2011年11月のアーカイブ

  • 2011/11/30

    奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[後編]
    6重苦を乗り越え、日本のものづくりを守りたい

    東日本大震災により、自動車業界のサプライチェーンは大きな打撃を受けた。この未曾有の大災害に自動車業界はどう対応し、今夏の電力不足をどう凌いだか。今後のエネルギー政策への提言も含めて、日本自動車工業会の環境委員長を務める奥平総一郎トヨタ自動車常務役員に、澤昭裕国際環境経済研究所長が聞いた。

    ――インパクトとして円高等の直接的問題もありますが、エネルギーや温暖化対策等の環境の制約が産業空洞化にどれくらい影響があるとお考えですか。

    奥平総一郎氏(以下敬称略):エネルギーもコストに反映されます。車づくり、ものづくりにはかなりの電力を使っており、状況によっては、相当な割合で電力費用が上がる可能性もあると思います。
    しかし、それがそのまま空洞化につながるかというと、そうではありたくないと思っています。

    ――空洞化しないように努力するということですね。

    奥平:我々は国内生産を守って、日本のものづくりを守りたい。しかし5重苦、6重苦の状況を解決していかないと、日本のものづくりは守っていけなくなります。

     単に1企業が「空洞化を防ぐために頑張る」と言ってもなかなかできるものではありませんが、皆が日本のものづくりを守るという気持ちで協力し合えば、できる事もかなりあると思っています。

    1979年3月、東京大学工学部船舶工学科卒業。同年、トヨタ自動車工業(現在のトヨタ自動車)に入社。第2トヨタセンターZEエグゼクティブチーフエンジニアなどを経て、2008年6月に常務役員に就任、現在に至る。技術統括部統括、東富士研究所管理部統括、第2技術開発本部本部長を兼務。現在、日本自動車工業会で環境委員長を務める

  • 2011/11/29

    奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[前編]
    東日本大震災をバネに、災害に強い体制を構築したい

    東日本大震災により、自動車業界のサプライチェーンは大きな打撃を受けた。この未曾有の大災害に自動車業界はどう対応し、今夏の電力不足をどう凌いだか。今後のエネルギー政策への提言も含めて、日本自動車工業会の環境委員長を務める奥平総一郎トヨタ自動車常務役員に、澤昭裕国際環境経済研究所長が聞いた。

    ――震災により、自動車各社もエネルギー・燃料調達からサプライチェーンの分断まで、さまざまな影響があったと思います。どう対応されましたか。

    奥平総一郎氏(以下敬称略):東日本大震災では、被災された方々が大変な思いをされ、今もご苦労されていることに心からお見舞い申し上げます。震災直後の我々の取り組みは、まず人命救助でした。けがをされた方々の支援をさせていただき、次に現地の復興の支援、さらには生産活動復旧をさせていただいています。

     生産活動の復旧はきわめて早い段階から進み、3月に地震が起きてから、8月、9月で8割、9割の生産に戻りました。これも被災地である東北地方の自治体の方々をはじめ、地元企業、仕入れ先の多大なるご協力と日本各地、海外からの多くのご支援の賜物であり、大変感謝しております。業界としても、ご協力いただいたことに深く感謝させていただきます。

    奥平 総一郎(おくだいら そういちろう)
    1979年3月、東京大学工学部船舶工学科卒業。同年、トヨタ自動車工業(現在のトヨタ自動車)に入社。第2トヨタセンターZEエグゼクティブチーフエンジニアなどを経て、2008年6月に常務役員に就任、現在に至る。技術統括部統括、東富士研究所管理部統括、第2技術開発本部本部長を兼務。現在、日本自動車工業会で環境委員長を務める

  • 2011/11/24

    震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[後編]
    安定的な供給体制構築へ求められる国の役割

    東日本大震災では、地震と津波によりガスや水道、電気の供給が途絶え、大きな影響が出た。この未曾有の震災にガス業界はどのように対応したのか、また、今後のエネルギー政策に業界としてどのように取り組んでいくのかについて、日本ガス協会常務理事の池島賢治氏に話を聞いた。

