脱炭素の切り札、アルミの国内循環へ

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(「産業環境管理協会「環境管理」|2026年6月号|vol.62 NO.6」より転載)

再生アルミニウムは新地金に対しCO2排出量が3%程度と低い一方で、アルミニウムスクラップの輸出が顕著である。サーキュラーパートナーズのビジョン・ロードマップ検討WGにはアルミニウムに関する領域別WGがあり、日本アルミニウム協会では広範囲なステークホルダと協力し、環境及び資源戦略の観点から国内循環を促進するため、制度、経済インセティブ、技術開発、広報について検討を進めている。スクラップに含まれる不純物を低減する技術を開発することにより、水平リサイクルやアップグレードリサイクルの拡大を目指している。産業界の自律的努力に留まらず、資源安保政策の確立を目指す。

はじめに

アルミニウムは、輸送や建設、半導体関連やリチウムイオン電池、電線、などの電気・電子分野、アルミ缶に代表される飲食料品分野、さらには航空宇宙分野など多様な産業分野において不可欠な基盤金属であり、日本経済全体の約4割に及ぶ経済活動に深く関与している。その重要性は、単に工業素材としての役割にとどまらず、脱炭素社会の実現に向けた環境負荷低減の観点からも極めて高い。特に、再生アルミニウム(再生地金:リサイクルアルミ原材料)は、1トン当たりのCO2排出量が0.3トンと新地金の12~13トンに比べ極めて低く、低炭素材料としての価値が認められている。こうした環境的メリットを最大限に活かすためには、アルミニウムスクラップの国内循環を加速し、海外に輸出されているスクラップを国内で再生利用するためのシステム構築が不可欠である。この取り組みは、アルミ新地金を100%海外からの輸入に依存している我が国において、単なるリサイクルの促進にとどまらず、日本の資源安全保障と持続可能な産業基盤の確立という、国家レベルの課題に直結している。

1.資源循環への取り組み

現在、日本のアルミニウムスクラップは、輸出が顕著に進んでおり、3年連続で40万トンを超え2015年に比べ約3倍の水準となっている(図1)。その理由として、輸出相手国において、二次合金の生産能力に対し、原料(スクラップ)が不足していること、アルミスクラップの輸入関税を0%に設定、2025年3月には再生アルミニウム生産量1,500万トン以上という目標を掲げて再生アルミニウム資源の回収利用を推進していることなどがある。

図1 アルミスクラップの輸出量と新地金輸入量対比(率)の推移

海外では複数の国々が、リサイクルアルミの購入に対して補助金を提供するなど、自国への輸入を促進する政策を展開している一方、日本ではそのようなインセンティブが不十分な状況にある。この国際的な不均衡は、国内のリサイクル率の低下を招き、新地金への依存が高まり、環境負荷の増大にもつながっている。そのため、アルミニウムの国内循環を強化するためには、まず「スクラップ輸出実態調査」を徹底し、その原因を特定することが不可欠であると考えている。これには、HSコード別に消費税還付額を把握し、還付制度による影響を明らかにする必要がある。また、不適正ヤードや偽装輸出に対する管理を強化し、許可制への移行や港湾使用料の補助制度などの見直しを進めることが、実効性のある対策と考える。全ての輸出を問題とするのではなく、資源の少ない日本においては、アルミスクラップはリサイクル資源であると認識し、戦略物資として国内で再生利用を推進する仕組みや制度、規制などが必要と考える。

また、アルミニウムは、他元素(添加元素)を微量添加することによりその性能を強化することができる。しかしながら、その性質上、添加した元素を分離取り出しすることが困難であるため、展伸材から鋳物材へ用途を変更して使用されているアルミスクラップも多くある。そこで展伸材のスクラップを展伸材に使用する水平リサイクルのための技術開発も業界団結して進めている。

