GHG削減には、全体最適の視野が大切(3)

製品等を通じたGHG排出削減貢献量評価


一般社団法人日本化学工業協会 技術部長

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4-2 自治体の動向

 自治体においても滋賀県、川崎市などは製品を通じたGHG削減貢献推進に熱心である。
 滋賀県では、平成23年3月に「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」を制定し、その記載項目の一つに省エネ製品等の生産・普及を通じた低炭素社会への貢献について掲げ、「滋賀県製品等を通じた貢献量評価手法  算定の手引き」を作成した。
 川崎市では、省エネ製品等のGHG削減効果について、計画書制度で記載するための「『域外貢献量算定ガイドライン』、『川崎メカニズム』を作成・公表している。

4-3 アカデミアでの動向

 自治体・産業界による上記のAvoided Emission算定の動きが活発な状況を踏まえ、日本LCA学会として、工学院大学 稲葉教授が研究会を立ち上げ、Avoided Emission算定の指針策定を開始することとなった。
 2014年10月には、つくば市で「EcoBalance 2014(第11回エコバランス国際会議」が開催される。LCAなどのライフサイクル思考の実践に動機の与えられる社会が望まれることから、会議のテーマを「Creating Benefit through Life Cycle Thinking」としている。

 製品によるGHG排出削減貢献量評価の作業は一つのセクター単独ではなし得ない事業である。
 国内においては、産業界における日本経団連との連携、グローバルにはWBCSDとの連携ができているこのタイミングを活かし、化学産業が提唱して始まったこれら一連の流れを更に強めるべく、化学業界の国際組織ICCAに設置されている E&CC LG(エネルギーと気候変動を主要課題として活動しているグループ)の下に、LCA ベストプラクティスタスクフォースのメンバーを中心に、他業界も巻き込んで、セクターを超えたグローバルなGHG排出量算定の規格確立を目指して、活動を継続・推進していく新しいタスクフォースも立ち上がった。
 このタスクフォースでは、世界各国の化学工業協会に働きかけ、各地域の事例研究を進め、これら事例を集めることから作業を開始している。今後外部のグループで同じような活動が始まれば、その活動に積極的に加わって、考え方の統一を図り、化学業界にとどまらず広く誰でも共有化できるGHG排出量算定の規格として確立できることを願っている。
 部門を超えたGHG排出量算定手法が確立されれば、これまでのどちらかというと部門別の政策議論から、cLCA手法を活用した、広い視野から全体最適の議論がますます活発になることが期待される。

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