    ――温暖化対策で化石燃料から代替エネルギーへのシフトが進んでいましたが、震災以降は化石燃料が再評価されています。天然ガスはどのような優位性があるのでしょうか。

    池島:天然ガスの主成分であるメタンの化学式はCH4で、熱量で比較すると二酸化炭素(CO2)の排出が一番少ない化石燃料で、環境対策の観点からも最も優れた化石燃料です。世界的に見ると、シェールガスやコールベッドメタンなど非在来型の天然ガスが利用できるようになり、ガス全体の賦存量(算出しうる潜在的な資源量)が非常に増えています。最近のレポートでは、非在来型を含めて、天然ガスの可採年数は250年と推測されると報告されました。これまで、ざっくり言って、石油の可採年数が30年、天然ガスが60年、石炭が180年といわれていましたが、天然ガスの埋蔵量がそれだけあれば、人類のこれからのエネルギーに対して、ある程度時間が稼げます。現在、LNG(液化天然ガス)の値段が上がっていますが、中長期的に見れば安定した資源として確保できると思います。

    ――天然ガス価格は、石油のように高騰しないのでしょうか。

    池島:これはなんとも言えません。少なくとも最近のIEA(国際エネルギー機関)のレポートでは、中長期的には確実に下がってくるという数字が出ています。ただ、世界のエネルギー需給関係のなかでは下がると思いますが、そのベネフィットを日本が享受できるかは別問題です。私ども、それぞれのエネルギー会社も努力しなければなりませんが、日本の国策としてどうするかということが重要です。

     例えば、同じ天然ガスでも、世界では大部分がパイプラインで輸送されています。LNG利用は主流ではなく全体の約3割にとどまります。日本は、国内から産出されるガスが1~2%で、それ以外はLNGに依存し、他国ともパイプラインがつながっていません。このような状況である限り、調達交渉が厳しいのは事実です。こうした事情を勘案し、国がエネルギーの骨格として資源確保をどう位置付けるかは重要な議論です。もちろんガス業界としての努力も必要で、産出されたガスを買ってくるだけではなく、できるだけ資源開発から参加することで、自分たちのLNGを確保し、価格を引き下げる努力をしています。

    ――天然ガスを安定的に供給するために、国としても社会インフラの整備に努力してほしいということですね。

    池島:ガス業界としての自助努力も必要ですが、国内のインフラ整備、海外とのネットワークなども含めて考えていく必要があると思います。いつまでも「アジア・プレミアム」「ジャパン・プレミアム」と言われる割高な価格でしか交渉できないようではいけない。他に代替措置がなければ、必ずビジネスはそうなります。地勢的に、日本は仕方ない面もありますが、そこを解決するような方法があるのではないかと考えます。

     例えば欧州は、多様な天然ガスソースを確保しています。1970年代に、ブラント首相(旧西ドイツ)の英断でロシアからの天然ガスの導入を開始する一方で、トルコ、バルカン半島からのルートや、モロッコ、チュニジア、アルジェリアというアフリカからのパイプラインも整備するというように、多重系の天然ガスパイプラインネットワークを構築しました。そのうえで、さらにそのネットワークにLNG基地を組み込んだエネルギー・インフラをつくりあげ、セキュリティーを確保しています。このように、長い時間をかけ、大きな構想のなかで、エネルギーがどうあるべきかを考えることが必要だと思います。東アジアは、政治的にはきわめて難しい状況にあると思います。北朝鮮、中国、ロシアなどの隣国との関係など、配慮すべきことも多いですが、そういうことを乗り越えて、真剣に、日本のエネルギーセキュリティを考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

    池島 賢治(いけじま けんじ)
    1981年に京都大学大学院工学研究科修士課程(土木工学専攻)修了後、同年大阪ガス入社。都市圏営業部マネジャーを経て、2003年エネルギー事業部計画部長就任。兵庫エネルギー営業部長、エンジニアリング部長を歴任し、2010年6月、執行役員就任とともに現職。

  • 2011/11/21

    震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[前編]
    発電と熱利用で安定的なエネルギー需給に貢献へ