2.仕組み面の取り組み:サーキュラーパートナーズでの活動状況

こうした課題に対応するため、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、産官学の連携を促進するために、経済産業省により2023年12月に設立された「サーキュラーパートナーズ」のビジョン・ロードマップ検討WGの中にアルミニウムWGを設置し、2025年5月より産官学連携による取り組みを進めてきた(図2)。アルミニウムWG(以下当WG)は、アルミ圧延・押出・二次合金メーカー(UACJ、神戸製鋼、日本軽金属、三協立山、YKKAP、LIXIL、不二サッシ、アサヒセイレン、大紀アルミニウム工業所)と関連する業界団体(日本アルミニウム協会、日本サッシ協会、日本アルミニウム合金協会)に加え、リサイクルの関連団体(非鉄金属リサイクル全国連合会、軽金属同友会)と有識者(東京大学、早稲田大学)をメンバーとし、課題の抽出、施策の立案、ロードマップの策定など、取り組みの具体化を進めてきた。

当WGのロードマップ策定では、「Zチーム」「Aチーム」「Bチーム」「Cチーム」の体制で、課題の集約と解決策の検討を行った。

図2 サーキュラーパートナーズのホームページを参考に作成

Zチームでは、基礎データとなる「アルミスクラップの循環量の整理」をテーマとし、経済産業省の生産動態統計データなど統計値を中心に調査、分析を行い、国内のアルミニウムのマテリアルフローの物量整理を推進した。

Aチームでは、「輸出されているアルミスクラップを国内に向けるための施策」をテーマとし、輸出スクラップ現物の確認(形状や状態などの把握)、輸出相手国の行政支援制度の調査、不適正ヤード対応などが課題として挙げられており、国際間の貿易不均衡を公平・公正な条件に是正することが国内循環につながると考え、検討を進めた。

Bチームでは、「アルミスクラップの国内供給量の拡大施策」をテーマに、スクラップの需要側(二次合金メーカー、圧延・押出メーカー)と供給側(スクラップ業者やリサイクル業者など)の品質規格の合わせ込み、集荷・集積の拠点構築、選別拠点の構築、再生コストや能力の把握などの整理を進め、拠点の誘致や技術開発、設備投資支援など、行政にお願いしたい支援策の検討を進めた。

Cチームでは、「アルミスクラップの国内受入(利用)量の拡大施策」をテーマとして環境価値を消費市場に認知されることによるリサイクル製品の利用拡大を目的とし、定義や基準の明確化、情報流通プラットフォームの構築に必要な要件整備、国や行政、需要業界(川下産業界)への環境PR活動、インセンティブ制度(補助金、優先調達、税制優遇など)や規制などの行政支援策の要望等の検討等の検討を進めた。

これらは、アルミ循環のためのサプライチェーン上にある課題と取り組みであり、A、B、Cのどこかで止まると循環が停滞すると考えており、3チーム連携による取り組みが重要となり、さらには需要側(自動車、建設、飲料など)の産業界との連携や他の素材産業との連携が循環型社会の構築に不可欠と考えている。

なお、日本アルミニウム協会では、定義や基準の明確化が課題と認識し、LCA(ライフサイクルアセスメント)※1やCFP(炭素フットプリント)の算定ガイドライン※2、グリーンとリサイクルに関する用語の解説※3、リサイクル率計算方法の事例※3を公表している。

※1
わが国の輸入アルミニウム新地金のLCIデータの概要(2025年)
※2
アルミニウム製品のカーボンフットプリントガイドライン(2025年)
※3
グリーンとリサイクルに関する用語、リサイクル率計算方法例について(2025年)

3.技術開発面での取り組み

日本のアルミ展伸材のスクラップは、主に鋳物・ダイカスト用として利用されており、いわゆるカスケードリサイクルがなされている(図3)。これはスクラップを回収する過程において不純物が混入し、再生地金中の不純物元素含有率が高くなる事が原因として挙げられる。こうした事情により展伸材から展伸材へのいわゆる水平リサイクルは、飲料缶等において限定的に実施されているのみで、大部分の展伸材は環境負荷の大きい新地金から製造されている。また、スクラップの多くはMg、Mn、Siなどを添加した合金であることから、アルミニウムのリサイクルは、こうした重要な金属の循環利用につながり、経済安全保障に大きな役割を果たすことができると考える。

