第8回 JX日鉱日石エネルギー株式会社 常務執行役員 新エネルギーシステム本部副本部長 山口益弘氏

“エネルギー変換企業”として、多様なエネルギーの供給に貢献


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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燃料電池はエネルギー効率が非常高く、クリーンなエネルギー

――原発の問題が大きいため電気に関する議論は活発ですが、熱の議論が見落とされているという印象です。

山口:その通りですね。コージェネレーションという、なるべく需要に近いところで電気と熱を上手に利用することが、一つ大きなソリューションになってくるのではないかと思います。熱の使い方ひとつでエネルギー効率は相当違いますから。燃料電池ですと、電気と熱のエネルギー総合効率は80数%から90%近くになり、高効率のエネルギー利用ができます。

――ENEOSが推進する創エネ事業の核は、先ほど見学させていただいた創エネハウスの燃料電池システムですか?

山口:そうです。燃料電池「エネファーム」ですと、CO2排出量も従来の火力発電からの電気と比較すると約3割カットになるため、クリーンに効率良くエネルギーを利用できます。燃料電池は、燃料となる水素を都市ガス、LPガス、灯油等から取りだして使う仕組みになっています。化石燃料は有限の資源ですから、大事に使うツール即ちエネルギー利用効率を最大限に引き出せる機器をお客様にご提供し長く大切に使って頂くことは、石油会社の社会的使命だと考えています。

災害に強いLPガスで、セーフティネットワークをつくる

――ガス業界も都市ガスを利用する燃料電池を展開していますが、石油業界が提案するLPガスの燃料電池との違いをわかりやすく説明していただけますか?

山口:天然ガスもLPガスも化石燃料の一部です。我が社はLNG(液化天然ガス)に関しては八戸や水島にも基地を持ち、事業を行っています。一方、LPガス(液化石油ガス)については、災害に強いレジリエントな(回復力のある)燃料という特性を、今後もっと見直されなければいけないと考えています。東北の大震災の時もLPガスは持ち運びできて非常に重宝され、復興の役に立ちました。何かあった時に強いのです。

 単一のエネルギーソースに偏るのではなく、エネルギーのベストミックスを図ることが大切です。例えば大きな地域の中で病院や市のコントロールタワーといった大切な所は、何かあっても大丈夫な体制を取るべきです。LPガスでエネルギー供給し、災害時にも供給が途絶えないようにする。ガス導管や電線は、寸断されてしまうとエネルギーを供給できませんので、LPガスを合わせ技で常用し、エネルギーソースの多様化を図っておくといざという時に非常に回復が早く、地域住民の人たちにとって住居エリアにセーフティネットワークを備えていることにもなります。