    東日本大震災では、地震と津波によりガスや水道、電気の供給が途絶え、大きな影響が出た。この未曾有の震災にガス業界はどのように対応したのか、また、今後のエネルギー政策に業界としてどのように取り組んでいくのかについて、日本ガス協会常務理事の池島賢治氏に話を聞いた。

    ――3月11日の東日本大震災により、私たちはエネルギーインフラがいかに大切かを痛感しました。震災直後、LNG(液化天然ガス)基地やパイプラインはどのような被害状況でしたか。

    池島:今回の震災では、約46万件の都市ガス供給が停止しました。まず、パイプラインに対する被害ですが、お客様に近いところを通るガス管で一部耐震化が進んでいない低圧管に被害があったものの、中圧、高圧という基幹導管については基本的に被害がなかったという点では、これまでの震災と同じ状況でした。一方、これまでの地震と大きく違ったことは、製造設備が被害を蒙ったことです。特に仙台市のLNG基地をはじめ複数の製造設備が津波で被害を受け、ガスの供給源に支障が生じました。

    ――被災地での復旧はどのような状況で行われたのですか。

    池島:今回の震災では、製造所が被害を受け、ガスの供給源を失いました。これまでの地震ではガスの供給源は確保されておりましたので、壊れている導管部分を直しながら順次ガスを復旧させていけばよかったのですが、今回は、まずガスを確保しなくてはならず、そのために少し時間がかかりました。その後の復旧は、これまでの震災の経験が生きて順調に進み、また、設備の耐震化も相当進んでおりましたので、1カ月あまりの期間で、比較的早く復旧できたと思います。

    ――ガスの供給源はどのように確保したのですか。

    池島:LNG基地が津波で壊滅的被害を受けた仙台市に対しては、新潟県にあるLNG基地から仙台市に通じている高圧導管を使って天然ガスを供給する方法を取りました。また、サテライト製造所が被害を受けたところには臨時供給設備を持ち込み、LNGタンクローリーやLPGボンベなどによって、ガスの供給を確保しました。都市ガス設備は、非常に大きな揺れを感知し、ガス管に損傷の恐れがある場合、自動的にガスの供給を停止します。そのような地域が岩手県から福島県、さらには茨城県や千葉県までありました。このような広域にわたって供給停止エリアが出たことは、我々にとって初めての経験でしたが、広域の被害に対して全国の都市ガス事業者が支援する形で復旧にあたりました。

    Ikejima

    池島 賢治(いけじま けんじ)
    1981年に京都大学大学院工学研究科修士課程(土木工学専攻)修了後、同年大阪ガス入社。都市圏営業部マネジャーを経て、2003年エネルギー事業部計画部長就任。兵庫エネルギー営業部長、エンジニアリング部長を歴任し、2010年6月、執行役員就任とともに現職。

  • 2011/11/17

    日本経済が再び世界をリードするために[後編]
    電力の安定供給確保が日本経済の浮沈を決めることになる

     電力不足の懸念が続くなか日本経済が東日本大震災をどう乗り越えていくのか――。先が見えない不透明な状況に不安を抱く人は少なくない。最大の課題となっている、原子力政策を含めた環境・エネルギー問題への対処法を日本経済団体連合会の井手明彦資源・エネルギー対策委員長(三菱マテリアル会長)に聞いた。

    ――今年の夏は、電力不足の懸念から厳しい節電目標が設定されましたが、多くの企業が目標をクリアしたようですね。

    井手:この夏の対応は、産業界として多くの犠牲を払いながら実施したものです。一部報道や有識者、政治家は「やればできる」と安易にとらえていますが、簡単な状況ではなかったことを、まず申し上げたい。「今年の夏さえ乗り切ることができれば」ということで、いくつもの犠牲を払ってようやく達成できたのです。今年実現できた15%程度の節電なら簡単にできると思い、それを前提にされたのでは、今後、非常に困ることになります。

