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第8回 電機・電子業界は、社会の各部門のバリューチェーン全体に貢献する[後編]

電機・電子温暖化対策連絡会 議長/三菱電機(株) 環境推進本部 本部長 中野 博文氏、一般社団法人・日本電機工業会 齋藤 潔氏


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 前編では、電機・電子業界の特徴や社会における立ち位置、また温室効果ガスの排出削減にどう取り組んでいくのか等についてお話を伺った。前編はこちらをご覧ください。後半は、国際標準化やSociety5.0への対応についてさらにお話を伺った。

*Society5.0:日本が提唱する未来社会へのコンセプトで、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会

電機・電子温暖化対策連絡会議長 中野 博文氏

電機・電子温暖化対策連絡会議長 中野 博文氏

―――業界として国際標準化に積極的に取り組んでいると伺っています。

齋藤氏:製品やサービスの排出抑制貢献の見える化の活動は、実は案外と歴史は古いのです。京都議定書でCDM(クリーン開発メカニズム)の導入、いわゆる排出削減量をクレジット化するという議論がありましたが、そのときに、一つ、ベースライン&クレジットというコンセプトがありました。何かのベースラインを決めたものに対して、削減等の貢献ができたものをクレジット(排出権)という形で考えようというのが京都議定書当時からありました。もともと、CDMの対象は大規模プラントや工場設備がイメージの中心でしたが、われわれは例えば家電製品の高効率化を考えてみたときに、不特定多数の方々に省エネ製品を提供して、それを買い替えていただくことが起きていく中で、そうした貢献も見える化できないかと考えました。国連で、そういったクリーン開発メカニズムの方法論の策定に参画したときに、いわゆる削減貢献をどう算定していったらいいのかを試みました。

 試行錯誤した中で、例えば、かつて、家電のエコポイント制度がありました。ポイントに還元するときに、例えば冷蔵庫を買い替える、エアコンを買い替えるという中で、省エネ型のものにするとどれくらいCO2排出の削減に貢献できるのかを算定しました。

 また、IEC(国際電気標準会議)は電気の分野で長い歴史がある国際標準化の舞台で、トーマス・エジソンから始まっていますが、このIECの場において、2013年、2014年にライフサイクルでの排出量を計算するその算定方法論と、削減貢献を算定する方法論を日本からわれわれが提案して国際規格という形にしました。このうち、削減貢献については、2014年に、電気・電子製品の温室効果ガス排出削減量算定ガイドライン「IEC TR 62726」が発行されています(図1)

(図1)国際標準化に向けた動き 出典:電機・電子温暖化対策連絡会「電機・電子業界の温暖化対策」から抜粋

(図1)国際標準化に向けた動き 
出典:電機・電子温暖化対策連絡会「電機・電子業界の温暖化対策」から抜粋

 それを踏まえつつ、自分たちの低炭素社会実行計画の中でも、24製品・サービスについて、一つ一つ細かく方法論を決めています。例えば、ベースラインに関して、同じ機器同士でより高効率の機器に置き換えたらどうなるのか、また、再エネ導入により従来は火力発電等の設備を導入していた場合との代替による効果はどうなるのか、といったような、2つの考え方を軸に削減貢献算定の方法論を作って、国際標準にしてきたところです。

 開発をしたのが2014年と時間も経ちましたので、IEC国際標準の場でも、今後それをリニューアルしていく時期にきていると思っています。特に昨今は、単体の製品の貢献ではなくて、システム全体の貢献が求められています。また、IoTやAIにより全体最適化の貢献についても注目されているので、それらの内容をどれだけ盛り込んでいくことができるか、改めてチャレンジしていくことになると思います。

―――グローバル・バリューチェーンの廃棄段階について伺います。業界の製品は非常に多いですが、リサイクル、リユースの取り組みは?

齋藤氏:家電製品については、家電リサイクル法が施行されています。大型の家電製品、いわゆる冷蔵庫や洗濯機、エアコン等になりますが、毎年、消費者に買い替えていただく段階で廃棄されたものを回収して、メーカーは法律上リサイクルをする義務を負っていますので、多くの企業が自分たちの資本、あるいは投資をしてリサイクルプラントを運営し、その中でリサイクルを進めています。

 昨今は、やはり話題になっている廃プラスチック問題への対応が求められています。廃プラのリサイクル・再生材としての活用は、長年、たとえば、会員企業の三菱電機でも実践されていますが、金属と違ってプラスチックは多種多様で、それぞれの特性も違います。したがって、いかにリサイクルしやすい、あるいは再生材としての活用を視野にいれた設計をするのかということ、さらに、リサイクルの現場での努力があります。

中野氏:リサイクルするには、いろんな種類のプラスチックの材料が使われていますので、そのプラスチックの中でも材料によってふるい分けする必要があります。分別回収も同じですが、そういったリサイクルプラント内での技術でも、いかにリサイクルしやすいように分けていくかで、廃棄物から有価物に変わります。そうした技術を磨いていくことにより、70%から80%の回収率でリサイクルできていくと思います。

