資源循環型社会構築への未来図(その4)


日本生命保険相互会社 顧問


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※ 資源循環型社会構築への未来図(その1その2その3

4.処理業者の意識のギャップ

 排出事業者に続き、今度は処理業者の視点から、意識の問題とこれからの処理業界の役割・期待を少し掘り下げてみたい。前述の図1に示した意識のギャップについて、処理業界側から捉えても、種々の意識のギャップが存在している。 
 排出者責任意識の希薄な事業者に対して、現在、ビジネスの一環として法制度などの説明をしながらビジネス展開を図る処理業者も少なくはないが、多くの処理業者は、発注先である排出事業者に対して、排出者責任などの制度や所手続きなどついて、意識の希薄さやギャップを感じながらも、違法性などを含めて指摘しないで、あるいは指摘できないで、ビジネスを展開する現状も内在している。
 この状態が永く続いてきた。約40年前に排出事業者の指導を担当したが、法制度上のこともあり、責任意識は皆無に近かった。約20年前古紙と称してフィリッピンに医療系廃棄物を混入させて輸出した事件を担当したが、排出現場の管理は制度とかけ離れていた。
 今後も変わることがない排出事業者もいる一方で、当然時間はかかるが、排出事業者の意識のギャップも縮小していく傾向には進むと考える。
 逆に、排出事業者の認識のギャップの存在を温室のように甘んじ、その存続を密かに願うのであれば、決して今後処理業界は発展していくことはない。
 つまり、排出者責任だけでなく、資源化・リサイクル等に対する排出事業者の意識のギャップが縮小して変化していくことに、処理業者が気づかないとすれば、ビジネスチャンスを喪失し将来へのリスクは拡大していくといえる。 

(1) 廃棄物処理業界が備え高めるべき総合力とは
 今処理業界に対して、社会が求める期待は、業界全体の信頼の確保と維持・向上はもちろんのこと、高度循環型社会へ先駆的な貢献を果たし、温暖化対策などにも寄与し、持続的な調達を重視し積極的に社会的な責任を果たしながら、新しいビジネスモデルを醸成・展開・発信できる企業に発展していくことである。
 そのためには、処理業界を取り巻く厳しい環境の変化の中、図3図4に示す力をこれまで以上に備え、果敢に挑戦して生き抜いていくことが持続的な発展に欠かせない。
 ひとつ一つの力を高め、複合的・総合的な力として束ねてこそ、厳しい環境の中で生き抜けていける時代でもある。

図3 更に磨き上げるべき力  強い意識改革

図3 更に磨き上げるべき力  強い意識改革

図4 廃棄物業界が生き抜き発展させていくために

図4 廃棄物業界が生き抜き発展させていくために

 ① 洗練されたアドバイス、コーディネイト、プロデュースの力
 廃棄物処理法は排出事業者に処理責任を持たせ、その実行のため委託基準など制度が定められている。廃棄物処理に関心が薄く、法制度を良く知らないままの排出事業者の方がビジネスし易いという考えが一部にあるが、今後この厳しい環境の中で生き抜いていくことは難しくなっていくと感じる。
 排出事業者に対して、排出・保管方法、資源化選別手法、危険物・有害物の分離・保管方法等の工夫や情報提供などを、排出実態に即して行えるアドバイス力はこれまで以上に不可欠である。
 廃棄物の種類や形態等に応じた種々の新しい資源化・処理ルート情報を備え、最適なルート情報の提供や排出マニュアルの作成支援等、排出事業者が処理責任を理解し果たせるように積極的にコーディネイトする力も欠かせない。
 信頼関係を築きながら、排出事業者と共同して分別方法、資源化方法、技術開発などの調査・研究が今後更に増加していくものと考える。

 ② 独自の情報公開・公表力
 行政は廃棄物処理法や条例(東京都:報告・公表制度)により廃棄物処理業者に処理実績報告や公表などの責務を課している。法制度等の消極的な情報公開だけでなく、厳しい環境の中生き抜いていくためには、情報の発信はこれまで以上に大切である。
 排出事業者が求めている、あるいは社会が求めている処理業者の処理の状況を自らわかりやすく、積極的にリアルに資源化率などの情報を公開・発信し、それをビジネスに結び付けて行くことが重要である。
 これからは、処理業者にとって情報の発信・公表は、これからの生き抜くための生命線でもある。発信・公表のタイミング、手法、スタイル、プレス対応などに各処理業者いかに工夫・独自性を作り出せるかが岐路である。
 また、処理・資源化施設の管理状況などについては、第三者が作成したチックリストで行った情報を公開し、公正な発信にも努めていくことが大切である。

 ③ 揺るがない社会的責任力
 処理業者は社内にしっかりとしたガバナンスを築き、法令順守、人権、環境、労働慣行、公平取引など社会的な責任を十分かつ確実に果たしていくことが極めて重要である。
 設備に関する事故も多い処理業界であり、一層の安全管理、リスク管理、予防保全等の強化によって信頼の確保を確実なものにしていくことが必要である。
 平成28年1月に発生した食品廃棄物事件は、違法行為を起こした処理業者に大きな問題と責任があるのは記述するまでもない。行政の立入指導の強化、電子マニフェストの強化など制度対策が進められているが、なによりも、トップ層が中心となって自社の揺るぎないガバナンスをいかに確立・維持する体制を構築できるかが鍵でもある。

 ④ 高度資源化技術の開発、設備改善力
 日本の技術革新は著しく、特にセンシング技術、ソーティング技術などの進化は加速度的である。このような技術革新がもたらす技術は、廃棄物の処理施設やその設備にそのまま導入し利用できることはまず少ない。形状、性状、成分等が多種多様で、混合状態が当たり前の廃棄物に対して、技術革新の生み出すいわゆる基礎技術に対して、いかに改良、応用、試行錯誤を繰り返し、応用技術の開発を行うかが大きな鍵である。
 現場での応用技術の開発には手間とリスクが伴う。この開発体制をいかに持続できるかが、企業戦略の課題でもある。高品質な資源化、資源化効率の向上への試行錯誤は、いずれ独自性のあるビジネス展開の糧となっていく。

 ⑤ 持続的な人材育成・内部管理力
 これまで述べたプロデュース力やリスク管理、安全管理、高度資源化などには、これに携わる人材の確保と、継続的な育成・活用がこれまで以上に重要である。
 処理業者にとっては、社内に持続的な人材育成・内部管理を行うことができる体制・制度をしっかりと確立させていくことが不可欠である。
 
(2)企画・提案型ビジネスモデルへの転換
 ダンピングなどにより処理費のコスト割れを承知で取扱量の拡大を図るケースがあるが、これだけでは当然経営はリスク拡大の危機に陥るだけである。一般に人材を育てながら生産性・効率性と収益性の向上を図ることが企業の命題であるが、廃棄物処理の分野ではプラス高付加価値サービスの創成・提供がこれらからの重要な要素でもある。図5に示すように、信頼関係の構築・維持がビジネス発展の最重要であり、表面的なコストだけのビジネスから、企画・提案型に転換したビジネス展開が今後一層必要な時代となると確信する。

図5   企画・提案型ビジネスへの展開へ

図5 企画・提案型ビジネスへの展開へ

次回:「5.未来図と課題」へ続く