北京の空が真っ青になった


国際環境経済研究所理事長


 中国に行っていた友人から、北京の空がこのところ綺麗になったというメールをもらった。

慶応大学・染野訪問研究員撮影

慶応大学・染野訪問研究員撮影

 冬場は、暖房の排気に加えて、三方を山に囲まれた地形の制約から空気が淀む北京ではあるが、夏場は時々、青空が見える。とはいっても、8月19日のPM2.5の数値は、155もあったが。

 9月3日の抗日戦争勝利70周年記念軍事パレードの期間中、北京の空をきれいに見せようとして、北京周辺の製鉄所は8月下旬から9月上旬まで30%の減産を指示された。
 北京市内への自動車の乗り入れもナンバープレートで制限され、昨年のAPECで実現した ”APEC BLUE” を再現したいと北京政府は必死になっている。

 この時期のみならず、9月下旬から10月初めの国慶節(中華人民共和国の建国記念日)期間も、北京周囲100Km以内の製鉄所は100%生産停止、200Km以内は50%減産、200Km以上は30%減産を政府から指示された。

 一方、今年1月に施行された新・環境保護法の効力は、予想以上に発揮されつつある。
 一定期間、環境対策を講じなかった企業に対して行政が企業の閉鎖を指示できることになっているが、環境保護部は、石炭火力、鉄鋼、石油化学を排出汚染の著しい業種として名指しするとともに、産業政策を担う国家発展改革委員会も、汚染の激しいこれらの業種が集まる河北省に次官を派遣し、環境問題の取り組みに加えて、過剰設備淘汰と設備集約を強力に進めようとしている。

 こうした動きのなかで具体的な閉鎖が出てきた。
 河北省唐山市の国豊鋼鉄(1993年設立、香港中旅集団が過半の資本を持つ外資企業、昨年の粗鋼生産840万トン、従業員が1,000人を超える)が地方政府から名指しで生産停止に追い込まれた。私も北京に駐在していた時に訪問したことのある中堅企業であり、環境対策に消極的な中小企業ではなくトップ100に入る外資企業が閉鎖されるのは、中国の鉄鋼業界で話題になっている。

 中国の鉄鋼生産は、昨年7億トンであるが、能力はこれをはるかに超えており、実需を大幅に超えた過剰な鉄鋼製品が東南アジアを中心に溢れかえっている。中国中央政府の環境規制、設備の集約・淘汰の意向に反して、地方政府は、地域の雇用、GDPなどを維持する姿勢が強く、なかなかいうことを聞かなかった。
 この最たるところが最大の鉄鋼生産省である河北省であるが、党中央は、今年7月、過剰設備集約や環境対策で成果の上がらない河北省トップの周本順党書記を反腐敗・規律違反の名目で逮捕した。周本順は先に汚職で無期懲役になった周永康の秘書を務めたことがあり、反腐敗運動の一端だろうが、中央の意向に従わない地方幹部に制裁を加えた例である。

 中国経済は景気の停滞もあって、各地の鉄鋼産業は収益の悪化、減産が続いており、倒産企業も続出しているが、環境対策を真面目にやらないと北京の空気が良くならないことを、共産党幹部が実感し始めてきたのではないか。

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