執筆者:松本 真由美

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国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

  • 2011/11/21

    震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[前編]
    発電と熱利用で安定的なエネルギー需給に貢献へ

    東日本大震災では、地震と津波によりガスや水道、電気の供給が途絶え、大きな影響が出た。この未曾有の震災にガス業界はどのように対応したのか、また、今後のエネルギー政策に業界としてどのように取り組んでいくのかについて、日本ガス協会常務理事の池島賢治氏に話を聞いた。

    ――3月11日の東日本大震災により、私たちはエネルギーインフラがいかに大切かを痛感しました。震災直後、LNG(液化天然ガス)基地やパイプラインはどのような被害状況でしたか。

    池島:今回の震災では、約46万件の都市ガス供給が停止しました。まず、パイプラインに対する被害ですが、お客様に近いところを通るガス管で一部耐震化が進んでいない低圧管に被害があったものの、中圧、高圧という基幹導管については基本的に被害がなかったという点では、これまでの震災と同じ状況でした。一方、これまでの地震と大きく違ったことは、製造設備が被害を蒙ったことです。特に仙台市のLNG基地をはじめ複数の製造設備が津波で被害を受け、ガスの供給源に支障が生じました。

    ――被災地での復旧はどのような状況で行われたのですか。

    池島:今回の震災では、製造所が被害を受け、ガスの供給源を失いました。これまでの地震ではガスの供給源は確保されておりましたので、壊れている導管部分を直しながら順次ガスを復旧させていけばよかったのですが、今回は、まずガスを確保しなくてはならず、そのために少し時間がかかりました。その後の復旧は、これまでの震災の経験が生きて順調に進み、また、設備の耐震化も相当進んでおりましたので、1カ月あまりの期間で、比較的早く復旧できたと思います。

    ――ガスの供給源はどのように確保したのですか。

    池島:LNG基地が津波で壊滅的被害を受けた仙台市に対しては、新潟県にあるLNG基地から仙台市に通じている高圧導管を使って天然ガスを供給する方法を取りました。また、サテライト製造所が被害を受けたところには臨時供給設備を持ち込み、LNGタンクローリーやLPGボンベなどによって、ガスの供給を確保しました。都市ガス設備は、非常に大きな揺れを感知し、ガス管に損傷の恐れがある場合、自動的にガスの供給を停止します。そのような地域が岩手県から福島県、さらには茨城県や千葉県までありました。このような広域にわたって供給停止エリアが出たことは、我々にとって初めての経験でしたが、広域の被害に対して全国の都市ガス事業者が支援する形で復旧にあたりました。

    Ikejima

    池島 賢治(いけじま けんじ)
    1981年に京都大学大学院工学研究科修士課程(土木工学専攻)修了後、同年大阪ガス入社。都市圏営業部マネジャーを経て、2003年エネルギー事業部計画部長就任。兵庫エネルギー営業部長、エンジニアリング部長を歴任し、2010年6月、執行役員就任とともに現職。

  • 2011/11/17

    日本経済が再び世界をリードするために[後編]
    電力の安定供給確保が日本経済の浮沈を決めることになる

     電力不足の懸念が続くなか日本経済が東日本大震災をどう乗り越えていくのか――。先が見えない不透明な状況に不安を抱く人は少なくない。最大の課題となっている、原子力政策を含めた環境・エネルギー問題への対処法を日本経済団体連合会の井手明彦資源・エネルギー対策委員長(三菱マテリアル会長)に聞いた。

    ――今年の夏は、電力不足の懸念から厳しい節電目標が設定されましたが、多くの企業が目標をクリアしたようですね。

    井手:この夏の対応は、産業界として多くの犠牲を払いながら実施したものです。一部報道や有識者、政治家は「やればできる」と安易にとらえていますが、簡単な状況ではなかったことを、まず申し上げたい。「今年の夏さえ乗り切ることができれば」ということで、いくつもの犠牲を払ってようやく達成できたのです。今年実現できた15%程度の節電なら簡単にできると思い、それを前提にされたのでは、今後、非常に困ることになります。

