鉄腕アトム、ドラえもん、エイトマンは原子力で動いていた


環太平洋大学客員教授、元中日・東京新聞記者、経済広報センター常務理事・国内広報部長(産業教育で文部科学大臣賞を受賞)

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鉄腕アトムは放射能をまき散らす?

 「鉄腕アトム」は、終戦からわずか6年後の1951年に雑誌で連載が始まるや、戦後の焼け野原から、輝く未来を連想させる象徴となった。いずれはこのような超人的ロボットが世の中に現れると期待したかどうかはわからないが、アトム、ウランちゃんという名前から少なくとも原子力への期待の高さがうかがわれる。
 作者の手塚治虫氏は、鉄腕アトムに「七つのチカラ」を与えた。60もの言語を話し、1000倍の聴力を持ち、暗い所では、サーチライトの光を放ち、マッハ10のスピードで空を飛ぶジェット噴射ができる足、などである。
 この夢のような鉄腕アトムの原動力が、何と腹部にある原子力エンジンだった。当時は原子力は、明るい未来を生み出すものと信じられていたのである。
 福島県双葉町に掲げられていた看板を見ても、それはわかる。「原子力 明るい未来のエネルギー」と書かれていた。縦2メートル、横16メートルの巨大看板は、双葉町の入り口ともいえる道路に堂々と掲げられていたが、東日本大震災後には、看板は役割を終えたかのように撤去された。そして、原子力は夢物語だったかのように、今は双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」にひっそりと置かれている。
 「鉄腕アトム」の話に戻る。ネットには、震災後にこんな書き込みがあった。

 鉄腕アトムは腹部に原子力エンジンを持っています。そして、手脚にジェット噴射器がありますが、原子力エンジンからのエネルギーによるものなら、放射能はどうなっているのでしょうか? まさかまき散らしていたのでは?

 反原発派から言わせれば、原子力で動く『鉄腕アトム』なんてとんでもない代物で、作者の手塚治虫氏も批判の対象だということになるのでしょうかね?

 国民が放射能に敏感になっている今の感覚で「鉄腕アトム」を見ると、何とも夢のない話になってしまう。

原子力エネルギーで動くドラえもん

 また、世界中で愛されている、「ネコ型ロボット」、ドラえもんの動力も原子力だ。体内の「原子ろ」で、「何を食べても原子力エネルギーになる」とされている。ならば、いつもドラえもんの近くにいる、のび太君は、日々、被曝していたことになる。
 余談だが、ネット情報によると、ドラえもん図鑑から、東日本大震災後に、「原子ろ」「原子力」という文字が削除されたという。

エイトマンとスーパージェッターは

 ちなみに、私が子供の頃に見ていたエイトマンも、当時はまったく気にしていなかったが、検索してみると、原子力で動いていたようだ。それだけ当時は、原子力が夢のある未来のエネルギーだったわけだ。最後に、もうひとつ。スーパージェッターという漫画がある。この漫画も印象に残っているが、この漫画に出てくるクルマ「流星号」は、原子力できなく、こちらは水素エネルギーで動いていた。今で言う、トヨタのミライである。