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工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[後編]

仲間とスクラムを組んでこの難局を闘いたい


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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電気料金の値上げは大きな負担、世界に対して太刀打ちできなくなる

――今、火力発電の燃料コストが上がっていますが、頭の痛いことです。

工藤:現場感覚で言いますと、法人税率が高いですが、現場の人間は1円でも削減するための改善努力をしています。今でも乾いた雑巾を絞るようなことをやって、少しでも削減していこうとしている。けれども社会インフラに近いところの電気料金が大きく上がると、その努力も吹っ飛んでしまうわけです。まったく世界に対して太刀打ちできません。特にグローバル化の中で闘っているだけに、彼ら組合員の努力が全くむくわれないことになってしまっている。これは悲しい状況です。

――国際社会の中で競争力を持ってやっていかなくてはいけない業界かと思います。

工藤:負けるわけにはいかないんですよ。

――世界と闘えなくなることを懸念されているのですね。

工藤:これを一番危惧しています。電力料金の値上げは、大きな負担です。電気代がぽーんと上がるだけで、利益も吹っ飛んでいきますし、少しずつの積み上げが消えていきます。

再生可能エネルギー普及は大事、しかし電気代のサーチャージは納得できない

――そうした中、再生可能エネルギー全量買取制度が7月1日からスタートしますが、再生可能エネルギーについてはどう考えていますか。

工藤:まず経済効率性を考えて、電力料金が上がることに対して否定的な見解を言わざるを得ません。基幹労連としては常々言っておりますが、莫大な負担がかかる業界が多いのです。たとえば、電気炉は、鉄スクラップを買い取り、電気の炉に入れて溶かしこみ、電気を多消費して新しい製品をつくり出していく、リサイクル産業の雄というべき産業です。夜中や一番電気代の安い時間帯に稼働させるようにしていますが、電気料金がビジネスのネックになってくる。そういう努力の中、組合員は夜中に働いているわけです。電気代が上がると、電炉業がこの国で生き残れないかもしれない。大変な雇用不安になってくる懸念がある。

 電力多消費産業に対する支援をぜひ目に見える形でお願いしたいのです。なおかつ今後の状況を見て、制度の変更ができるようなものにしてもらいたい。今回の法案では電力多消費産業のサーチャージ軽減措置が盛り込まれると思いますが、ずっと見続けていきたいと思っています

――あまり大きな負荷が産業にかかることは困ると。

工藤:そうです。たぶん製造業は電気料金が上がることについてそう思っているのではないでしょうか。再生可能エネルギーの普及はやるべきだと思うし大事なことです。ただ電力料金が上がることについて、もっと本質のところを見てほしい。つまり電力料金が上がることにより、どんなことが起きるのかということです。経済効率性を考えていくと、電力料金が上がることで多くの企業が世界の中で闘えなくなるのではないか。

――サーチャージとして電気料金に転化して皆で負担する制度についてすべて納得したわけではないということでしょうか。むしろ再生可能エネルギーを広げるなら、社会コストとして別予算でやってほしいとか。

工藤:そうですね。これは本当にうまくいくかどうか疑問です。

――他の産業の方にもお話をうかがいましたら、再生可能エネルギーは当然増やしていかなければならないが、電気代のサーチャージを8割低減といっても2割は負担しなければならない、2割でも相当の負担になると話されていました。

工藤:再生可能エネルギーを全量買取るのです。言い方は悪いかもしれませんが、今後再生可能エネルギー事業者は安定経営できて、国営企業のようなものですよね。しかし、その料金は誰が負担するのかというと、電力をつくれないような方々が負担するわけです。再生可能エネルギーを、どんどん増やしていくという考え方は正しいと思いますが、それが電気料金に入るのはどうかなということです。

――一般家庭も消費電力に比例したサーチャージを負担することになります。

工藤:お金を持っている方は再生可能エネルギーによる電気をつくって、国営企業になるわけです。電力が足りない分を買い取るのではなく、全量買取が本当に必要なのですか。今後見直しもあるでしょうが、状況を見ながらやってほしいと思います。