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京都議定書の経験を踏まえた新たな国際枠組みについて


元環境省環境経済課長


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(2) 老朽化設備、非効率設備の一掃とそのための国境を越えた投資の必要
 世界中には先進国も含め、40年くらい改修していない熱供給システムなど非効率な老朽化施設がたくさんある。地球上の非効率なインフラを廃棄し、それらの更新に最先端技術を投入することで温室効果ガスの純減を実現する「地球重点事業」を進め、投資が出来る国には、投資を呼びかけていくという方法をとらないと何時までも非効率な施設が残されてしまう。また、更新を行わず新規設備の建設を進めていては「仮想の削減」しか生まれない。
 地球重点事業の中身としては、まず第一に、「フロン対策」として途上国での既存機器からの回収破壊など。第二に、旧社会主義圏などでの「熱供給事業」。各戸別のメータもなく、料金徴収も行われていない国もあるようだが、使った分の料金を確実に回収し次の投資に回すといった当たり前のシステムの導入もセットで行うことが望ましい。第三に、「送配電インフラ整備」、送電ロスが10%を超える国もあるようだ。第四に、「石炭利用の改善」、多くの国にとって国産である石炭は放っておくと使われてしまう化石燃料であり、また、中国のスモッグのように家庭の冬季暖房用石炭は蒸し焚きして黒煙排出を減らしたものを供給するなど大気汚染対策も加味した対応が必要である。
 これらは、石炭火力発電所に超超臨界を使うなどの最先端技術だけでなく、日本国内の需要が減ってきたボイラーや電線などもこれらの国では需要があるので、日本が率先して、地球重点事業として投資していく姿勢を打ち出すべきである。そして、そこで生まれた温室効果ガス削減量を日本の貢献として相手国の国別報告書で書いてもらい、各国の国別報告書の日本の貢献の合計を正々堂々とCOP/MOPの場で表明すべきではないか。
 地球重点事業のリストアップは、省エネ基準、断熱基準、送配電漏洩率などの指標に照らして、AからDくらいまでの施設・設備のランク分けをし、Dランクのものを地球上からなくすことを第1歩とする。もちろん、我が国の国内の目標はこれらの指標の世界最高を更新していくこととする。すなわち、各国の温室効果ガス排出パフォーマンスの改善を目標とし、国境にとらわれず削減に投資をした分を各国の削減量と見て認めてはどうだろうか?
 削減に国境を持ち込み、基準年比○%削減にこだわることは、地球上でのより多くの温室効果ガス削減という現在の人類の課題を見えにくくするだけだ。国連で日本の削減量として認めてもらえるかどうかばかりにとらわれずに、仲間を集めて一緒に温室効果ガス排出量を下げたという実績を持って国際交渉をすることの方が重要なのではないか。そういう削減事業の投資を促進する方法はいろいろあるはずである。
 支援策は事業によって異なっている。発電、製鉄等の省エネはエネルギーコストの削減による本業の利益増大につながる。他方で、他の経済的メリットがないフロン回収破壊は事業になることを示す必要がある。回収されたフロンを買い上げて破壊を公共事業として行うことも一案である。

(3) 地球重点事業を促進する手段としての二国間スキーム
 CDMのように国際機関に一元化する集権的な仕組みは一見公平に見えるが非効率になることが多い。CDMについては先に述べた問題の他に審査に時間がかかりすぎてクレジット発行までのリスクが高いとの問題もあった。地球重点事業に関しても世界共通の「推奨技術リスト」が出来て各国がそこに向けて技術開発を行い常にリストを更新していく仕組みが美しく見える。しかし、地球環境問題に関する様々な基金を始めとする支援の仕組みがありながら、常に新たな支援の仕組みが議論されていることを考えると国際機関による支援には懐疑的にならざるを得ない。
 日本政府が提唱している「二国間オフセット・クレジット制度」(Joint Crediting Mechanism)は、二国間で作った委員会で温室効果ガス削減事業を進めていこうとするものであり、相手国の自然的社会的条件の考慮や日本技術の活用に効果的な提案だと思われる。この仕組みをCDMで失敗したクレジット発行ではなく、パフォーマンス改善のための削減効果把握、政策改善の場とすることはできないだろうか。まずは、二国間で実績を作り、それを広げて行くやり方の方が集権的な国際機関による支援策より優れていると思われる。
 2020年以降の世界では、全ての国が削減義務を負うのであれば、現在義務を負っていない非付属書Ⅰ国に限らず、旧ソ連・東欧諸国や欧米諸国との共同実施を考えた二国間事業があり得るのではないか。寒冷地にあるこれらの国においては熱供給事業の改善の余地は非常に大きいと思われる。
 二国間の委員会で、①改善必要設備の洗い出し、②推奨技術の仕様の確定、③改善必要設備の申請と投融資を行う国・事業者とのクリアリングハウス、④地球重点事業として実施する事業の承認、⑤事業実施、⑥実施された事業による削減量の国別報告書への反映、といった手続きを進めてはどうだろうか?併せて、相手国の省エネ基準の向上や設備・製品にとどまらず、日本の省エネ法・フロン管理法と言った「制度」の普及を進められないものだろうか?
 現在、気候変動枠組み条約締約国会議では、「国別削減目標の設定とその実施」と
「先進国から途上国への支援」の二つの流れがあり、例えば、ODAによって整備された設備施設による温室効果ガス削減量を見える化した場合、それを国別削減目標の達成に使えるかと言った類いの議論がある。また、ハイブリット車やインバータエアコンと言った日本製品が普及したことによる削減量を見える化した場合、それを売ったメーカーが削減量がクレジットとして売れるとなったらどうだろうか?キチンと削減量を見える化して各国のパフォーマンスを改善していくことと、金銭取引されるクレジット事業が混同されていないだろうか?
 日本製品はアフターサービスも含めた売った後のメンテナンス、修繕などをパッケージにして長い目で見れば大きな便益を与えられるものである。「長い目で見ればお得」であることを二国間の政策対話で相手国に理解してもらうことも重要ではないだろうか。企業関係者からは、投資判断に影響しないクレジットよりも、相手国政府のお墨付き、省エネ基準や公共調達の仕様等への反映といった、「仕組み」が出来ることの方が日本技術の普及は進むとの声がある。
 金銭取引の対象とするための厳密さを求めるより、排出事業者が排出量を生産量や在庫などと同じように管理する方向に持っていくべきではないだろうか。取引が出来るクレジットにするために面倒な手続きを求めては、逆に排出量削減のメリットを感じられにくくしているように思われる。

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