26年にわたりエネルギー・環境教育を実践


環太平洋大学客員教授、元中日・東京新聞記者、経済広報センター常務理事・国内広報部長(産業教育で文部科学大臣賞を受賞)

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 エネルギー教育に26年間、携わっている。TOSS注1)という民間最大の教員組織と連携し、エネルギー教育だけでなく産業、金融、環境(最近はSDGs)教育注2)にも取り組んでいる。こうした活動などの産業教育などへの貢献が認められ文部科学大臣賞を受賞した。

 エネルギー教育と環境教育は似てはあるが、視点が全く異なるものだと考えている。本稿をお読みになっている方々には既に周知のことかと思うが、エネルギー政策からすれば、安価で安定供給できる電源が好ましいわけだが、一方、環境政策の観点からは二酸化炭素を排出しない電源が評価される。環境の観点からは、化石燃料を使う発電は好ましくないが、エネルギーの観点では、安価であれば好ましいといえる。原子力発電は二酸化炭素を出さないという意味では環境的にも好ましく、エネルギー政策の面からも安定して安価(どういうふうに計算するかで原子力の発電コストは変わってくるが)とされるが、拒否反応を示す人も多い。

 学校教育の現場では、環境に優しい再生可能エネルギーは絶対的に良いもので、二酸化炭素を出すものは絶対的悪。そう思っている先生も少なくない。二酸化炭素排出ゼロを目指すのはもちろんいいことだが、そう簡単なことではない、払うべき代償もあるという事実は知っておいてほしいと思っている。

 お天気任せの太陽光発電、風任せの風力発電は、たしかに環境に優しいが、太陽が出なかったり、風が吹かなかった場合に備え、電力会社はバックアップ電源を用意しなければならず、使わない電気をいつでも用意しておかなければならないのでコストもかかる、といった事実も知られていない。電気料金票には再生可能エネルギーの賦課金が含まれており、それは毎年膨れ上がっているという事実を知らない先生も多い。また、小型の家庭用電源というと窓の下に置けるぐらい小さいのではないかと思っている人もいるようだが、そんなに小さいわけではない。しかし、イメージが先行している。

 欧州と異なり、日本は島国なので送電線が他国とつながっていないなど、日本の電力事情の特殊性もエネルギー教育のセミナーでは取り上げてきた。例え環境に良くても、コストや発電量の問題もある。エネルギーの地産地消、バイオマス発電、二酸化炭素の地中への埋蔵。なんとなく言葉の響きもよく、新しい話題に目が向きがちだが、先生方には、足が地に着いた授業、メリットとデメリットの両論併記のバランスのとれた授業、風評やイメージ、思い込みでなく事実に基づいた授業をお願いしている。

注1)
TOSS公式サイト
https://toss.or.jp/
注2)
GIGA×産業環境・エネルギー教育公式サイト
https://giga-iee-edu.com/