LCAによる資源循環の評価方法


東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 准教授

印刷用ページ

(「環境管理」より転載:2024年2月号 vol.60 No.2)

 循環経済や資源循環に対して、温室効果ガスを含む環境負荷の削減に対する貢献が期待されている。しかし、リサイクルなどの資源循環によって常に環境負荷が削減されるとは限らず、リサイクルは本当に環境負荷を削減するのか、どういったリサイクルであれば環境負荷を削減できるのか、客観的かつ定量的に示す必要がある。本稿では、ライフサイクルアセスメント(LCA)による資源循環の評価方法として、カットオフ法および負荷回避法について解説する。リサイクルの2つの側面、すなわち製品の使用後にリサイクルすることと、製品にリサイクル原料を利用することに着目し、それぞれの評価方法について述べる。

はじめに

 2015年に公表された欧州のサーキュラーエコノミー(循環経済)行動計画1)を契機として、世界的にリサイクルを含む資源循環の重要性が再認識されることになった。2020年に公表された新たな行動計画2)は、2050年までに温室効果ガスの正味(ネット)排出量をゼロにすることを目指す「欧州グリーンディール」3)の主要な構成要素とされている。このことからも、循環経済や資源循環に対して温室効果ガスを含む環境負荷の削減に対する貢献が期待されていることが分かる。我が国でも、例えば2022年に施行されたプラスチック資源循環法4)の基本的方針に「2050年カーボンニュートラルを実現するために必要不可欠な循環経済への移行を戦略的に進める」と明記されている。そのため、少なくともプラスチックについては、資源循環によって温室効果ガスの排出量が削減されることが前提とされているようにも読める。
 しかし、リサイクルなどの資源循環によって常に環境負荷が削減されるかどうかは、必ずしも自明ではない。リサイクルは本当に環境負荷を削減するのか、どういったリサイクルであれば環境負荷を削減できるのか、客観的かつ定量的に示す必要がある。ライフサイクルアセスメント(LCA)には、そのための評価方法としての役割も期待されているが、いわゆるリニア(線形)な製品ライフサイクルの評価と比べ、資源循環を含む場合の評価方法は複雑である。さらに、リサイクルには2つの側面があることも考慮する必要がある。すなわち、廃棄物の処理方法のオプションとして、そして製品の原料のオプション(リサイクル原料)としての側面である。いずれに着目するかによって、LCAの評価方法も異なる。
 これまで筆者は、リサイクルなどの資源循環のLCAによる評価方法について、いくつかの論文や書籍で解説してきた5-7)。本稿では、これらをもとに、より直感的に理解しやすいように資源循環の評価方法を解説する。特に、上記のリサイクルの2つの側面を考慮して、製品の使用後にリサイクルすることと、製品にリサイクル原料を利用すること、それぞれの評価方法について述べる。

1.製品の使用後にリサイクルすることの評価

 まず、LCAの具体的な評価方法について解説する前に、なぜ製品の使用後にリサイクルすることで環境負荷が削減されるのか考える。環境負荷の削減の観点から、リサイクルを含む資源循環の効果には大きく以下の2つがある。

① ごみにならないこと
② 天然資源が節約されること

 これらのうち①は、より正確に言えば、ごみを焼却処理や埋立処分しなくて済む (処理処分量が減少する)ことを指している。ただし、一般に埋立処分はリサイクルのプロセスと比べて必ずしもエネルギー使用が多いわけではないため、金属や(生分解性のない)プラスチックのように埋立処分場で安定な素材であれば、①だけでは埋立処分に対するリサイクルの優位性を主張することは難しい場合がある。金属の場合、仮に焼却処理に混入しても燃焼しないためCO2などの温室効果ガスの排出はないことから、焼却処理に対する優位性についても同様である。
 そのため、②についても考慮して、言わば①と②の合わせ技によってリサイクルの優位性を示す場合がある。②によって環境負荷が削減される理由は、段階的に説明すると以下のようになる。

  • リサイクル原料を利用することで、製品の原料を生産するために 新たに天然資源を採掘しなくて済む。
  • リサイクル原料を利用した方が、天然資源から製品の原料を生産するよりも環境負荷が少ない(こともある)。

 リサイクルを含む製品ライフサイクルの評価に用いられるLCAの主な方法には、「カットオフ法」と「負荷回避法」がある(これらには様々な別称や類似の手法があるが、その整理については中谷7)を参照されたい)。大雑把に言えば、リサイクルによる環境負荷の削減効果のうち、カットオフ法では①だけが考慮され、負荷回避法では①と②の両方が考慮される。以上を念頭に、図1のシステム境界(評価範囲)と図2(a)の評価結果のイメージの図を用いて、それぞれの評価方法を解説する(図1下段のエネルギー回収については後述する)。

図1 製品の使用後の処理方法による比較評価におけるシステム境界
注) カットオフ法によるリサイクルの評価では、製品の使用後の再生プロセスまでシステム境界(評価範囲)に含める場合もある。逆に、エネルギー回収の評価で、製品の使用後の燃焼プロセスをシステム境界に含めない場合もある。

