再生可能エネルギーの動向分析


中部交通研究所 主席研究員

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 先にも述べたように、現在のRE導入の加速は、FIT制度に負うところが大きい。ところで、将来の導入をWR/OECD/N-OECDに分けてみると、WEO2016-450シナリオの2040年導入量(発電量)を2014年比でみると、風力9/6/15倍、太陽光22/9/68倍と、太陽光の伸びが、そして途上国での伸びが非常に大きい。先進国では、今後FITによる補助金の減少、あるいは廃止が予想され、先進国でも上のような伸びは大きなチャレンジである、途上国においては、脆弱な財政の中、いかにして、FIT制度を打ち出せるように世界的な支援の枠組みが組めるか、今後のCOPでの成り行きが非常に重要となる。また、ここでは、議論しないが、図4で、450シナリオの2040年での風力+太陽光のシェアを見ると30%になっており、変動電力がこのレベルになると、変動性吸収のための対策も大きな課題である。
 技術的な観点からも今後のRE導入促進に寄与すると考えられることは、まずコスト削減が考えられる。現在の発電コストを見ると(図5)、特に太陽光発電は、火力発電や水力発電に比べ、かなり高コストで、今後のコスト削減が必要である。コストの中で、特に初期コスト(メインは太陽光の場合、太陽電池パネル)の今後の削減予測はいくつかの機関から多少楽観的と思われるものが提案されている。その一例を図6に示す。地域差はあるものの、2010-2015年の5年間、40~70%と非常に高い削減が実現され、最近の導入加速に寄与した。しかし、図に示すような、今後2040年に向けて現在よりさらに20~70%も削減可能かどうかは、楽観的な予測と言わざるを得ない。

図6

 ここで、少し地域差が気になるが、日米での高コストは太陽電池パネルおよび工事費の高さが反映されている。日本では、国内パネル販売の70%は日本メーカー製(海外生産も含む)であり、特に中国産のものに比べれば、高価格になっている。高性能、高耐久性などの差別化ゆえのコスト増は当然あるものの、中国産との競合性を保つためにも、大きなコスト削減が必要である。
 今後の動向に影響しそうな要因としては、温暖化政策の成り行き以外にも、火力+CCS技術の普及、発電変動低減対策のシステム的進展、変動吸収のための蓄電池コスト低減、炭素税の有無/レベル、さらには、原油を含む化石燃料の価格動向などがあり、相互に影響しあうことで将来の太陽光、風力を含むRE発電の導入レベルが変化するだろう。

4.運輸部門でのバイオ燃料

 運輸部門での低炭素化では、低炭素電力を前提とした電気自動車導入も重要な戦略であるが、現状、まずできることとしては、バイオ燃料導入の促進であろう。ここで、重要なことは、単にバイオ燃料消費量の増大だけでなく、燃料のCO2排出原単位の低減にも留意する必要がある。現在主流である第1世代のバイオ燃料から、次世代のセルロース系や藻類バイオ燃料へと消費を拡大していく必要がある。ここでは、主に第1世代の現状とその延長としての将来予測に焦点をあてる。
 2015年に、世界で、バイオ燃料は、道路交通で消費されるエネルギーの4%を占めている。その75%は、図7に示すようにエタノールで、米国(57%)、ブラジル(31%)でその90%近くを消費している。一方、バイオディーゼル(BD)消費は、EU28で38%、米国16%、ブラジル13%と、その消費は共に非常に地域的に偏っている[5]。
 消費の推移をみると、エタノールは2000-2010年はほぼ直線的に伸び、BDは2005-2014年までほぼ直線的にその消費を伸ばしている。エタノール消費の停滞が2000年から数年見られるが、これは、米国での“ブレンドの壁”、原油安に呼応したガソリン価格の低下(2009年以降)など、ブラジルでは、政府のガソリン低価格化操作、サトウキビ不作による生産量低下(2010-12年)など、様々な要因が寄与していると思われる。この結果、最近の動向を外挿した将来予測は、図7に示すように2040年までに現在の3倍程度には伸びるが、WEO2016の450シナリオの予測には、程遠いレベルとなっている。現状の勢いではせいぜいNPSシナリオのレベル程度への到達が限界となる。また、上にも述べたようにCO2排出原単位低減には、セルロース系エタノール等の先進バイオの導入が不可欠であるが、最も導入が進んでいる米国でも、年々生産量は増加しているものの、2016年に全エタノール消費の0.003%程度しか製造されていない。
 このように、最近の運輸部門でのバイオ燃料消費動向の外挿としての将来予測は、2℃シナリオの目標値に対して、量的にも50%程度しかない。また、CO2削減で重要な先進バイオの全バイオ燃料でのシェアは、2℃シナリオでは2030、2040年には、約1/3、1/2と高く、早急に加速する必要があることがわかる。

図7

<参考文献>

1.
IEA(2016): World Energy Outlook 2016.
2.
IEA(2016): Renewables Information: Key Renewables Trends.
3.
BP(2016): BP Statistical Review of World Energy.
4.
IRENA(2015): Renewable Power Generation Costs in 2014.
5.
REN21(2016):Renewables 2016-Global Status Report

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