北京の大気汚染レベルは「軽微汚染」か?


国際環境経済研究所理事長

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冬到来で、深刻化する大気汚染

 北京の冬は寒い。「胡同(フートン)」といわれる清代以来の四合院(しごういん)と呼ばれる家屋に住む人たちの煮炊きには、石炭の粉を固めた練炭が使われる。自転車が引くリヤカーの上に、練炭が一杯積んで運ばれるのは北京の冬の風物詩だ。亜硫酸ガス(二酸化硫黄)の揮発性ガス特有の臭いがツンと鼻につき、冷たい空気が煙って見える。2005年に北京に赴任したとき、夜空に星が見えることはほとんどなかった。町を歩き回ったあとに鼻をかむと、黒いものが出たりした。

 その後、2008年の北京オリンピックの成功を目指し、北京市はWHO(世界保健機関)のガイドライン達成に向けて、UNEP(国連環境計画)と協力して環境改善に取り組んだ。オリンピック期間中は工場の操業を停止し、自動車の流入規制を行い、さらには人工降雨も計画するなど、あらゆる対策がなされた。この結果、北京にも青空が見えるようになり、「中国の空気も綺麗になったものだ」と当時は感心した。脱硫装置の設置により、硫黄酸化物(SOx)などは第11次5ヵ年計画(2006~2010年)で10%以上の削減を行った。しかし、浮遊粒子状物質については、WHOガイドラインであるPM10(1日平均50μg/m3)をオリンピック期間中でも達成できなかった。

 オリンピックが終わり平時に戻ると、自動車の数は再び増え、環境の悪化が懸念されるようになってきた。飛行機で北京空港に近づくと、スモッグが垂れ込め、黄色い雲が傘のように上空にかぶさって見える。北京は三方を山に囲まれており、空気が淀み易い地形であるからなおさらだ。

 これから本格的な冬を迎え、石炭による暖房が本格化する季節となる。北京の大気汚染はさらに深刻さを増す。

米国に本部を置く中国政府に批判的なTV局「新唐人TV(New Tang Dynasty Television)」( http://www.ntdtv.jp/ )は、『北京の深刻な大気汚染 当局「軽度汚染」』(新唐人日本2011年11月9日付)をYou Tubeで流している。

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