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日本文明とエネルギー「気象の狂暴化」特集(1)

地球の気候は変動し続ける


NPO法人 日本水フォーラム 代表理事


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地球の気候変動

 温暖化は確実に進んでいる。温暖化により気象は狂暴になり、未来の日本列島に襲いかかってくる。未来の気象変動を考えるとき、是非、知っておくことは、過去の地球全体の気候変動である。
 何十万年以上の長期な時間軸で、地球の気候変動はいかに推移したか。その地球の気候変動の中で、日本列島はいかなる状況にあったのか。この過去の日本の姿は、未来の日本を考えるうえでの指針となる。
 (図-1)は地球の34万年間の気温変動の遷移である。図を作成した元データは、2000年(平成12年)に国立極地研究所の教授に教えていただいた数値データである。国立極地研究所が南極の氷床をボーリングして得た酸素同位体組成の数値である。この数値はその時の大気温を示している。データが極めて膨大な数値データだったため、200年平均値を算出し、3,000年間の移動平均値を求めた。

図-1

図-1

 この図は、私たち土木技術者が作業したもので、地球物理学的な正確さには欠ける。しかし、地球の長期の気候変動の傾向は十分理解できる。

6,000年前の地球の温暖化

 この図では、2万年前のウイスコンシン氷期や、6,000年前の縄文前期時代の温暖化時期が明確に表現されている。この図によると縄文前期6,000年前の200年平均気温は現在より2℃高かった。それは一瞬の値ではなく200年平均値であることに注意を要する。
 縄文前期、海面が数メートル上昇していたことは地質学的に実証されている。大気温が高かったため、陸上の氷河が融け、海水面が上昇していた。また、大気温が海水を温め、海水が膨張することで、海面が上昇していた。縄文前期に海面が数メートル上昇していた理由がここにある。
 未来の地球で温暖化が進めば、海面上昇が進展していく。ここで最も大きな影響を受ける国が、海に囲まれた島国である。先進国では英国、オーストラリアそして日本がある。この中で最も大きなダメージを受けるのが日本だ。
 何しろ日本の大都会のほとんどが、海に面した低平地の沖積平野に位置しているからだ。

過去の海面上昇の再現

 海面が数メートル上昇していた日本列島を再現してみた。
 (図-2)は21世紀の関東地方の標高陰影図である。この海面を5mコンピュータで上昇させると(図-3)となる。海面は関東地方の奥深く入り込んでいる。縄文時代、関東は海の下であった。いわゆる縄文海進である。(図-4)の関東地方の貝塚の分布図でもそのことが実証されている。

図-2

図-2

図-3

図-3

図-4

図-4

 (図-5)は徳川家康が江戸に入った時代の関東の様子である。当時、利根川と渡良瀬川は銚子ではなく、江戸湾に流れ込んでいた。
 その当時、地球の大気温は寒冷化に向かっていて、海面は低下し、海は沖に後退していた。かつて海だった江戸湾に、利根川、渡良瀬川、荒川そして多摩川が土砂を運び続けていた。江戸湾は土砂が堆積した大湿地帯だった。
 400年前、徳川家康は利根川を銚子へ向ける「利根川東遷工事」に着手した。利根川と渡良瀬川の洪水が銚子に向かったことで、関東平野の乾田化が進み、日本最大の沖積平野が姿を現していった。

図-5

図-5

 しかし、関東平野が湿地帯だったことは変わらず、洪水に脆弱な平野であることには変わりがない。海面上昇が進展すれば、海からの高潮の脅威に直接に曝されることとなる。
 これは関東平野だけではない。日本列島すべての平野に共通する危険なのだ。関東平野以外の例として(図-6)に弥生時代の大阪を示した。

図-6

図-6

未来の災害

 21世紀の現在、「地球の気候変動」とは「温暖化」を指している。私の小学生頃は「地球の気候変動」は「寒冷化」を意味していた。マンガでもSF小説でも「寒冷化」のストーリーで満載だった。
 (図-1)の6,000年前の縄文海進から現在までの大気温の傾向を見ると、確かに、地球は寒冷化の傾向にあった。それが21世紀の現在、地球は温暖化であるという。
 寒冷化から一気にV字転換で温暖化に向かったこととなる。地球規模の大規模な気候変動が、短い私の人生時間の中で発生してしまった。このようなことは今でも本当とは信じられない。
 地球の温暖化が進展するとき、日本列島は二つの側面からの影響を受ける。一つは「気象の狂暴化」である。もう一つは「海面上昇」である。
 気象の狂暴化は想定外の豪雨による災害である。これは日本列島を山の方から攻めてくる。海面上昇はじわじわと何百年間も続いていく災害である。これは日本列島を海の方から攻めてくる。
 この「気象の狂暴化」の特集では、気象の狂暴化と、海面上昇に襲われる日本文明について考察していく。