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手元に置きたいエネルギー辞典、ダニエル・ヤーギン著「探求」

書評


国際環境経済研究所理事


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電気…今や空気のようになっているという指摘も

 電気エネルギーと電力事業についても、歴史を語りながら興味深く記述が進む。「交流電気」、「核燃料サイクル」、「価格統制の崩壊」、「燃料の選択」と言う章建てである。
 まず、電気事業の勃興が、書かれる。主役は、当初発明王エジソンだった。エジソンが興した電気事業は直流システムだった。しかし、エジソンは、結局、テスラが発明しウエスチングハウスが買収・事業化した技術・交流システムに敗北する。良く知られたことである。この間に交流派と直流派は、様々な攻防戦を展開する。この点について、如何にもヤーギン調で語られるのは、エジソンが資金源のモルガンをしっかりと押さえつつも、交流勢力に相当な意地悪をしたという逸話だ。そんなことが面白く書かれる。ヨーロッパの電気事業初期の状況についても触れられる。続いて、自然独占、価格統制と記述が進み、原子力発電の章を挟んで、電力自由化へと話は展開する。
 この第三部「電気時代」で、特に記憶に残るのは、書き出しの部分だが、次のような記述がある。
 「電気は普及している。しかし同時に、あるのがあたりまえだと思われている点では、石油をしのぐだろう。ガソリンの使用には、週に一度か二度、ガソリンスタンドに行って給油するという、意識的な活動をともなう。電気の場合は、だれでもスイッチを入れればいいだけだ。人々が電気のことを考えるのは、せいぜい、毎月の請求書が届くときか、たまに、嵐か電力システムの故障で不意に電気が消えるときだけだ。」
 この文章は、極めて、唐突に出て来る。しかし、昨今の電気事業に対する社会一般の目や雰囲気を思うに、その根底にある大きな課題を指摘しているように思う。評者の意見では、要は、電気エネルギーの有効性・メリットが、一般の人達には感じられていないのだ。一方、一般の人達が日常的に接するのは、電気料金の値上げであり、原子力発電の事故や放射能に関する情報ばかりなのだ。この点は、何とかして、コインの両側を思ってもらうように、バランスを回復すべく、関係者は工夫しなければならないと思うのだが、いかがなものだろうか。

本書に書かれた日本人…真鍋淑郎氏から上田隆之氏

 ところで、本書には、日本も出て来るし、日本人も紹介される。ここでは、“人”についての記述を拾ってみたい。
 まず、真鍋淑郎氏:東大からアメリカのプリンストン大学・地球流体力学研究所に移られた氏を気候の地球モデル作成の先駆者として紹介し、二度に及んで氏の言葉を引用している。
 天谷直弘氏:この人らしい言葉が紹介されている。日本がエネルギーの脆弱さを思い知らされたのは石油ショックだったが、その数年後に、日本が備えをしていることを強調した天谷氏の言葉:「私たちは、地面の中の資源ではなく、頭のなかの資源を使う」。
 堺谷太一(池口小太郎)氏:通産省に入省し、昭和40年台半ばにエネルギー資源担当部門に配属された氏が日本のエネルギー供給の脆弱性に気づき驚いたことが語られる。その後、官僚作家として昭和50年に「油断」を上梓したことが紹介される。さらに、発足直後のNEDO「新エネルギー・産業技術総合開発機構」でサンシャイン計画を主導したことも紹介されている。
 川口順子氏:“もったいない”という日本的な思いを語ったようだ。この記述に続いて、日本の省エネルギー法やトップランナー制度が紹介される。しかし、2011年3:11によるその後の電力不足に直面した状況を著者は、次のように書く。「日本の一部地域は深刻な電力不足に直面した。そういう状況のもとで、“もったいない”は、選択肢ではなく、責務になった。」
 内藤正久氏:日本のエネルギーの特徴を語ったことが書かれている。
 上田隆之氏:経産省官房審議官時代、“電池三兄弟”を語ったようである。

政治家の判断が重要

 さて、本書は、大著だが、本評も相当に長くなった。著者:ダニエル・ヤーギンが、結論…“偉大な革命”で書いていることの一部をご紹介して、本評を終わりにする。
 著者は言う。「“エネルギー政策”はしばしば、“エネルギー”を対象にしているとさえ思えない政治によって定められる。だが、未来に決断を下すのに役立つ原則が確かにあることを、歴史が示している。」
 続いて、著者は、その幾つかの原則を何点か記述している。
 政治あるいは政治家の重要性が強調されている。
 最後に、重ねて書かれている言葉を引用する。
 「エネルギーの責任ある使用と効率、適切な判断、絶え間ない投資、政治家の見識と手腕、協力、長期的な思考、環境へのしんしゃくとエネルギー戦略の思慮深い統合が求められる」

book

「探求――エネルギーの世紀(上)、(下)」 
著者:ダニエル・ヤーギン(出版社: 日本経済新聞出版社)
(上)ISBN-10: 4532168317
   ISBN-13: 978-4532168315
(下)ISBN-10: 4532168325
   ISBN-13: 978-4532168322



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