未利用熱で発電する熱電変換素子


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 現在、運輸・産業・民生の分野において、一次エネルギーの半分以上が利用されずに排熱になっているということだ。エンジン・タービンによる発電の排熱を給湯・空調に利用して80%前後の総合効率を出す熱電併給(コジェネレーション)があり、あるいは、瞬間湯沸器のエコジョーズは排熱利用で90%を超える総合効率を実現している。しかし、利用されないで捨てられる熱はまだ至る所にあるということだ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、熱の有効利用を推進する目的で、「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」を2015年度から実施してきたが、昨年11月、シリコンを素材とした新しい熱電変換素子を開発したと発表している。その概要をかいつまんで紹介させてもらう。

 熱電変換素子は、固体に温度差を与えると電圧が発生するゼーベック効果を利用して、200~800度領域の中高温と室温などとの温度差を利用して直接発電するものだ。中高温域で熱電性能の高い材料は、鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウムなど、毒性が高く希少で低融点の元素から構成されるものがほとんどで、空気中での使用にも工夫が必要なことなどから、広く利用されるには至っていなかった。しかし、新開発のものはシリコンが素材であるために利用が容易であり、従来のものとは違った構造を開発することで高温耐性が得られており、応用分野を大きく拡大できる素子となっている。
 
 この素子のモジュールをろうそくの炎(外炎、約800℃)にかざす実験を実施し、小型のモーターを回転させることに成功している。これによって、特別な集熱や放熱、大気暴露防止のための補助部材がない状態でも発電できることが実証されたということだ。今回開発した素子はU字形で、直火であぶれるほどの高温域に特化しており、これまでと同様に、接続する素子の数を増やすことで、マイクロワット(μW)からキロワット(kW)レベルの発電量を得ることが期待されている。この素子について、素人にも分かりやすい実験が、ガスコンロのバーナー周縁部に取り付けて行われている。使用時に高温となるバーナーにびっしり取り付けた100個以上の素子が発電するのだが、スマートフォンなどの小型電子機器への充電ができるほどの発電ができるようで、コンロの温度制御といった調理システムの電源にも利用できるだろう。発表資料の画像を見ると具体的に分かりやすいのでコピーさせて貰った。

 
 NEDOの発表内容を知って、新しく開発された熱電変換素子は、これから到来するIoT(Internet of Things)の時代に大きく貢献するのではないかと感じている。今後多くの設備機器がインターネットで結ばれ、大量の作動データ・制御信号がやりとりされる。そのデータの収集発信端末には必ず電源が必要となるから、機器周辺にボイラーなどの熱源があれば、蓄電池を介する必要はあるかもしれないが、この熱電素子からの電気を電源にすることができるのではないかということだ。熱源となるボイラーなども、蓄電池を併用することによって、外部からの電力供給なしに駆動・制御されるようになるかも知れない。
 素人の的外れな発想かも知れないが、ともあれ実用化が近いことを期待している。
 NEDOからの発表の詳細は次のウエブアドレスから見ることができる。
 http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100874.html