若者に夢与える空想への挑戦

書評:前田建設工業株式会社 著『前田建設ファンタジー営業部1「マジンガーZ」地下格納庫編』


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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電気新聞からの転載:2018年3月9日付)

 「建設業界 イメージ」で検索すると「きつい、汚い、危険の3K」「汗臭い男職場」といったネガティブな書き込みが多く出てくる。社会インフラを構築し、人々の生活を足元から支える重要な業界でありながら、あまりな言われようである。普通なら「世間は俺たちの仕事の大切さをわかっていない」と愚痴を言って飲み込んでしまうところだが、前田建設は違った。建設業がいかに夢のある仕事であるかを証明すべく、「アニメ、マンガ、ゲームといった空想世界に存在する、特徴ある建造物を前田建設が受注し、現在の技術及び材料で建設するとしたらどうなるか」をプロジェクトにしたのだ。

 本著は、全く異なる部署から集められた社員が、「マジンガーZの地下格納庫一式工事」を受注したという仮定の下、どうやって施主のリクエストに応えていくかというプロジェクトを描いている。プロジェクトに巻き込まれた社員たちの当惑、大真面目に進む一つ一つの議論がたまらなく面白い。

 プール(汚水処理場)の底が二つに割れて滝の中からせりあがってくるマジンガーZの出撃シーンを再現するために必要な立坑掘削の工法選定、上昇機能だけでなく横スライドもできるリフトの設計など必要な事項を徹底的に議論し図面を書き起こしていく。実際のアニメを繰り返し見ることで、放送回によって格納庫の大きさや出撃にかかる時間が異なることにも気がついてしまう。様々な難題を乗り越え工費・工期の見積もりも算出していくのだ。全編を通じて、自分たちの技術や経験に対する誇り、自信、そして社会への貢献意欲があふれ出ているが、決して押し付けがましくない。

 このプロジェクトの実施を決断した上層部のセリフが示唆深い。「ダム、トンネル、発電所。かつて高度成長期には国家的必要性もあり、数々の危険、難関をものともせず数々のプロジェクトを完成させてきたわが社。喜び、喜ばれる満足感。あの感動は二度と味わえないのだろうか? 公共事業は明確な縮小傾向にあり、民間営業は利益も出ないような厳しいコストダウン合戦に突入した。会社の生き残りを賭けた競争が今、目の前にある。しかしどこかに忘れている大きな市場があるのではないか」

 エネルギー事業もコストダウン合戦に突入し、生き残りを賭けた競争が始まっている。どこかに忘れている大きな市場を探す努力、若者に夢を与える努力はどれほど行われているだろうか。

※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず


『前田建設ファンタジー営業部1「マジンガーZ」地下格納庫編』
著:前田建設工業株式会社(出版社:幻冬舎)
ISBN-10: 4344418328
ISBN-13: 978-4344418325



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