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冷凍倉庫の新システムが太陽光発電の普及を促進する


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 冷凍食品などの流通の要となるのが冷凍倉庫である。ここでは、絶えず出入りする保管物で庫内の温度が変動するのを極力抑えるように冷却設備を稼働させる。従来からの方式では、冷却装置で空気を低温にして送風機で倉庫に送り込むため、外気温度が低くなる夜の設備稼働は低いレベルで、気温が上がる昼になると高レベルの運転をして、保管している商品の品質に影響が出ないようにしている。標準的な冷凍庫は1,000kW相当の冷熱を保存しているが、これに消費される電力のコストは保管事業者にとって人件費に次ぐ大きさとなるとされ、そのエネルギーコスト抑制のための制御に冷凍倉庫事業者は力を注いできた。

 ところが、全く異なった発想の冷凍方式を開発した企業が現れた。Viking Cold Solutionsというフロリダに生まれた事業者(今はテキサス州にある)で、水と塩の水和物を組み合わせた冷凍材を開発したのだが、これに冷熱を加えても、水和物の相変化が起こることによって、一定の温度を保ちながら冷熱エネルギーを吸収してくれる。逆に、貯蔵品を冷やすために冷熱を放出させても、その保冷剤の温度はやはり相変化によって一定に保たれる。冷熱の貯蔵と放出を、保冷剤の温度を変えずに行うことができるということだ。これをViking ColdはTES (Thermal Energy Storage 熱エネルギー貯蔵)と称している。保冷剤の温度は摂氏零下28度から零度までの間で設定できる。

 このTESの場合、冷却設備の稼働は毎日ほぼ一定になる。外気温度が下がる夜にも通常の稼働をさせ、冷熱を蓄熱させる。昼になると、夜蓄えた冷熱を放出させることによって、冷却設備の稼働を夜とほぼ同じレベルで行っている。ということは、昼間にも冷却設備はフル稼働していないから、もし必要があれば、稼働率を上げて電力消費を増やしても、発生する冷熱は蓄熱されるため冷却材の温度を一定に保つことができる。これによって冷却設備のエネルギー効率が平均して25%は上がるという。


緑色の筒容器が保冷器
出典:https://www.vikingcold.com/

 この冷凍方式と太陽光発電の関係を具体的に説明すると、快晴時に電力事業者の管内にある太陽光発電からの電力が需要を上回りそうになった時に、送配電系統の管理者は指示を出して冷却設備の稼働率を上げて貰い、保冷剤の温度を変化させることなく余剰電力を消費させることができる。従来型の冷凍・冷蔵倉庫の場合には、快晴で気温は上がっているため、冷却装置はフル稼働状態にあり、太陽光発電からの余剰電力を消費する余裕はない。

 いまカリフォルニア州でこのTESによる冷凍倉庫が普及しようとしている。当初電力事業者はTESを電力需要の管理に使えるとは気づかなかった。太陽光発電が余剰電力を生み出したときに、工場などの操業度を上げて貰って電力消費を増やすというのは、実際には難しいことだったが、このTESを利用すれば、系統からの指示で冷凍機の稼働を上げるのに難しさがないという理解が進み始め、電力料金の体系も電力需要管理方式(DR: Demand Response)に則したものを準備するようになっている。変動性の再エネ発電の普及が進んでも、そこからの余剰電力を適宜消費してくれる冷凍庫の存在が貴重なものになりつつあるそうだ。

 これまでは、大型の蓄電池の利用によって余剰電力を蓄電する、あるいは、再エネ発電を停止させることで、変動性再エネ発電の増加に対応してきたが、このViking Coldの新しい方式TESによる冷凍冷蔵庫の設置が拡大すれば、電力事業者も蓄電池への投資を増やす必要も、再エネ発電を停止させる必要もなくなるだろう。我が国に於いても、太陽光発電からの余剰電力への対応に困っている九州電力などでは、このシステムの導入促進を検討しても良いのではなかろうか。