日本経済が再び世界をリードするために[前編]

~エネルギーの安定供給と経済性の視点を外さないでほしい~


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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エネルギー・ベストミックス推進の4つのポイント

――原子力は近年、地球温暖化対策のベース電源として注目されていました。福島第一原発の事故により世論を含め状況が変わっています。

井手: 原子力を活用していくうえでは、国民や国際社会の信頼回復が最優先課題だと思います。東日本大震災を踏まえた事故の再発防止策の徹底と、安全基準の抜本的見直しを含めた安全性向上にかかる不断の取り組みが必要です。あわせて、自治体や住民の意向を十分に踏まえた情報開示のあり方についても再検討すべきです。わが国の英知を結集し、最高水準の安全性を備えた原子力の実現に取り組む必要があると思います。

――再び評価が高まっている化石燃料についてはどうお考えでしょうか。

井手:化石燃料では、安定調達・供給と高効率利用に向けたさまざまな取り組みが求められています。官民協力による上流権益の確保や、燃料源の多様化、調達先の分散化が必要です。資源国や資源メジャーに対して価格交渉をもつための国内体制の整備も検討すべきです。さらに、火力発電の高効率化やCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の実用化をはじめとする研究開発の強化も欠かせません。

――原発事故以降、再生可能エネルギーが脚光を浴びていますが、普及のためには何が必要ですか。

井手:再生可能エネルギーは、エネルギー自給率向上や地球温暖化対策等の観点から重要です。しかし、普及させるには高コスト問題の解決が不可欠です。まず、費用対効果や物理的な制約を踏まえ、わが国がどの程度導入できるか客観的な分析を実施する。そのうえで、わが国の自然環境に相応しい現実的な導入計画を策定していく必要があると思います。その際、高価格・低効率の機器の普及を急ぐのではなく、研究開発や設備投資の支援、事業者間の競争によるイノベーションを通じた高効率化、低コスト化をまず図るべきでしょう。一方、地熱発電や風力発電については、立地規制の思い切った緩和なども不可欠と考えます。

――日本は省エネが進んでいるといわれますが、この分野でも、さらに努力する必要がありますね。

井手:省エネは、化石燃料の活用や再生可能エネルギーの普及促進に並ぶ大きな項目だと思います。これまでと同様、ユーザーによる主体的な取り組みを後押しする観点から、引き続き、電力の使用状況の見える化や省エネ機器の導入促進、設備投資への政策支援、研究開発の重点化を図るとともに、国民運動として、ライフスタイルとワークスタイルの見直しを進めるべきと思います。

松本真由美 国際環境経済研究所主席研究員