容量メカニズムに関する制度設計WGでの議論で整理が必要なこと(第3回)

既設電源と新設電源を区別すべきか


Policy study group for electric power industry reform

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 次に、容量メカニズムにおいて、既設電源と新設電源で支払うkW価格が差別される場合を考える。例えば、ベース電源と新設電源には8,000円/kW/年のkW価格が支払われ、経年電源には支払われないとする。この条件下では、電源構成は図3のように、経年電源が新設電源に全て置き換わって均衡する。これは容量メカニズムによって、ベース電源と新設電源の固定費だけが見かけ上引き下げられたことによる。

図3


 他方、それによって得られる電源ミックスの総費用は、表2の通り7,791億円となる。表1の数字(7,694億円)よりも上昇しており、新規参入が進んだものの、社会的に無駄が生じたことになる。これは、既設電源と新設電源で支払うkW価値を差別したことに起因する。つまり、容量メカニズムにおいて、新設、既設でkW価値を差別することは、全体の電源構成の最適解と矛盾する仕組みを作ってしまうことになる。したがって、kWとしての信頼性、確実性などが同等であれば、支払われるkW価値は既設でも新設でも基本的に同じであるべきだ。

表2


 冒頭述べたとおり、「老朽化した既設電源が多く落札する」としても、全体のコストが抑制されるなら問題はない。そうではなくて本当に効率的な電源でも参入できないのであれば、勿論問題であるが、その場合行うべきは、支払うkW価格の面で新設電源を優遇することではなく、電気事業のリスクを緩和するという、容量メカニズム本来の目的に適った制度設計であろう。元来、kW価格は、市場にただ委ねただけでは乱高下しやすい。kW価格が不安定で収入が見通し難ければ、効率的な電源であっても投資にブレーキがかかる。つまり、kW価格を安定化する制度設計が重要と思料する。

<参考文献>
・経済産業省(2014)『第5回制度設計WG 資料4-4事務局提出資料 容量メカニズムについて
・電力改革研究会(2014) 『ミッシングマネー問題と容量メカニズム(第1回) ミッシングマネー問題はなぜ起こるか

執筆:東京電力企画部兼技術統括部 部長 戸田 直樹
※本稿に述べられている見解は、執筆者個人のものであり、執筆者が所属する団体のものではない。

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