2030年度のエネルギーミックスの実現に向けて

~エネルギー基本計画改定等に関する意見~


公益社団法人関西経済連合会 経済調査部 副参与


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 関西経済連合会は、政府の「エネルギー基本計画」の改定に関する意見書を取りまとめた。今回は、そのポイントを紹介したい。

http://www.kankeiren.or.jp/material/171214release.pdf

 「エネルギー基本計画」は、国民生活や企業活動の根幹をなすエネルギー政策の中長期的な方針を示すものであり、安全性(Safety)の確保を大前提に、安定供給(Energy security)、経済効率性(Economic efficiency)、環境適合性(Environment)、いわゆる「S+3E」の適切なバランスをとることが重要である。この「S+3E」のバランスについて、会員企業へのアンケートからは、「安定的で十分な電力供給」と「安価な電力供給」を求める声が多く、企業の競争力と経済成長を確保する観点から、低廉なエネルギーの安定供給の実現が不可欠となっている。
 次の表は、政府が示した「3E」指標の足下の進捗状況である。これを順番に見てみよう。


(出所:資源エネルギー庁資料より作成)

(i) 経済効率性 (Economic efficiency)

 東日本大震災後の2013年には、原子力発電所の停止により、代替火力燃料費の大幅な増加により燃料費は9.8兆円まで膨らんだ。足下では、油価と液化天然ガス価格の低迷により、4.2兆円にとどまっているが、依然として原子力発電所の再稼働が進まない現状にあっては、今後の化石燃料価格の動向次第では大幅に増加するリスクを抱えている。更に、会員企業のアンケートからは、特に中小企業からは、経営上の懸念として、コストが安く経済性に優れた電力の供給を求める声は根強い。
 従って、原子力規制委員会による再稼働の安全審査のプロセスの加速化や安全が確認された発電所の早期再稼働、および既存の発電所の継続的利用の観点から、40年運転制度を見直し、科学的根拠に基づく運転年限を検討することなどが求められる。
 もう1つの問題は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の買取費が年々増加し、今や2兆円を超え消費税1%増税以上の影響額になりつつあることだ。これを、消費者はどのように見ているのだろうか。関西経済連合会は、消費者に対するWebアンケートを実施した。その結果が、次の表である。

 このアンケート結果によれば、固定価格買取制度の内容について、消費者には殆ど知られていない。また、賦課金の負担許容額について、毎月500円未満までと回答した人が9割以上を占めている一方、実際の賦課金は下図のとおり、現時点で既に792円となっている(ひと月あたりの電気使用量が300kWhのケース)。

 本来、固定価格買取制度は、市場の初期段階における普及の勢いをつける、いわばブームの火付け役のようなものである。最終的には、固定価格買取制度から自立し、市場ベースで普及拡大し、持続的に発展することがゴールである。
 従って、高コスト構造を解消し、国際競争力を高めるためにも、今後、買取価格の低減を加速化するとともに、新規買取方針を見直しつつ、低コスト化へのインセンティブを与える研究開発への助成等へのシフトが求められる。
 再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、追加的に発生する系統安定化に向けた投資も含め、社会的総費用を最小化すべく、その全体像および国民負担の総額を早期に示され、国民の理解を前提としたうえで制度設計に反映されることを期待したい。

(ii) 安定供給 (Energy security)

 エネルギー自給率は、東日本大震災以降、原子力発電所の再稼働の遅れを背景に、依然1ケタが続いている。長期に及ぶ原子力事業の停滞は、人材や技術の維持が困難となる虞があることからも、早期に国において新増設・リプレースの方針を決定するとともに、核燃料サイクルについても国家戦略として具体的なロードマップの策定が求められる。
 エネルギーのベストミックスの達成に向けては、2030年度の一時点を捉えるのではなく、リードタイムが長期に及ぶ原子力発電に関しては、2030年以降も含めた長期的な活用の姿を示し、原子力事業の予見可能性を高めることが重要である。


(出所:電気事業連合会資料より作成)

 加えて、今後、電力システム改革により、市場メカニズム下での競争が進展すると、一般に、短期的な経済効率性は高められる。一方、将来の電力需要の大幅な増加が見込めない中にあっては、完全競争下ではリードタイムが長期に亘る電源への設備投資にはディスインセンティブが生じる。このような、短期的な企業行動の結果と中長期的に必要とされる供給力とのギャップをいかに埋めるかが課題となってくる。従って、中長期的なベースロード電源の担い手が不在とならないよう、長期的な投資判断を可能にする環境の整備が求められる。

(iii) 環境適合性 (Environment)

 現状のゼロエミッション電源比率は、原子力発電所の再稼働の遅れにより、17%にとどまっており、2030年目標の44%には遠く及ばない。今後の温暖化対策を考えるとき、パリ協定における2030年度の温室効果ガス排出量の2013年度比26%削減目標は、2030年度のエネルギーミックス目標を前提としている点を忘れてはならない。
 環境適合を考えるうえでの大原則は、環境と経済の両立である。国際競争力を維持するうえで、日本企業の過度なエネルギーコストの負担は回避するとともに、持続可能な発展を目指すべきと考える。

エネルギーと経済・社会の成り立ちについて学ぶ機会の充実

 エネルギー政策は、経済活動・安全保障・環境問題に深く関連するにもかかわらず、その重要性が世の中に十分に理解されているとは言い難い。そこで、関西経済連合会では、今年度から「未来に向けたエネルギー・環境理解促進プログラム~次世代・女性向けアクティブ・ラーニング~」を立ち上げ、主に会員企業の社員等を対象として、一連のプログラムを展開している。同時に、資源エネルギー庁および近畿経済産業局と共催で、関西の各大学を対象として、エネルギーミックスに関する出前授業も実施している。

 これらの教育活動を通じて、エネルギー自給率やエネルギーミックスに関する基礎知識を持たない参加者が多いことが判明した。今後は、初等・中等教育において、エネルギーの重要性やエネルギー安全保障等の基礎的内容について、分かりやすく学ぶカリキュラムが求められる。
 関西経済連合会は、こうした草の根的教育活動を展開することで、国民のエネルギー政策の理解促進、ひいてはエネルギー分野を支える人材の裾野の拡大に貢献したい。