    ――厳しい電力状況が続くようだと、産業空洞化が進むのではないかという指摘もあります。

    井手:未曾有の大震災による被害を受け、原発事故による大きな犠牲を払っている人たちを思えば、多少の犠牲は覚悟して、日本国民としてやり遂げなければならなかったと思います。しかし、今冬以降の電力需給については、政策責任者の意思による部分が大きい。何としても、経済活動への影響が最小限となるよう対策いだきたい。特に問題となるのは、今後の見通しが立たないことです。この状況が続けば、ご指摘された空洞化が現実のものとならざるを得ないでしょう。

    ――状況は、かなり厳しいということですか。

    井手:我々の属している非鉄金属業界においても、新規の投資を考える場合に先の見通しが立たないのであれば、電力供給の不安がない国での投資を考えるのが自然です。さらに当社のように素材や部品を製造しているメーカーは、自社の投資判断だけではなく、お客様がどこに立地するのかにも左右されます。自動車メーカーなどの組立産業が海外での生産を選んだ場合には、必然的に、当社のような素材・部品メーカーも海外に出て行くことになります。

     雪崩をうつように空洞化が進行する懸念が非常に高いのです。政府は一刻も早く、3年~5年の電力供給対策の工程表、ロードマップを示すべきだと考えます。

    井手明彦(いであきひこ)氏。1965年に三菱金属鉱業(現在の三菱マテリアル)入社。常務、副社長を経て、2004年6月に社長就任。2010年6月から現職。社団法人セメント協会会長、日本鉱業協会会長を歴任し、2010年から日本経済団体連合会評議会副議長を務める

  • 2011/11/09

    日本経済が再び世界をリードするために[前編]
    ~エネルギーの安定供給と経済性の視点を外さないでほしい~

    電力不足の懸念が続くなか日本経済が東日本大震災をどう乗り越えていくのか――。先が見えない不透明な状況に不安を抱く人は少なくない。最大の課題となっている、原子力政策を含めた環境・エネルギー問題への対処法を日本経済団体連合会の井手明彦資源・エネルギー対策委員長(三菱マテリアル会長)に聞いた。

    ――日本経団連は今年7月、エネルギー政策に関する第1次提言を発表しました。この基本的な考え方を教えてください。

    井手明彦氏(以下敬称略):東京電力の福島第一原子力発電所事故の影響の大きさを考えると、旧来のエネルギー基本計画に盛り込まれた原子力計画は当然見直しを余儀なくされるでしょう。これによる供給力の不足は、化石燃料、再生可能エネルギー、省エネルギーによって補わなければなりません。

    一方、準国産エネルギーである原子力の果たす役割は引き続き重要で、着実に推進していく必要があると考えています。もちろん、安全性を確保し、地元住民をはじめ国民の理解を十分に得ることが大前提です。そのためにも、福島の事故原因の究明と安全対策の実施が、早期に、そして徹底的に行われることを期待しています。

    ――中長期的視野に立つと、エネルギーの新たなベストミックスの検討が必要であると提言されています。具体的にはどういうことでしょうか。

    井手:今後、エネルギーのベストミックスを検討する際には、各エネルギーの長所と短所、技術革新の動向などを、現実的、客観的に分析すべきです。そのうえで、安定供給や経済性など国内で実現すべき目標が何かを考え、開かれた国民的な議論を行う。実現性やコスト負担のあり方などについて十分に検証することなく、政治的な数値目標を安易に掲げるべきではありません。政府が「エネルギー・環境会議」のなかに設置した「コスト等検証委員会」には、国民的な議論のベースとなるデータの提供を期待したいと思います。

     ただし、エネルギーのベストミックスについて議論する際には、2020~30年を意識した中長期的な視点に立ち、エネルギーの「安定供給」「経済性」「環境配慮」のいわゆる3E間の優先順位を、大震災後の状況を踏まえて見直すべきと考えます。近年、わが国のエネルギー政策は地球温暖化防止に大きく軸足を置いてきました。しかし、国民生活を向上させつつ、産業の空洞化を防ぎながら安定的な成長を続けるためには、もちろん安全性が大前提ですが、これまでよりも、国内におけるエネルギーの安定供給や経済性に力点を置いた政策が求められるのではないでしょうか。

