上流化する公務員という誤解


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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 平均より給与が高い業界は、給与は付加価値額から支払われるのだから、当然だが1人当たりの付加価値額が大きい産業になる。図-5の通り、1人当たり付加価値額が大きい業界は日本では製造業を含め設備産業に多い。設備により生産性をあげることができるからだろう。

図5

 下流化を止めるには、これらの産業の成長が重要だ。製造業を中心とした企業が生産性改善の設備投資を行い、さらに研究開発投資を増やすことにより雇用の増加を図ることだ。日本企業の研究開発投資は最近漸く増加傾向にあるが、デフレ期間中の研究開発投資は表の通り、主要国中最低レベルまで落ち込んでいた。韓国企業に差をつけられたのには理由があるのだ。

表

 装置産業の成長には、原発の再稼働による安価、安定的な電力供給が必要だ。図-6が示す通り装置産業の電力コスト比率は相対的に高い。「アエラ」は面白おかしく、上流化する公務員と記事にするのではなく、その背景にあるものを深く分析する必要があったのではないか。朝日新聞系列の雑誌が、「安価、安定的な電力供給が必要だから原発の再稼働を」との記事は書けないのだろうが。

図6