奥平総一郎・日本自動車工業会環境委員長に聞く[前編]

東日本大震災をバネに、災害に強い体制を構築したい


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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非常に複雑で深いサプライチェーンの問題

――今回の震災で、初めてサプライチェーンの問題が表面化しました。リスクが局所に集中していた、逆に分散できていた等どう評価されていますか。

奥平:特にトヨタ自動車としては、仕入れ先として一次、二次のサプライチェーンまでは把握していたつもりでしたが、今回の問題が起こってみて、サプライチェーンが非常に複雑で、しかも深くてとらえきれていなかった部分があったことに気づきました。複数社発注等でリスク分散していたつもりが、素材や部品の単位でみると、サプライチェーンの最後のところで同じであったこともありました。

 一方で、トヨタ生産方式は非常にリーンな生産方式となっているため、何が不足してくるのかがよく見えました。在庫をできるだけ持たないためラインがすぐ止まり、どこがボトルネックになっているのかは比較的つかみやすかった。そこに向けて支援に行くこともできました。

 今回、原因としてどこが止まっていて困っているのか、追っていくシステムを作り、製品から部品を追っていくこともしました。問題の個所や部品に行き着き、我々自身も現地に行き、関係会社の仕入先、一次、二次のメーカーそれぞれが皆協力して、支援はできるだけ早く行いました。自工会としても、メーカーの垣根を越え、協力・支援を行いました。

――ある経済学者が、サプライチェーンはまさに樽型になっていると指摘していました。また、そのことがわかったのはいいが、データとして分析するにしても実際にデータがなく、記録されていないため非常に苦労すると言っていました。今回を契機に、定常的に記録するようになっていくのでしょうか。

奥平:ある程度はサプライチェーンを把握していかないといけません。全部できるわけでも、すぐにできるわけでもありませんが、徐々にわかるようにしていきたいと思っています。

「サプライチェーンの問題にどのように対応するかが重要」と語る澤昭裕・国際環境経済研究所長