資源循環型社会構築への未来図(その5)


日本生命保険相互会社 顧問


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※ 資源循環型社会構築への未来図(その1その2その3その4

5.未来図と課題

 国は平成28年1月、廃棄物処理法に基づく基本方針を変更し、平成32年度の再生利用率の目標値を平成24年度比で一般廃棄物は21%から27%へ、産業廃棄物は55%から56%に増加させた。
 高度な循環型社会の構築をこれまで以上に加速させ、実現させていくために、処理業者のあるべき姿については前述したが、廃棄物を排出する事業者や、規制・指導等を行う行政などについても、環境の変化が大きく予想される中、あるべき新しいステージの未来図を予想しその課題を少し探ってみる。

(1)排出事業者
 まず、排出事業者についてであるが、環境・資源と経済の両立を目指す循環型社会に積極的な関わりを持つ排出事業者が徐々に増え、その関わりが多様化すると考えられる。

意識の希薄な排出事業者は徐々に減少するが、残念だがゼロにはならない。
資源化・リサイクルに目を向ける排出事業者は段階的に増え、本業へのPR・普及啓発、経費の削減にも繋がるとの認識が生まれ拡大。
処理業者との資源化・資源効率等に関る共同の調査・研究や、処理業者からの人材派遣を受けて分別・保管等のマニュアルづくりなどへの取組み、バイオマス発電など処理業者と協業・連携で新たな事業の立上げなどが進展。
廃棄物の資源化・リサイクルに関するエネルギーや水などを含めた概念である資源効率への関心が高まり気候変動対策への貢献の意識が展開。

 未来図への課題は、食品ロスの削減など発生抑制への更なる対策強化、資源効率の高い生産性の向上や、廃棄物からの再生原料や二次製品の購入・利用の拡大などが山積している。

(2)廃棄物処理業者
 処理業者の関係は前述しているが、改めて未来図を簡単に描いてみる。

単純な収集運搬・処理業から資源化・リサイクル業への転換が盛んに。
バイオマスの発電、飼料・肥料化等、低炭素化にも繋がる事業への参入が進む。
処理を請け負ってからの資源化だけでなく、連携し排出源からの高度資源化へ。
廃棄物の性状把握、排出時点での分別、資源化の取組み優先が当たり前に。

 未来図への課題としては、資源効率を高めながら、上記の排出事業者で述べた廃棄物からの再生原料や二次製品の購入・利用の拡大策や、廃プラの原料化に向けた不純物の除去技術・精度の向上など、高度な資源化技術の開発が一層必要となる。  
 日頃からの思いであるが、廃棄物処理業界は、法制度の委託基準等に基づき確実に運搬し適正に処理することは極めて重要なことである。しかし、それだけが業界のこれか らの使命かというとそれは違う。
 それは資源化・サイクルに積極的にかかわっていくことであり、単に生き残るだけでなく、将来生き抜いていくための未来図は、単純処理業から資源化業への変革ではないかと改めて強く感じる。

(3)排出事業者・処理業者に対する自治体・行政 
 この関係の未来図ほど難しいものはないが、少し簡単に方向性を描いてみる。

違法業者の排除という観点から規制、立入は緩められない。
資源化・リサイクルへの取組みを更に高める為、行政手続きの簡素化策が議論に。
高い資源効率の実現に向けて排出源での種々なルールづくり等の取組みが盛んに。
排出現場での一般廃棄物・産業廃棄物の垣根を超えた議論と取組みが進む。

 現在、都においては、更なる資源化の推進に向けて、新しいルールづくり、モデル事業の導入や、指定制度の活用による規制の緩和などの取組みが進められている。
 未来図の課題は、食品ロスの問題のようにライフスタイルまで踏み込んだ対応策、企業(排出事業者)の廃棄物の資源化への意識改革や協働意欲などを醸成する規制ではない新しい自主性の高いルールづくりとしての取組みが一層多くなると推察される。
 資源化施設で分別・生産される再生原料等に対する新たな話題となっている廃棄物の卒業判定については、今後、トレサビィリティーや資源効率など大きな視点から踏み込んだ議論を期待したい。 
 排出事業者の意識向上を更に効果的に行う為には、違反や罰則の周知だけでなく、廃棄物に積極的に関わることの効果の実例やその方法論など積極的に提供していくことが大切と感じる。

(4)アップサイクルの推奨
 最近、再生砕石の利用拡大や廃プラの高度選別による混入率の低下による再資源化拡大など、再生材・再生資源の活用が盛んになってきている。
 最後にここで、将来の高度循環型社会に必要な概念の一つとして、図6に示すアップサイクルについて少し紹介する。
 再利用の例として、最近、繊維to繊維など材料リサイクルの製品が広く利用されるようになった。リサイクル製品は、単価が高いほど販売量が伸び悩むのが一般的である。しかし、そのリサイクル製品が品質、機能、デザイン性等が優れていれば価格がある程度高くても、購入する人が増えている。いかに、付加価値を高めたリサイクル製品を作り出せるかが大切な要素である。
 これから企業はCSRへの取組みの一環として、リサイクル製品を購入・使用する「お付き合いのリサイクル」から脱却し、品質、機能性等の付加価値と魅力を高めた「アップサイクル」を一層推奨し展開させていくことが、ビジネス拡大の要素となると感じる。
 今後、産業界はサプライチェーンによる再生材の管理・推奨を一層求め、リサイクル製品の原料供給先でもある廃棄物処理業界の材料リサイクラー等に対してもトレサビリティーに十分対応したものを求めてくると考える。

 図6 最近のリサクル製品の事例(価格・販売量・付加価値相関図)

図6 最近のリサクル製品の事例
(価格・販売量・付加価値相関図)

6.まとめ

 言うまでもなく、地球上の資源は有限であり、廃棄物の発生を抑制し廃棄物を資源として再利用する取組みは、これからの高度循環型社会の要である。
 制度と現実にはギャップは存在するが、制度とかけ離れた現実の存在も、今後確実に変わっていく。その変化を強く意識した企業(排出事業者)、処理業者、そして行政それぞれの積極的な取り組みがこれまで以上に必要になるといえる。
 廃棄物処理法は1970年に制定され、半世紀を経ようとしている。社会は大きく変化し新しい風が吹き注ぐ時代となっている。廃棄物に関わる全ての者に対し、新しい風を新しい取り組み変えるご尽力を期待したい。