―――三菱電機もリサイクルプラントを保有されているのですか。

中野氏:千葉県に2つのリサイクルプラントを持っています。日本の場合は、家電リサイクル法がありますので、基本的には回収する静脈側のシーケンスはできていますが、海外、途上国などでは、まだまだ回収の仕組みができていません。きちんと回収できれば、有効にリサイクルできる技術はありますが、そこを回収するスキームがまだ不十分なところがありまして、そこまではできてないのが実態です。

―――Society5.0への考え方や取り組みについてお聞かせください。

中野氏:いろいろな個別のシステムや機器がたくさんあります。それをビル全体、街全体、地域全体から国土全体に、いかに有効に無駄なく使っていくか、IoTやAIを使いながら進めていくことが重要です。われわれの業界だけでなく、車の業界、運輸の業界、食品の業界等々も含めて、いろいろな業界とも関わる中、Society5.0への対応を進めています。特に運輸では、無駄な物流が発生しているという課題があります。無駄のない物流をめざし、さまざまなソリューションを提案していきたいと考えています。

 アメリカでは、ウーバーを例に挙げると、携帯アプリでお客さんのところへすぐ来て、待ち時間もなく、ロスもない効率的なシステムができています。そうしたシステムを構築していくことが社会のニーズとして広がりそうです。今後、業界、メーカーや会社だけではなく、一般の消費者の方々にもそういった情報を提供して、無駄があるようなところを“見える化”することで、Society5.0を追求していきたいと思います。

―――日本の国際競争力はどうでしょうか?

齋藤氏:非常に厳しく競っている分野ではあります。われわれの価値をいかに上げられるか、切磋琢磨しなければなりません。近年、気候変動問題を含めて社会的課題を解決していくため、2030年に向けた世界共通目標を掲げるSDGs(持続可能な開発目標)やRE100などの国際イニシアチブが発足し、社会の変化を感じながら、グローバルに企業の動きが活発化しています。しかし、自分たちの足元をしっかり持たないと、波にのみ込まれてしまうかもしれない。

 会員企業には、それぞれ得意分野があり、社会に対して、さまざまな製品やサービスを提供しています。お客様にストレスなく製品やサービスを使っていただくことが重要で、そこがコアとなり、バリュー・チェーン全体で脱炭素化を目指すことが大事ではないでしょうか。

中野氏:日本の電機・電子業界の国際競争力は、十分あると考えています。AIやソリューションを提供するアイデアが、お客さまのニーズや社会課題に対して、どうフィッティングさせるかが大事なことです。会社ごとに分野の得意、不得意があるとは思いますが。どういったところに着眼し、AIを使ってそれを最適化させるかが重要です。

齋藤氏:日本製品は、信頼性が高いと評価されていますので、それをうまく強みにしたいです。また気候変動対策としての適応策やレジリエンス対策となる社会インフラを支える製品やソリューションの展開も今後、日本の強みになる可能性があります。そうした観点で、われわれもそのメッセージを積極的に発信していきたいと思っています。

中野氏:電気を使っていかに快適な生活や移動空間を提供できるかについては、基本的には高効率化にこだわっています。基本となる技術は、発電機もそうですが、モータなどに代表されるようにエネルギー変換のビジネスになります。三菱電機では、それらが会社の売り上げの大体7割を占めています。われわれは、ライフスタイル、インダストリー、インフラ、モビリティーという4つの軸で貢献していく考えです。これら4つの分野で、単体のビジネスに加えて、いかにソリューションを提供できるかが課題ですが、挑戦していきます。気候変動、地球温暖化対策に直接的、間接的に貢献していきながら、環境の取り組みをレベルアップさせていきたいと思っています。

【インタビュー後記】

 電機・電子業界は、産業・業務・家庭・運輸・エネルギー転換のあらゆる部門に多様な製品・サービスを提供しています。社会のあらゆる部門に関わる事業特性から、バリューチェーン全体を視野に、社会全体の温暖化対策に貢献していくことを、事例を交えて、わかりやすくお話いただきました。
 IEA(国際エネルギー機関)の試算では、2℃シナリオを実現するため、低炭素・省エネ技術革新と普及促進で、2030年に最大170億トン規模のCO2排出削減が期待されています。業界が社会に供給する再エネや高効率発電関連技術、高効率機器・デバイス等の省エネ製品に加え、IoTやAIを活用したエネルギー需給の最適化を図るソリューションは、バリューチェーン全体でのCO2排出の大幅削減に貢献することが期待されています。
 私たち消費者に直接かかわる技術も多くありますが、環境に配慮しながら、安全で安心でき、快適な製品・サービスの展開を図る考えでいらっしゃることも印象的でした。未来をつなぐ技術とサービスに期待しています。



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