    井手明彦(いであきひこ)氏。1965年に三菱金属鉱業(現在の三菱マテリアル)入社。常務、副社長を経て、2004年6月に社長就任。2010年6月から現職。社団法人セメント協会会長、日本鉱業協会会長を歴任し、2010年から日本経済団体連合会評議会副議長を務める

  • 2011/11/08

    米国グリーン・ニューディール政策破たんの実相

     2009年、米国はオバマ大統領が掲げた「グリーン・ニューディール政策」に沸いた。その後、各国が環境政策と雇用対策を融合させるコンセプトとしてこれを取り上げ、成長戦略として期待した。

     しかし、2年経った今、米国の現状はどうか。「グリーン成長」は実現しないまま、厳しい雇用情勢が継続しており、オバマ大統領の支持率も低下している。追い打ちをかけるように、重点支援した太陽電池メーカーが破たん。支援が妥当・適切だったかが政治問題に浮上している。

     さらに、再生可能エネルギー普及の支えとなってきた債務保証制度が9月末で終了、12年末には風力発電に対する発電税控除の優遇措置も期限を迎えるなど、諸制度が尻すぼみだ。優遇制度が縮小する一方で、経済原理を持ち込む動きも出てきた。例えば、今年前半のエネルギー法案に関する議論では、再生可能エネルギー支援にリバース・オークション(費用対効果の高いものから優先的に採用)が提案された。いつの時代も国家の政策目標と市場原理の狭間で、いわゆる「グリーン産業」は、大きなビジネスリスクを抱え込んでいるのである。

     米国3大電力会社の一つでシカゴに拠点を置くエクセロン社のジョン・ロウCEO(最高経営責任者)へのインタビューを基に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(10月22日-23日ウィークエンド版)が、これに関連した記事を掲載している。(http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204618704576641351747987560.html)

  • 2011/11/01

    東日本大震災が浮かび上がらせた電力インフラの弱点

     東日本大震災は太平洋岸の地域を破壊して重大な被害をもたらし、半年以上たった今でも時折、強い余震が続いている。仙台市生まれの筆者は変わり果てた故郷の姿にしばらく言葉が出なかった。亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、被災者の皆さんが1日も早く普通の生活に戻られることをお祈りする。

     製紙業界も、太平洋岸に位置するすべての工場が被害を受けた。9月時点で、岩沼市(宮城県)以南の工場は復旧し生産再開を果たしているが、仙台以北は仙台湾岸を中心に津波による被害がきわめて大きく、被災者の捜索から始まり、瓦礫の片付けや機器の清掃復旧作業が延々と続き、立ち上がりに時間がかかっている。

     各社の発表によれば、三菱製紙八戸工場(青森県八戸市)は5月下旬に抄紙機が1台復旧したものの、完全復旧は9月末までずれ込んだ。また、最大の被害を受けた日本製紙石巻工場(宮城県石巻市)は自家発電設備の一部が8月にようやく復旧、印刷用紙マシンも1台が9月16日に稼働し始め、年内には主力も復旧する予定としている。また、仙台市内にあった段ボール工場、レンゴーの仙台工場は県北への移転を決定。王子チヨダコンテナー仙台工場(宮城県多賀城市)の操業再開は来年2月になる。

     一方、東京電力福島第一原子力発電所から北へ25kmに位置する丸三製紙(福島県南相馬市)は津波の被害こそ軽微だったが、緊急時避難準備地域に指定されて立ち入りが制限されたため、操業を停止していた。その後、環境放射線量率が低いことから、万全の放射線防護対策を施したうえで、7月上旬、3カ月ぶりに操業を再開している。

     こうした個々の生産設備の問題以上に、製紙業界としても大きな影響を受けたのが電力問題である。そこで、日本の電力網の実態を整理したうえで、今後の電力事情改善のあり方について私見を述べたい。本来は電力業界の専門家あるいは経済産業省が話題にする話であり、ほかの業界の人間が口を差し挟むのはお門違いかもしれないが、自分なりに調べて整理した内容を投稿する。