 まず、図1左列の中段に示したように、カットオフ法においてリサイクルは廃棄物の回収プロセスをシステム境界の「終点」として、それ以降のプロセスはカットオフされることが多い。そのため、処理処分(単純焼却や直接埋立を想定)と比べると、図2(a) に示したように使用後の処理に伴う環境負荷が削減される。ただし、廃棄物の回収後については、例えば事前選別(しばしば「リサイクル準備段階」と呼ばれる)まではシステム境界(評価範囲)に含める場合もあり、必ずしも統一的な基準があるわけではない。カットオフ法は、後述する負荷回避法と比較するとシンプルな評価方法であり、特に主たる評価対象ではない副産物などに対して適用しやすいが、どのプロセスまでシステム境界に含めるかの設定に恣意性が残され、それによって処理処分に対するリサイクルの優位性が変わる可能性があることに注意が必要である。
 次に、図1右列に示した負荷回避法では、リサイクル原料が天然資源から生産される新規原料を代替する効果もシステム境界に含まれる。図2(a)のように、リサイクルについて再生プロセスの環境負荷まで考慮される一方で、新規原料のための資源採掘から生産までの環境負荷が回避されるものと考える。負荷回避法は、カットオフ法では考慮されない効果も評価できる方法として、世界的にもリサイクルの評価に広く用いられている。

図2 カットオフ法および負荷回避法による比較評価のイメージ
(a)使用後の処理方法の比較評価 (b)原料の比較評価

注)破線の四角は、新規原料や新規燃料の代替によって回避された環境負荷が控除されることを表す。

 リサイクルの中には再生プロセスのエネルギー消費が大きく、それに伴う環境負荷が処理処分と同等または超えてしまう場合もある。そのようなリサイクルの効果を検証する場合には、特に負荷回避法が有用である。前述のように、カットオフ法では再生プロセスをシステム境界に含めるかどうかの判断が評価結果に大きく影響を及ぼす。負荷回避法では、再生プロセスの環境負荷から、代替される新規原料の生産に伴う環境負荷が控除されることから、リサイクルによって社会全体として環境負荷が削減されるかどうかを示すことができる。
 ただし、負荷回避法による評価も恣意性と無縁というわけではない。特に、新規原料と品質に明確な差がある場合、リサイクル原料が同量の新規原料を代替すると仮定することは、環境負荷の削減効果を過大に評価していると指摘されることがある。また、例えばプラスチックのリサイクル原料が木材の代替として用いられることがあるように、異なる素材間での代替もある。代替される新規原料の素材や量の特定は、必ずしも自明ではない。それに対して、「代替率」という係数を用いて控除する環境負荷を割り引く考え方も提案されているものの、あらゆる素材に対して適用できる決定的な方法は開発されていない。
 以上のように、カットオフ法にも負荷回避法にもシステム境界の設定に関わる恣意性は残されている。双方の問題を認識した上で、両者による評価結果を併記することが、評価の透明性を確保するためには現実的であると考えられる。

2.製品の使用後にエネルギー回収することの評価

 次に、エネルギー回収の評価方法について解説する。従前、エネルギー回収は「サーマルリサイクル」と呼ばれることもあり、国内ではリサイクルに準ずるものとして扱われてきた。一方、欧州では公式統計においてもリサイクルとエネルギー回収は明確に区別されている。特にプラスチックなど化石資源由来の素材の場合、その燃焼によってCO2が排出されるため、エネルギー回収は温室効果ガス排出量の削減には有効ではなく、その観点ではリサイクルに劣るものと認識されることがある。
 エネルギー回収の評価にカットオフ法を適用すると、システム境界は図1左列の下段のようになる。製品の使用後(廃棄物)の燃焼プロセスまで含む場合は、図2(a)に示したように環境負荷の評価結果は単純焼却と同等になり、上記の認識と合致した評価になる。一方で、エネルギー回収もリサイクルと同様に回収プロセスをシステム境界の終点とすると、評価結果はリサイクルと同等になる。ただし、高効率のエネルギー回収に対して前者のシステム境界を設定して単純焼却と同等に評価することも、低効率のエネルギー回収に対して後者のシステム境界を設定してリサイクルと同等に評価することも、いずれも社会全体としての環境負荷の削減と整合的であるとは言えない。どの程度の効率であれば燃焼プロセスを含めるべきか、恣意性を排除した基準を決めることも困難である。そのため、エネルギー回収がカットオフ法によって評価されることは多くない。
 負荷回避法の評価方法は、図1右列に示したように、エネルギー回収についてもリサイクルと同様である。図2(a)のように、製品の使用後の燃焼プロセスで環境負荷が排出されるものの、代替される燃料の採掘から生産、燃焼に伴う環境負荷が控除されることで、正味の排出量は単純焼却よりも小さくなる。このとき、エネルギー回収の効果は、どれだけの新規燃料を代替できるかに依存する。例えば、混合プラスチックについては、高効率に石炭を代替できる固形燃料化やセメント燃料化などのエネルギー回収が、リサイクルよりも環境負荷の削減効果が大きくなることも示されている8)。一方、エネルギー回収の中でも効率の低い焼却発電の場合、削減効果は単純焼却と大きな差がないこともある。
 以上のように、エネルギー回収の評価には、その効率による環境負荷の削減効果の差が考慮される負荷回避法の方が適当である。ただし、リサイクルとエネルギー回収の境界にあるような資源循環(例えば、プラスチックのケミカルリサイクルによって再生された熱分解油の燃料としての利用)もある。こうした場合など、どちらの評価方法を適用するか、カットオフ法の場合に燃焼プロセスをシステム境界に含むかどうか、判断に恣意性が残されることもある。カットオフ法によるリサイクルの評価結果と、負荷回避法によるエネルギー回収の評価結果を比較する場合には、特に慎重な解釈と透明性を持った説明が求められる。