図3 アルミ展伸材のリサイクル推進における資源循環図
※因中のグリーン1お展伸材のフロー、プルーは鋳造製品のフローを示す
「水平」は「展伸材から展伸材」、「カスケード」は「展伸材から鋳造材」へのリサイクルを示す
「カスケード」は「用途変更」や「有効利用」による'カイクルを示す

こうしたことから水平リサイクルを拡大するためのスクラップの前処理や高度選別などの技術開発への取り組みや「不純物元素の低減技術」「不純物元素の無害化技術」に関する取り組みにより、不純物元素が高いスクラップから展伸材へ再生可能とするいわゆるアップグレードリサイクルを目指すプロジェクトが実施されている。2019年度~2021年度実施のNEDO先導研究プログラム(新技術先導研究プログラム)、2021年度~2025年度経済産業省・NEDOアルミニウム素材高度資源循環システム構築事業「資源循環型社会構築に向けたアルミニウム資源のアップグレードリサイクル技術開発」である。これらプロジェクトは(図41))に示すオールジャパン研究体制のもと、分別結晶法による不純物元素の低減技術、縦型双ロール鋳造や加工熱処理といった高度加工技術による不純物元素の無害化技術に加え、高精度性形成予測技術、LCA・戦略策定支援も加えて、スクラップが展伸材へ再生されるループの確立を目指す(図51))。2026年4月現在、ラボレベルでの検討に目途がつき、実証に向けてさらなる研究を進めている。

図4 経済産業省・NEDO アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業 体制図
(出典:NEDO「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」中間評価報告書)

図5 スクラップが展伸材へ再生されるループ
(出典:NEDO「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」中間評価報告書)

また、図3にアップグレードリサイクルに加え、ハイアップグレードリサイクルで示されているものは、展伸材スクラップだけでなく、鋳物スクラップや埋め立て処理レベルの低品位のスクラップからでも展伸材相当以上の純度に戻す取り組みであり、現在NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/低温型電解法によるアルミニウムの高純度化プロセスの研究開発にて検討が始まっている(図6)。これは150℃以下の低温電解液中で固体スクラップから固体アルミニウムを精製するもので、従来のホール・エルー法と比較して消費電力を1/4以下にできる事がラボレベルでは確認されており、これもアルミ資源の循環ループ確立への寄与が期待できるものである。

図6 低温型電解法によるアルミニウムの高純度化プロセス
(出典:NEDO 先導研究プログラム 2025年度、2025年10月、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)

こうした多角的な取り組みは、単なる産業界の自律的な努力ではなく、国・行政との連携を前提とした「政策立案化」を目指している。当協会は、国に対してアルミスクラップが環境配慮型の重要な資源であることを訴えるとともに、「グリーンアルミ製品の補助金制度」「グリーンアルミの優先調達制度」「Scope3削減への税制優遇」などを支援要請しており、行政の支援を受けることで、市場のインセンティブを強化する体制を構築しようとした活動である。また、リサイクル法の強化や、必要設備投資に対する補助制度の制度化、高品位スクラップの購入補助など、法制度の整備も検討を要することを整理した。これらの施策は、単にリサイクルを促すだけでなく、国内の循環型産業構造を確立し、資源の自立を図るという、経済安保的な視点も含んでいる。

まとめ

アルミニウムの国内資源循環は、環境負荷の低減、資源の有効活用、産業競争力の維持という三つの価値を同時に実現する戦略である。このためには、業界全体が一丸となって、技術的課題の解決と制度確立(支援)の両輪を回すことが不可欠である。日本は、過去に多くの資源を輸入に依存してきたが、今後は「国内で生まれた資源を、国内で再利用する」循環型の産業構造を確立することで、自国の資源を守り、持続可能な未来を築くことができる。当協会の取り組みは、その第一歩として、まさに日本の産業と環境の未来を切り開く重要な鍵となっている。

参考文献

1)
NEDO「アルミニウム素材高度資源循環システム構築事業」中間評価報告書
2)
NEDO先導研究プログラム2025年度版