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被災者に寄り添う支援とは

書評:岡本 正 著『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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電気新聞からの転載:2020年5月1日付)

 「防災」と聞いてあなたは何をイメージされるだろうか。避難訓練に参加すること、防災グッズを整えること、家族と避難場所を確認しておくこと。どれも重要な自然災害への備えだ。こうした備えも十分ではないという方には、ぜひ今日にでも行動を起こして頂きたい。私たち日本人は、世界でもまれな自然災害大国に住むという冒険をしているのだ。

 しかしこうした備えは、発災から数日をしのぐためのものだ。もちろん重要ではあるが、この備えでしのぐ生活と、失われた日常生活との間には大きなギャップがある。通常の生活を取り戻すまでの道のりを確認しておけば、被災した時に途方に暮れる度合いが軽減できることは間違いないだろう。

 本書は、地震や津波、土砂災害などの自然災害で生活が大きなダメージを受けたときにどう立て直していけばよいのかを示したHow to本である。被災した状況で読んでも理解しやすいようにであろうか、かみ砕いた平易な表現で、必要な知識を伝えてくれている。私たちは皆、いつ「被災者」になるかわからない。災害の規模や種類によっては、政府や自治体などの公的支援にどこまで期待できるかもわからない。生活を立て直す道しるべとして目を通し、防災グッズを詰めたリュックの中に忍ばせておいてほしい。「被災者」となった自分に、一歩踏み出す希望を与えてくれるはずだ。

 そして、エネルギーインフラに関わる皆さまにはぜひ別の読み方もして頂ければと願う。自然災害に際して、顧客が直面する困難を知り、どのような支援ができるのかを改めて考えてみて頂きたいのだ。もちろん一義的には自社のインフラを健全に維持し、エネルギー供給を途絶させないことが最大の使命であろう。しかし、東日本大震災や今回の新型コロナウイルスに際して、電気料金の支払い猶予に踏み切るなど、公共を担う企業として一歩踏み込んだ対応はこれまでもなされている。さらにできることはないか、本書を読んで想像を膨らませてみてほしい。困った時に寄り添ってくれた存在を、人は忘れない。

 新型コロナウイルスによって「需要が瞬間的に蒸発した」とも評される事態に直面し、原子力発電所の稼働の是非を議論するときに聞かれた「命か経済か」といったようなナイーブな声は聞かなくなった。それも当然であろう。経済が回らなければ命は守れない。お金とくらしは一体なのだ。

※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず

『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』
著:岡本 正(出版社:弘文堂)
ISBN-13:978-4335552007



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