置き換えて見える原子力の将来像

書評:堀江 貴文 著「ホリエモンの宇宙論」


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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電気新聞からの転載:2017年6月23日付)

 IT企業ライブドアの設立者として彗星のごとく現れ、独特の着想と行動力でそれまでの「大人の世界の秩序」をいとも簡単に打ち破ったホリエモンの著である。彼が証券取引法違反で逮捕されたところで記憶が止まっておられる方も多いかもしれないが、そんな経験も「刑務所なう」とネタに変えてしまう彼は、その後も精力的に活動している。衛星打ち上げ用ロケット開発もその一つだ。

 本書は彼がなぜ宇宙ビジネスに乗り出したのか、なぜ「ビジネス」という言葉に拘っているのかが書かれている。「宇宙開発とは国家戦略の中に位置づけられるものであり、国家予算をつぎ込んで行われるもの」という「常識」は単なる思い込みで、むしろ宇宙開発停滞の原因はそれが公共事業になってしまっているからだと言い切る様は小気味いい。

 著者に対する評価は人によって分かれるところであろうし、宇宙ビジネスも順風満帆とはいかないようだ。数年前に話題を呼んだこの本を「ホリエモン流の大言壮語」と片付けてしまう人も少なくないだろう。しかし、彼が宇宙ビジネスについて語る言葉を、原子力に置き換えて読んでみて頂きたい。

 「きちんと需要を満たしてサービスを提供し、ごく普通のビジネスとして成立させなくちゃ、宇宙開発は前に進めない」という言葉は、故澤昭裕氏が絶筆「戦略なき脱原発へ漂流する日本の未来を憂う」のなかで遺された言葉に重なる。澤氏は最後に原子力関係者に対して「日本の原子力事業という木が本当に大切なら、むしろ、役割が相当限定されていく現実を潔く受け入れた上で、うまく国民に貢献し続ける将来像を考えるべきではないか」と言い残している。

 原子力は国のエネルギー安全保障の最後のとりでであり、現実的な代替策が確保できるまで国策として維持することが必要な事業であると筆者は考えているが、あまりにその状況に甘えてこなかったか。ごく普通のビジネスとして成立してこそ事業であり、持続可能性が確保されるという、ホリエモンの宇宙開発論に学ぶことはないか。夜空の星を眺めながら考えてみるのも悪くないだろう。

※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず

ホリエモンの宇宙論
著:堀江 貴文 (出版社:講談社)
ISBN-10: 4062168510
ISBN-13: 978-4062168519



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