セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を


国際環境経済研究所前所長

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エネルギーセキュリティに焦点を当てた政策見直しの必要性

 2001年に総合エネルギー調査会のエネルギーセキュリティワーキンググループが、経済産業省資源エネルギー庁に対して報告書を提出した。その報告書では、燃料種別に日本にとってのエネルギーセキュリティ寄与度を分析している。すでに10年の時を経ているが、定性的にはその分析の本質は今でも通用する。

 その報告書の結論は、①環境制約等を考慮しない場合には、石油から、原子力、石炭にシフトし、それらの構成比を高めていくことが中長期的なエネルギー供給源リスクの低減に貢献する、②また、環境制約等により石炭への大幅なシフトが困難であるとしても、さらに原子力の構成比を高めていくことや天然ガスへエネルギーシフトすることで、供給源リスクを低下させることが可能である――というものである。

 当時は、経済のグローバリゼーションを背景に国際石油市場が発達してきており、マーケットで調達可能な「一般商品」(commodity)にもなりつつあるという認識が広がりつつあった。それにもかかわらず、やはり石油は政治的戦略商品であるとの慎重な見方を捨てずに、同報告書は、上記のようなエネルギーセキュリティ戦略を提言している。

 中国その他の新興途上国は、自らの成長のために資源・エネルギーの囲い込み戦略をあらわにし、さらに中東で政治的不安定性を増している現在、ますます同報告書の提言の妥当性は一層増しているといってよい。特に原子力に大きく依存することが難しくなった今、この提言の延長線上で考えれば、石炭と天然ガスによるセキュリティの確保に努力を傾注する必要があるということだ。

 さらに2009年8月に発表された長期エネルギー需給見通しを参照しながら、震災直前時点での日本のエネルギーセキュリティ政策の骨格を見てみよう。