3.製品にリサイクル原料を利用することの評価

 ここまでに述べてきた評価方法は、製品の使用後にリサイクルまたはエネルギー回収することによる環境負荷の削減効果が対象であった。これは、「リサイクル原料の供給側」からの評価と言うことができる。次に、リサイクルの2つの側面のうち、製品にリサイクル原料を利用することによる効果、すなわち「リサイクル原料の需要側」からの評価方法について解説する。
 カットオフ法では、図3左列に示したように、廃棄物の回収後の再生プロセスをシステム境界の始点とすることが多い。この場合、図1左列に示したリサイクル原料の供給側との重複も抜け落ちもなく評価できる。もし、リサイクル原料の供給側で事前選別までシステム境界に含めることを想定するのであれば、リサイクル原料を利用する需要側は、事前選別の次のプロセスを始点とすることでシステム境界の整合性を確保できる。図2(b)に示したように、再生プロセスの環境負荷が新規原料の採掘から生産までのプロセスと比べて大きくなければ、リサイクル原料を利用することの効果は示すことができる。

図3 製品の原料による比較評価におけるシステム境界
注)新規原料でもリサイクル原料でも、カットオフ法による評価では、製品の使用後にリサイクルされた場合の再生プロセスはシステム境界(評価範囲)に含めない。
負荷回避法による評価でも、製品の使用後の再生プロセスはシステム境界に含めないことが多い。

 一方、混合プラスチックのようにリサイクル困難な廃棄物の再生プロセスでは、エネルギー消費や残渣処理のための環境負荷が大きく、カットオフ法では新規原料と比べて削減効果が見られない場合もある。負荷回避法をリサイクル原料の利用の評価に適用する場合、図3右列のように、元の廃棄物がリサイクルされなかったとすると処理処分(またはエネルギー回収)されていたと想定し、それに伴う環境負荷を控除する。図2(b)の評価結果のイメージ図のように、廃棄物の素材(プラスチックが典型)によっては、その処理処分に伴う環境負荷が回避されることの効果の方が大きいこともある。

おわりに

 本稿では、カットオフ法と負荷回避法を中心に、LCAによる資源循環の評価方法について述べた。リサイクルの2つの側面、すなわち製品の使用後のリサイクルと、製品へのリサイクル原料の利用の評価について、それぞれシステム境界と評価結果のイメージの図を用いて解説した。
 近年、LCAの研究や実務においては、リサイクルのために廃棄物を回収した排出者(リサイクル原料の供給側)と、リサイクル原料の利用者(需要側)の間で、それによる社会全体の環境負荷の削減効果を重複も抜け落ちもなく割り当てる方法についても提案されている(それらについても、詳細は中谷7)を参照されたい)。そうした発展的な評価方法の理解のためにも、カットオフ法や負荷回避法の理解は不可欠である。本稿を足掛かりに、LCAによる資源循環の評価についての理解が深まることを期待したい。

謝辞
 本稿は、(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF21S11900)、新エネルギー・産業技術総合開発機構の「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」および「セルロースナノファイバー材料のLife Cycle Assessment(LCA)等評価手法の検討及び評価」の一環としてまとめられた。

【出典】

1)
European Commission, 2015, Closing the loop-An EU action plan for the Circular Economy, Brussels, Belgium
2)
European Commission, 2020, A new Circular Economy Action Plan -For a cleaner and more competitive Europe, Brussels, Belgium
3)
European Commission, 2019, The European Green Deal, Brussels, Belgium
4)
経済産業省, 環境省, 2022, プラスチックに係る資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針
5)
Nakatani J., 2014, Life-cycle inventory analysis of recycling:Mathematical and graphical frameworks, Sustainability 6(9):6158-6169
6)
稲葉敦, 中谷隼, 2023, プラスチックリサイクルの評価事例、廃プラスチックの現在と未来―持続可能な社会におけるプラスチック資源循環―, コロナ社, 東京:297-303
7)
中谷隼, 2023, LCAによるプラスチック資源循環の評価方法の基本と課題, 日本LCA学会誌19(3):106-116
8)
中谷隼, 2022, プラスチック資源循環におけるエネルギー回収の位置付け, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan 29(418):169-174