都市ガス供給システムからエネルギーを回収


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 都市ガスは、大手事業者に限らず、ガスを高圧にして送出し、需要先近くで整圧器(ガバナー)を通して必要な圧力に落として供給している。規模の大きいシステムの場合、高圧、中圧A、中圧B、低圧といった何段階かの減圧が行われるが、全てにおいてガスが断熱膨張して温度が下がる。整圧器が凍り付いて作動不良を起こすこともあって、その防止のために電気ヒーターやガスの温水器を使って凍結を防止する場合もある。ここでは昇圧に使われたエネルギーが無駄になっているわけで、全国にある都市ガス事業者約200社でこの無駄が絶えず生まれていたと言える。

 この無駄を有用なエネルギーとして回収するために、整圧器を差圧タービン発電機に置き換えて発電させるという方式が米国で始まり、日本でも大手事業者が導入してきた。タービンを回すには大流量のガスと高い圧力差が必要で、ガス送出量が小さい中小ガス事業者への導入例は少なかったが、このシステムの導入を地方ガス事業者にも進展させるべく日本ガス協会が支援し、広島ガス、四国ガス、岡山ガスが、2014年から2年間かけて商品化を行った。その後、この差圧発電システムを導入する地方ガス事業が生まれるようになっているが、最近、川越市に本社がある武州ガスが、この未利用エネルギーをさらに有効利用する方式を導入している。

 坂戸ガスに卸供給を行っている同社は、中圧Aから中圧Bに減圧する一定流量のラインにこの差圧発電システムを設置し、まず、都市ガスの圧力差を利用して常時10kW の発電を行い、同社事業所の構内電力負荷のほとんどを賄っている。さらに、その減圧を行っている場所の近傍にある他社事業所に設置されているガス吸収式冷温水機から冷却塔に送られる冷却水の系統とパイプで結び、温度の下がったガスを昇温する熱交換器の熱源に利用している。ということは、冷温水機の冷水製造プロセスで温度が上がった冷却水を冷やすことになるため、冷却塔での負荷が低減され、冷却塔で消費される電力が削減されることを意味する。これは、小規模な地域エネルギー供給の事例だとも言える。下の図は、武州ガスの発表資料に示されたシステムフローである。

 減圧をしているところで全てこの差圧発電が導入できる訳ではないが、全国レベルで見ればその数はかなりのものとなるはずだ。また、最近総合エネルギー効率が高いコジェネレーション(熱電併給)が、工場や病院、ホテル、オフィスビルなどに導入される事例が増えているが、その発電システムを駆動するエンジンやタービンに供給されるガスは圧力の高いものとなることが多い。その設置先に常時冷熱需要があるような場合には、差圧発電に加えて冷熱供給を並行して行うことができる。さらには、地域単位で温水と冷水を供給するエネルギーシステムを新規導入する場合などには、総合エネルギー効率の向上に、差圧発電、冷熱供給システムが大きな貢献をするだろう。その代表的な事例として、東京ガス豊洲スマートエネルギーセンターが挙げられる。また、大阪ガスのグループ会社が実施した事例も参考になるだろう。両方の事例は次のウエブサイトから見ることができる。

http://sportxart.jp/spot/facility/smartenergy/
http://www.oge.co.jp/energy_technology/gas_pressure/

 新規事例が増えることを期待している。