第8回 JX日鉱日石エネルギー株式会社 常務執行役員 新エネルギーシステム本部副本部長 山口益弘氏

“エネルギー変換企業”として、多様なエネルギーの供給に貢献


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――震災でLPガスが見直されましたね。

山口:災害に強く、回復力があることがLPガスの大きな特徴のひとつです。しかし、都市ガス事業者のガス導管エリアにLPガスの導管を引いてお客様先に供給することは現行ではできませんので、そういう状況を少しずつ規制改革していくことも必要ではないかと思っています。都市ガスとLPガスをうまく組み合わせていき、市民の命や生活をきちんと守れるように回復力を持たせるような都市を作っていくようにしていければと考えています。

――長い目で見て、そうした新たなインフラの整備も考えていくべきですね。

山口:長い目ではなく・・・、大至急取り組みたいところです。今、北九州などで実証する動きがありますので、都市ガスとLPガスを上手く組み合わせるなど、新たな取り組みをやりたいと思っています。病院へのガス供給が寸断されてしまっては、病院の機能を果たさないことになってしまいます。普段市民の皆さんがガス導管を利用する生活をしているとしても、何かあった時には、「あそこにいけば病院もあるし、大丈夫だ」というようなエリアを地域で持っておくことが必要ではないでしょうか。

――セイフティーゾーンを作っておくわけですね。

山口:具体的に実現させていくとなると、多くの規制改革が必要であり、可及的速やかに実行に移すべきでしょう。地震が多く、地震以外の災害も頻発して起きる日本においては、災害に強いまちづくりは、今人々が本当に望んでいることです。

――災害に強いまちづくりには、エネルギーの選択肢を増やすことは大事ですね。

山口:原発だけ、石油だけ、再生可能エネルギーだけということではなく、様々なエネルギーの選択肢を持つと言うことが、供給の多様化だけではなく、エネルギーセキュリティの面でも非常に重要です。それと並行して、国の電力システム改革専門委員会で議論が行われているように、電力事業についても少しずつ変革していかなければなりません。なぜ改革が必要なのかということを、国民に広くコンセンサスを得ながら進めるべきと思います。

将来の低炭素社会を担うキーワードは、“水素”

――低炭素社会を実現するためには、分散型エネルギーシステムもそうかと思いますが、その他にどのようなビジョンがありますか?

山口:たぶんまだ少し先のことになるかもしれませんが、次世代はおそらく水素エネルギー社会になっていくのではないかと思います。水素の利点は、いろいろな物質から製造できることです。それは供給の多様化に繋がり、エネルギーのセキュリティ向上にも繋がってきます。水素のエネルギーを活用する社会に少しずつシフトしていくことが必要です。
 
 例えば2015年以降に燃料電池自動車(FCV)が世界的に市場導入される見通しですが、FCVは、かつて1台1~2億円とも言われましたが、コストダウンが進んで500万円程度でできるかもしれません。そうなると、ENEOSのガソリンスタンドでも、ガソリン、軽油の他に電気、そして水素を供給するようにしなければいけないと思います。

 2020年、2030年頃になるかもしれませんが、水素エネルギー社会実現のターゲットイヤーになると思います。