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次なる半世紀へ ~日本の持続的成長とエネルギーを通じた貢献(後編)~


東京ガス株式会社 サステナビリティ推進部 部長


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連帯により磨かれる多様性、歴史に学ぶ先進

 前編では当社グループの2030年に向けた挑戦について述べたが、後編では一エネルギー企業の枠を少々はみだし、これからの日本の進むべき道と世界における日本の役割について少し考えてみたい(※以下は筆者の見解であり、当社の公的見解では無い部分も含む)。
 気候変動、いや気候危機とも呼ぶべき現況を目の当たりにし、多くの日本人が出来るだけ早期に地球上のCO2を減らさなければならないと真剣に考え始めたと思う。
 問題は、その「スピード感」と「削減の仕方」だ。
 スピードはもちろん早いに越したことは無い。パリ協定やIPCC報告を踏まえれば、理想と現実がかけ離れないよう留意しつつも、CO2排出を実質ゼロにするゴールの時期を前倒しするアプローチはこれからも重要だ。
 一方、削減の仕方だが、無尽蔵にお金を投入し再生可能エネルギーを一斉導入するような極端なやり方で、国家が疲弊したり、今日の生活水準が維持できなくなってしまっては元も子もない。国力の維持は地政学的リスクが高い我が国の安全保障課題にも直結する。また、今日の日本を支えている製造業からのCO2排出を議論するには、この先の日本のあり方やありたい姿の議論なしには前に進まないと思っている。
 加えて、これから人口が増え、日本が過去経験した経済成長ステージに入る多くの新興国は「地球のことよりまず明日の生活」という状況で、そこに対して先進国は自国の削減の仕方を強要できない。国ごとの事情を勘案することが重要だ。無理に押し付けると国家間の分断を生むだけである。
 そこで大事なのが、最終的な共通のゴールに向かって、経済性や他のベネフィットも含め国ごとに統合的なロードマップを描くことであり、まさにそれがゴールまでの移行期、「トランジション」の考え方である。そしてそこには、実効性が高く、費用対効果にも優れる省エネ手法や高効率システムなど、日本の素晴らしい技術や運用の仕組みがフィットするし、特に新興国の現実解には最も有効だと思う。
 加えて日本には、江戸の鎖国時代、日本を限られた地球と見立て、その中で「山水郷」と言われる自然の恵みを最大限活用し、エネルギーも食料も資源も全て循環させ持続可能に営む仕組みが既に実現していたという財産がある。社会の仕組みに加え、清貧で徳を重んじる生き方、人間も大きな自然の中の一部の存在にすぎないという東洋思想観、「おすそわけ」に代表される相互扶助のコミュニティーなど、今や失われつつある人生観や世界観も歴史から学ぶことは多い。
 これからは分断でなく共存、連帯の時代だ。世界一律ではなく、各々の国が各々に最も適した削減の仕方で進めることが、世界が持続可能でありながらCO2を最も早く減らせる近道だと私は信じている。
 最後に、私は一休宗純(とんちの一休さん)の以下の言葉が好きだ。

『一本筋は通しても頑固になるべからず』

 違う意見を持つ者同士が、遠慮せず意見はぶつけつつも、自分の意見に固執するのではなく互いの意見を尊重しながら前に進んでいく。明治以降の日本は西洋文明という見本を見つつ発展してきたが、これからは、コロナ後の世界のあり方を含め、世界に唯一無二の答えなど無い時代に突入していく。こういう時代には、一人一人が多数派の意見に安易に流されることなく個として未来の姿を考え抜き、その個と個が互いの意見を尊重しながらぶつかり合うことで、昇華・統合し、少しでも全体として良い答えを導き出していくことが最も大事である。
 今こそ日本の培ってきた素晴らしい技術、そして思想や叡智を世界と共有し、持続可能でかつ人間が活き活きと生きられる社会を作っていきたい。