省エネ型CO2回収設備の概要と展開

~高純度・低熱消費型CO2化学吸収プロセス~


新日鉄住金エンジニアリング株式会社 製鉄プラント事業部


印刷用ページ

(「配管技術」2017年6月号から一部改編の上、転載)

1.はじめに

 温暖化対策としてCO2排出量を削減する取り組みは各分野で実施されている。産業界においては、生産活動に伴い排出されるCO2を大幅に削減するためには何らかの革新的な技術の導入が必要となってくる。本稿では、鉄鋼業における革新的CO2削減技術開発の一環として取り組んだCO2分離・回収技術の開発内容、成果と、その商品展開について紹介する。 
 鉄鋼業は火力発電に次ぐCO2の大規模排出源である。2007年、安部首相により発表された「美しい星50 (Cool Earth 50)」において、「省エネなどの技術を活かし、環境保全と経済発展を両立させること」が提言され、それを達成するための「革新的技術開発」の1つとしてNEDO((国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「革新的製鉄プロセス技術開発(略称:COURSE50)」が位置付けられた。その中でCO2を減らす技術開発と並行して、化学吸収法によるCO2分離回収技術の開発が進められてきた。
 2008年にスタートした同プロジェクトは2013年3月にPhase1のStep1が終了し、化学吸収法については当初の開発目標を達成できた。これら開発成果を一般産業分野向けに独自技術を加えて商品化したものがESCAP®(Energy Saving CO2 Absorption Process)である。次項では、これら開発の経緯と商品化の内容について説明する。

2.省エネ型化学吸収法の開発(COURSE50)

2.1 CO2化学吸収プロセス
 CO2化学吸収プロセスのフローを第1図に示す。化学吸収では、まず吸収塔内でCO2を含有するガスとアミン吸収液を向流接触させることで、ガス中のCO2を選択的にアミン吸収液に吸収させる。CO2を吸収したアミン吸収液はその後、再生塔へと移送される。再生塔では付属したリボイラーに蒸気を供給することでアミン吸収液を加熱再生させて、CO2とアミン吸収液を分離する。回収CO2純度は通常99.9%以上である。
 一方で、化学吸収法の課題は再生塔でCO2とアミン吸収液を分離させるために大量の熱エネルギーが必要となることであった。従い、この熱消費量を如何に低減するかが技術開発のポイントとなった。

第1図 化学吸収プロセス

第1図 化学吸収プロセス

2.2 化学吸収プロセスの開発手順
 COURSE50での技術開発では、まず、新日鐵住金(株)、RITE((公財)地球環境産業技術研究機構)の共同研究等を通じて新規の吸収液が開発された。次に当社は、開発液の評価及びこれら吸収液の特性に適合するプロセスの開発のために、2種類の規模の試験プラント(CAT1(CO2回収能力1t/日)及びCAT30(CO2回収能力30t/日))で実ガス試験による検証を行った。

写真1 化学吸収試験設備

写真1 化学吸収試験設備

2.3 試験結果
2.3.1 熱消費量の低減
 熱消費量の評価結果を第2図に示す。各種吸収液の評価および最適設備設計の結果、熱消費量は2.0GJ/t-CO2まで低減(従来プロセスのMEAと比較し50%減を達成)することができた。
 従来法に比べて熱消費量が大幅に低減された理由として、以下の2つが挙げられる。

熱消費量の大きなウェイトを占める反応熱を低く抑えながらも高い吸収性能を有する、高性能吸収液を使用
吸収反応熱を利用する新技術を採用

 ②は、吸収塔で発生する反応熱を、熱輸送媒体にて回収し再生塔で利用する熱移送システムである。本技術の適用により、0.3GJ/t-CO2程度の熱消費量の低減を可能とした。

第2図  CO2化学吸収法の熱消費量

第2図 CO2化学吸収法の熱消費量

2.3.2 低温再生
 この他、もう一つの特徴として、95℃程度の低温の再生温度でも従来と同程度の再生性能を持つことが見出された。(第3図)従来の化学吸収法では120℃が再生温度として一般的であるが、本プロセスでは低温再生により利用価値の低い低温排熱の活用が期待できる。

第3図  再生温度の比較

第3図 再生温度の比較