セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を


国際環境経済研究所前所長

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省エネルギーと原発導入の2面作戦

 まず需要面では、経済成長と両立させるために、エネルギー総需要を抑制するのではなく、エネルギー消費原単位を改善する省エネルギー政策が基本とされた。産業、家庭、運輸部門など、全ての部門において各経済主体が省エネルギー行動に取り組むとともに、原単位が改善した製品や生産方法の導入及びエネルギー効率改善ための技術開発への研究開発投資などを、政府が政策的に支援するというものである。

 一方、供給面では、「電源構成における脱石油戦略の推進」と「エネルギー輸入先の多様化と資源自主開発の推進」が打ち出された。このうち、「電源構成における脱石油戦略の推進」のために、特に期待されたのが、原子力発電である。

 日本は唯一の被爆国として、国民の間に原子力アレルギーがあるうえ、冷戦中には野党政治勢力が原子力発電に対する反対運動を繰り広げていたため、原子力発電は政治的に争点となりやすい状況にあった。しかしながら、2度の石油危機に見舞われるなかで、停電への危機感が高まり、次第に原子力発電の必要性が国民の間に受け入れられ始めた。その結果、原子力発電は、73年当時は一般電気事業者の発電電力量のわずか約2%を占めるに過ぎなかったが、95年時点では約30%弱に達し、東日本大震災直前でも、東京電力管内で約3割を占めていた。