「カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア」の 第42回エネルギーフォーラム賞 「普及啓発賞」の受賞について


国際環境経済研究所主席研究員、元内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」サブ・プログラムディレクター

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 このたび「カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア」(2021年3月、エネルギーフォーラム社)が、第42回エネルギーフォーラム賞普及啓発賞を受賞いたしました。 「エネルギーフォーラム賞」は、(株)エネルギーフォーラムが昭和55年5月、エネルギー論壇の向上に資するため、同社創立25周年の記念事業として創設されたものです。

 実は、この本、「カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア」の第3章「水素エネルギーとアンモニア」は、この国際環境経済研究所のサイトで10回に渡って連載させていただいた「CO2フリー燃料、水素エネルギーキャリアとしてのアンモニアの可能性」をベースに加筆、編集し、本の一章として上梓させていただいたものです。その過程では、連載の中でいただいた皆さんからのご意見やご質問、フィードバックなどを参考にさせていただきました。今回の受賞は、こうした皆さまのご支援の賜物と、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 受賞対象となった「カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア」は、国際環境研究所のサイトにも投稿されている矢田部隆志さん、戸田直樹さんと私と3人の共著本です。この本は発刊直後の一時期、amazonの売れ筋ランキングで1位(エネルギー関連書籍部門)となる等、読者の方々の関心を集めることができました。その背景には、この本の出版が、菅総理の「2050年カーボンニュートラル」宣言のほぼ直後となったという、思いがけないめぐり合わせもあったと思いますが、それ以上に電力技術と化学技術といった異分野のバックグランドを持つ人間が、共同でカーボンニュートラル実現の鍵となる電化の推進と水素エネルギーの導入に関して、先進的な事例を含む具体的な方策と政策提言を記したものであったからではないかと思います。

 実際、今回の「普及啓発賞」の選考に当たっての委員の評価は、「電化や熱利用について、2050年のカーボンニュートラルに向けて先進的な事例が紹介されており、特にアンモニアについては、他に類書もなく、わかりやすく執筆当時としては最新動向も盛り込まれており、普及啓発賞にふさわしい」という、満場一致の評価であったと聞きました。

 本の出版後、特にアンモニアは、政府の「第6次エネルギー基本計画」や「グリーン成長戦略」において、カーボンニュートラル実現の重要な手段として位置付けられただけでなく、今では新聞等で脱炭素エネルギーの文脈で“燃料アンモニア”の文字を目にすることが珍しくなくなりました。これは、アンモニアのCO2フリー燃料、水素エネルギーキャリアとしての可能性を見出し、実用化技術につなげた内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)「エネルギーキャリア」(2014~18年度)で研究成果をあげられた研究者の方々の努力の賜物なのですが、こうした形でその成果を書き物に残せたこと、そして今回は、それに対して「普及啓発賞」という形で評価を受けたことを心から嬉しく思っています。

 最後になりますが、この国際環境経済研究所のこのサイト-環境、エネルギー問題に関するオープンな論壇の場-が、この本のまさにインキュベータになっていただいたことに対して、感謝を申し上げたいと思います。

『カーボンニュートラル実行戦略:電化と水素、アンモニア』
戸田直樹、矢田部隆志、塩沢文朗 著(出版社: エネルギーフォーラム)
ISBN-13:978-4885555176