    ――厳しい電力状況が続くようだと、産業空洞化が進むのではないかという指摘もあります。

    井手:未曾有の大震災による被害を受け、原発事故による大きな犠牲を払っている人たちを思えば、多少の犠牲は覚悟して、日本国民としてやり遂げなければならなかったと思います。しかし、今冬以降の電力需給については、政策責任者の意思による部分が大きい。何としても、経済活動への影響が最小限となるよう対策いだきたい。特に問題となるのは、今後の見通しが立たないことです。この状況が続けば、ご指摘された空洞化が現実のものとならざるを得ないでしょう。

    ――状況は、かなり厳しいということですか。

    井手:我々の属している非鉄金属業界においても、新規の投資を考える場合に先の見通しが立たないのであれば、電力供給の不安がない国での投資を考えるのが自然です。さらに当社のように素材や部品を製造しているメーカーは、自社の投資判断だけではなく、お客様がどこに立地するのかにも左右されます。自動車メーカーなどの組立産業が海外での生産を選んだ場合には、必然的に、当社のような素材・部品メーカーも海外に出て行くことになります。

     雪崩をうつように空洞化が進行する懸念が非常に高いのです。政府は一刻も早く、3年~5年の電力供給対策の工程表、ロードマップを示すべきだと考えます。

    井手明彦(いであきひこ)氏。1965年に三菱金属鉱業(現在の三菱マテリアル)入社。常務、副社長を経て、2004年6月に社長就任。2010年6月から現職。社団法人セメント協会会長、日本鉱業協会会長を歴任し、2010年から日本経済団体連合会評議会副議長を務める

  • 2011/11/09

    日本経済が再び世界をリードするために[前編]
    ~エネルギーの安定供給と経済性の視点を外さないでほしい~

    電力不足の懸念が続くなか日本経済が東日本大震災をどう乗り越えていくのか――。先が見えない不透明な状況に不安を抱く人は少なくない。最大の課題となっている、原子力政策を含めた環境・エネルギー問題への対処法を日本経済団体連合会の井手明彦資源・エネルギー対策委員長(三菱マテリアル会長)に聞いた。

    ――日本経団連は今年7月、エネルギー政策に関する第1次提言を発表しました。この基本的な考え方を教えてください。

    井手明彦氏(以下敬称略):東京電力の福島第一原子力発電所事故の影響の大きさを考えると、旧来のエネルギー基本計画に盛り込まれた原子力計画は当然見直しを余儀なくされるでしょう。これによる供給力の不足は、化石燃料、再生可能エネルギー、省エネルギーによって補わなければなりません。

    一方、準国産エネルギーである原子力の果たす役割は引き続き重要で、着実に推進していく必要があると考えています。もちろん、安全性を確保し、地元住民をはじめ国民の理解を十分に得ることが大前提です。そのためにも、福島の事故原因の究明と安全対策の実施が、早期に、そして徹底的に行われることを期待しています。

    ――中長期的視野に立つと、エネルギーの新たなベストミックスの検討が必要であると提言されています。具体的にはどういうことでしょうか。

    井手:今後、エネルギーのベストミックスを検討する際には、各エネルギーの長所と短所、技術革新の動向などを、現実的、客観的に分析すべきです。そのうえで、安定供給や経済性など国内で実現すべき目標が何かを考え、開かれた国民的な議論を行う。実現性やコスト負担のあり方などについて十分に検証することなく、政治的な数値目標を安易に掲げるべきではありません。政府が「エネルギー・環境会議」のなかに設置した「コスト等検証委員会」には、国民的な議論のベースとなるデータの提供を期待したいと思います。

     ただし、エネルギーのベストミックスについて議論する際には、2020~30年を意識した中長期的な視点に立ち、エネルギーの「安定供給」「経済性」「環境配慮」のいわゆる3E間の優先順位を、大震災後の状況を踏まえて見直すべきと考えます。近年、わが国のエネルギー政策は地球温暖化防止に大きく軸足を置いてきました。しかし、国民生活を向上させつつ、産業の空洞化を防ぎながら安定的な成長を続けるためには、もちろん安全性が大前提ですが、これまでよりも、国内におけるエネルギーの安定供給や経済性に力点を置いた政策が求められるのではないでしょうか。

    井手明彦(いであきひこ)氏。1965年に三菱金属鉱業(現在の三菱マテリアル)入社。常務、副社長を経て、2004年6月に社長就任。2010年6月から現職。社団法人セメント協会会長、日本鉱業協会会長を歴任し、2010年から日本経済団体連合会評議会副議長を務める

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