最近の気象 …英国ニコラス・スターン博士のレビューを思う


国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長

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 今年の夏の暑さは猛烈だ。この暑さは過去二、三年続いているように思う。このところ九州地方や北陸地方の南を襲っている豪雨も凄い。土砂崩れなどの被害も大きい。「線状降水帯」など気象の専門用語が日常用語化している。

 最近の気象はこれまでとはどこか違ってきていて、荒々しいように感ずる。もっとも、百年前に寺田寅彦は、街並み自体が変わってきていることを挙げ被害状況の変わりようを語っている。自然災害を語る際には、被災を受ける側の変わりようも考慮しないといけないのだろう。

 先般、青森県下北半島に行った。

 青森市を出て野辺地を経由し半島の国道279号線を北に走った。むつ湾に面し“菜の花畑”で知られる横浜町では名産の“ナマコ”が獲れないと聞いた。むつ市から大間に向かう途中、津軽海峡に面する大畑港を通った。大畑港では最近はイカの漁獲量が激減していると聞いた。イカ釣り船の“漁火(イサリビ)”も見られなくなってしまったと思うと残念だ。海の状況が変わってきているのではなかろうか。

 そんな体験を頭に、身の周りを改めて見ると“スズメ”を見なくなったことに気づく。スズメはどこに行ってしまったのだろう。

 身近な生態系でもこれまでと違う何かが起こっているように感ずる。

 2006(平成18)年、英国のブレア首相時代に、世銀のチーフ・エコノミストだったニコラス・スターン博士が“スターン・レビュー”と呼ばれる気候変動と経済に関する報告書を公表された。博士は、日本にも見えていて、在日英国大使館で講演もされた。17年前のことだ。

 スターン博士は、気候変動によって予測される影響をレビューで語っている。その影響の中には次のようなことがあった。

  • 地球上の生態系のほとんどが変わる。
  • 暴風雨、干ばつ、洪水、強い熱波など生態系に大きな影響を与える現象が増える。

 当時、一部に、博士が使った計算モデルに問題があると言う指摘などもあったが、今日起こっている気象現象を見ると、博士のレビューされた指摘は間違いではないように思う。どんなものだろうか。