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洋上風力の“有望区域”協議会が発足

秋田2区域でも促進区域に向けた議論始まる


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2019年12月号からの転載)

 前回の本連載では、経済産業省資源エネルギー庁と国土交通省港湾局が、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」(今年4月施行)に基づく洋上風力発電の促進区域の指定に向けて、4つの有望区域を7月に選定したことを書きました。
 4つの有望区域のうち2区域は秋田県で、「能代市、三種町および男鹿市沖」と「由利本荘市沖(北側・南側)」()では10月8日、同法に基づく協議会がそれぞれ発足し、初会合が開催されました。筆者は両方の協議会のメンバーになっており、初会合でどのような議論が行われたのかを紹介したいと思います。

図 秋田県由利本荘市沖の有望な区域

図 秋田県由利本荘市沖の有望な区域
出所:海洋台帳は海上保安庁、白地図は国土地理院

協議会の基本原則

 秋田の2区域以外の有望区域は、「千葉県銚子市沖」と「長崎県五島市沖」です。各有望区域は、国が都道府県などから情報収集した結果、早期に促進区域に指定できる見込みがあり、洋上風力の導入に向けてより具体的に検討を進めるべき区域と考えられています。4区域では、関係都道府県、関係市町村、漁業団体、有識者らで構成される協議会を組織するとともに、国による風況・地質調査が数カ月実施される予定です。
 同法では4つの目標(基本原則)を定めており、これが協議会の運営の大原則になっています。4つの目標は、①長期的、安定的かつ効率的な発電事業の実現、②海洋の多様な利用などとの調和、③公平性・公正性・透明性の確保、④計画的かつ継続的な導入の促進です。
 協議会では、ステークホルダー間の協調のあり方や事業者の公募方法、漁業影響調査の実施などについて、複数回にわたり議論する予定です。透明性の確保と地域との連携を進めるため、協議会は原則公開で行われ、秋田市内のホテルで開かれた初会合は多くのメディア関係者が傍聴しました。

由利本荘沖協議会での議論のポイント

 4つの区域の中で最初に協議会を開催したのは「由利本荘市沖」です。由利本荘市からは、市の総合計画「新創造ビジョン」で再生可能エネルギーの利活用の推進を図っており、地元事業者の参入を支援する施策を打ち出していることや、同法の成立を踏まえ、市議や市職員を対象にした勉強会を開催したこと、今年7月に欧州(スコットランド、イングランド、オランダ、デンマーク)を調査訪問したことが紹介されました。

秋田・由利本荘市沖協議会の様子=10月8日、秋田市のホテル

秋田・由利本荘市沖協議会の様子=10月8日、秋田市のホテル

 地元からは、漁業・産業振興を推進する海域の範囲を北側と南側に分けるのではなく、一体で促進区域に指定してほしいとの要望書が提出されている一方、低周波音などによる健康被害や景観に関する懸念が示されるとともに、計画中止の要望書が出ていることについて説明がありました。
 促進区域の指定に関して、由利本荘の漁業関係者からは、漁業との共存共栄と洋上風力の進展を望んでいることや、漁業者にとって海は1つなので「北側・南側」と分けずに一体でやってほしいとの意見が出されました。
 開発区域の大きさや位置は論点の1つです。国からは、北側と南側に分けた理由として、由利本荘市沖の開発可能区域の潜在能力が70万kWと規模が大きい一方、欧州の洋上風力の開発事例は1サイト35万kWくらいが平均であることを考慮したとの説明がありました。欧州で1サイト35万kWになっている理由について、専門家にも話を聞く予定です。
 秋田県からは、本荘港を年間何十隻かが利用しており、港の利用者から意見を聴く必要があることや、秋田港の地耐力(地盤が重みに耐えられる強さ)を強化し、洋上風力発電設備の組立や海上施工に用いるSEP船が着岸できる港にすることを検討中との話がありました。また、東北旅客船協会からは、沖合には航行船舶がたくさんあることから、傘下の事業者の意見を集約し、次回報告するとの説明がありました。

能代市、三種町、男鹿市沖協議会での議論のポイント

 能代市からは初会合で、地域活性化策として“エネルギーの街”を推進しており、市内の陸上、港湾区域内、一般海域に風力発電を導入しているとの説明がありました。陸上風力発電事業で現地法人を設立してもらうローカルルールがあることや、陸上風力の事業費の一部を市民ファンドから募ったところ、2億円の募集に対し7億円が集まって抽選になり、市民の注目度が高いことが紹介されました。洋上風力でローカルルールをつくることは難しくても、地元に経済波及効果がある形での事業を期待しているとのことでした。
 洋上風力と地域活性化については今後議論する予定です。
 また、同市は、期成同盟会(42団体が参加)を結成し、約1万~2万とされる洋上風力発電関連の部品を製造する工場などの誘致を進めたいとして、能代港の拠点港化を進めているとのことでした。

秋田・能代港に2000kW級の洋上風力を設置した場合に予想される景観(写真は秋田港・能代港 再生可能エネルギー導入検討協議会=2014年3月)

秋田・能代港に2000kW級の洋上風力を設置した場合に予想される景観(写真は秋田港・能代港 再生可能エネルギー導入検討協議会=2014年3月)

 漁業関係者からは、洋上風力の事業化により、秋田県北の特産品となっている魚、ハタハタが来なくなるのではないかとの懸念が示され、それを払しょくする漁業振興策を考えてほしいとの要望が出されました。
 国からは、洋上風力の開発候補区域から、区画漁業権(魚類などの養殖)と定置漁業権(大型の定置網などを置いて行う漁業)のエリアは外し、比較的区域が広い共同漁業権(漁場を地元漁業者が共同で利用する漁業で採貝採藻など)のエリアを考えているが、35万kWの開発予定海域には、現在使っている漁場も混じっているとの話がありました。
 協議会では、洋上風力と漁業との共生について、しっかり話し合うことが重要であることを確認しました。洋上風力の漁業への影響については、この分野の専門家を呼んで今後議論を行う予定です。
 秋田県の2区域が促進区域に指定されるかは未定ですが、複数の企業が2区域での洋上風力事業化に向けた公募入札への参加を表明しています。協議会での議論の行方に注目が集まりそうです。



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