方で豊富な経験を有しており、その役割についての国際的な再評価・強化を提唱していくべきである。また対象地域についてもAPPでカバーしていたアジア太平洋以外の国々に参加国を広げることも考えられよう。
また日本はモントリオール議定書に基づき、2001年にフロン回収破壊法を制定して取り組んできた実績がある。フロンやHFCは温室効果係数がCO2の数千倍~1万数千倍も高い一方、フロン回収自体は技術的には難しいものではない。回収にインセンティブを付与する制度的枠組みを設計するノウハウが重要となる。日本の経験をシェアすることにより、CO2以外の分野で費用対効果の高い温暖化対策に寄与することも検討に値しよう。
COP21議長国フランスは、国連以外の場での様々なイニシアティブを「解決のアジェンダ(Agenda for Solutions)」としてCOP21の成果の一つにしようとしている。国連をベースにした世界政府的な厳格な枠組みを志向する環境原理主義的な立場からは、国連内外の色々な取り組みが複層的に存在するレジームはバラバラで美しくないと映るかもしれない。しかし、柔軟性や機動力を有し、実際に成果を出しうる国連外の枠組みを活用していくことは、結局は地球規模での温暖化防止にとって大きなプラスになることを認識すべきである。

緊急提言【提言5】へ続く

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