執筆者:饗庭 崇夫

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元大阪大学特任準教授

  • 2011/08/18

    ポスト京都に向け、次の手を探る欧州

     欧州が、ポスト京都に向けて新しい動きを見せている。本稿では、2009年の第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)から今年初めまでの欧州の状況を簡単に振り返った後、欧州の動向について、あくまで筆者の個人的見解であるが解説を試みたい。まだ欧州歴は浅いものの、欧州産業界の議論に直に接している者の見方として、多少なりとも参考にして頂けたら幸いである。

     筆者が2010年1月にブラッセルに赴任してから1年半たった。赴任後すぐに、欧州の気候変動政策研究者の話を聞いた際、想像以上に悲観的な彼らの見方に驚いたことを今でも思い出す。京都議定書の延長線上に、米国や途上国を含めたグローバルCapを設置し、グローバルCap & Tradeに世界が進んで行くことを真摯に期待していたEU(欧州連合)の気候変動政策担当者にとって、COP15での挫折は想像以上に大きなものだったようだ。その後、米国のオバマ政権に期待をかけ、米国がCap & Tradeに進むことに一縷の望みを抱いていたようだが、その望みも昨秋には、少なくとも当面の間、絶たれてしまった。

     産業革命以降の温度上昇を2℃以下に抑制するという450ppm目標に基づき、グローバルにトップダウンで排出削減目標を設定していこうというEUのアプローチは、地球規模で法的拘束力のある総量Capを設定できなくなってしまった以上、説得力を失いつつある。世界の二酸化炭素(CO2)排出量の1割強でしかないEUが単独で2℃目標に突き進んだとしても、実質的な効果がどれだけあるか疑問視する意見が、EU域内で増えつつあるようである。こうした動きを受けEUは、2℃に替わり、EUの政策を正当化するための新たな理念を模索しだした。しかし、この転換は簡単には進まぬまま、従来の慣性で動いているようにも見える。もちろん、新しい理念を打ち出したとしても、再生可能エネルギーの導入や省エネによる域外からのエネルギー輸入の低減、イノベーションの促進など、実際の行動にはあまり大きな変化はないとみられている。